神々の旗印96


 勇斗は突然の衝撃を受けて絶叫した。

 どうやらいきなりフランキスカのどてっ腹に三十ミり程度の実弾を撃ち込まれたらしい。比較的軽量で装甲が薄いフランキスカのショルダーアーマーの一部と腹側の一部が、機銃の連射によってボロ布のようにひしゃげてしまっている。

「くぅ、間髪入れずに撃って来るなんて……。ということは、やっぱりこの相手はミシェル兵士長だということなのか?」

 セシルの姿をした勇斗は、打ち付けた頭を左右に揺すってどうにか正気を保とうとした。姿が今までのように武骨なジェリー・アトキンスとは違い、細腕細身のセシルの肉体になってしまったがために、そのダメージも今までとは比べ物にならない。

「ダ、大丈夫デスカ、クロヅカ二等兵!?」

 その身体を気遣って声を掛けて来るマーキュリーの声色もどこかぎこちない。

「あ、ああ……、そ、それにしてもミシェル兵士長らしいや……」

 勇斗は唸った。勝つためなら訓練であろうとも容赦ないところは、まさにミシェル・ランドンそのものであるということだ。

 すると、

「アナタハ何モ知ラサレテイナイノデスネ? 可哀ソウニ……」

 無線越しにミシェルの声がさらに勇斗を逆なでする。

「な、何が何だって言うんだ!? キミがもし、あのミシェル兵士長だとしても、あんまり訳の分からない事ばかり言って来ると許さないぞ! いつまでも上から目線で言葉を押し付けて来るなんて、あまりにも卑怯じゃないか!?」

「フフフ……、ソウヤッテ真ッ直グナ言イ方ヲスル隊長ハ、本当ニ素敵ダワ……。イツマデソウヤッテ、貴方ハユート・クロヅカデイラレルノカシラ?」

「な、何言ってやがる!? 俺は黒塚勇斗だぞ、正真正銘の黒塚勇斗なんだぞ!!」

「面白イワネ、コレハ傑作ダワ。貴方、ソンナ顔カタチ、姿ヲシテ、マダソンナ事ヲイウ?」

「こ、これは、何かの間違いだ! きっと……そうだ、きっと俺をこんな姿に変えちまったあの爺さんの陰謀なんだ!! 今のセシルさんの姿だって、きっとあの爺さんが仕掛けたカラクリか何かなんだ!!」

「ジャア、今ノ貴方ハ少ナクトモ、ユート・クロヅカ隊長デハナイワネ。見タ目ガ、ソノ女ナラ、キット中身ダッテソノ女ナノヨ!!」

「何をわけが分からないことを言っているんだ!? ミシェル兵士長!! もうバカな事はやめてくれないか!? 俺は今、頭の中がぐちゃぐちゃになってパンクしそうなんだ!!」

「イイエ、ヤメナイワ。コレカラ、貴方ニハ、アタシガ受ケタ以上ノ、苦シミヲ味ワワセテアゲル!!」


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