神々の旗印109
烈太郎が声をひっくり返して驚いて見せると、
「いや、アイシャだけじゃねえ。他の連中も、いやこの俺の存在さえまでもが、万分の一、何京分の一以下の確率で同じ人格を持って生まれ出てきている可能性があるってこった」
「そ、それが……あの機体の中に?」
「ああ、あの一個体一つ一つの中に別々にな。つまり、あの機体の中身こそが一つの宇宙なんだ。それも、俺たちの居た地球に限りなく似せた惑星が存在する宇宙のな」
「そ、そんなことが、そんなことが出来るわけが……」
「いや、俺はあの洞窟の中で見ちまったんだ。……実際にはこの目で見たわけじゃねえが、感じちまったんだ。もう一人の俺の存在を……」
「もう一人の……兄貴の存在?」
正太郎はあの洞窟の中で命を賭けてやり合った敵を思い出していた。
あの時、正太郎は重症を負ったエナを助けるべく、目的地まで走りに走りまくった。しかし、その疲弊しきった彼らを追い駆ける様に鋭い感覚を持った影の存在と対峙した。
その影の存在は、正太郎と同等の戦闘能力を持ち、正太郎と同等の戦略術を有していた。そして驚くなかれ、その影の存在は正太郎と同じ感覚を持ち、同じ思考速度を有するべく互いが牽制し合うだけでその労力を費やして行ったのだ。
「なあ烈。俺ァな。あんな感覚は生まれて初めてだった。あのアヴェルらの一味とやり合った時や、ゲネックのおやっさんに本気でしごかれていた時とはまた違った特殊な感覚だったんだ」
「つまり兄貴は、その時に、自分の分身とも言える存在と出会ってたって言うこと? 別の宇宙で育った兄貴と瓜二つの存在と戦い合ったってこと?」
「ああ、間違いねえ。あの感覚は間違いなくこの俺だ、俺だったんだ。いや、もし仮に俺でなかったとしても、この俺に近い存在と対峙していたに違いねえ……」
「兄貴……」
「そしてな、もう一つ」
「も、もう一つ?」
「ああ、もう一つ言いてえことがあるんだ」
「なになに? 何なんだい? 勿体ぶらないで教えてよう、兄貴ぃ」
「ああ……」
正太郎はそこで言葉を切ると、溜め息をついて、
「その影の野郎は、一瞬、俺という存在を感じて戸惑っていやがったんだ。まるで、何もかも知らなかったみてえに……」
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