神々の旗印95


「え!? な、何を言っているんだ、君は!? 死を飛び越えているって、どういう意味だ……!?」

 勇斗がミシェル・ランドンらしき声とやり合っているその時、

「イ、イケマセンワ、クロヅカ二等兵!! それ以上、ソノ方の声に反応致しマシテハ!!」

「え、なんだって!?」

 勇斗がマーキュリーの警告に反応したその時であった。ジェリー・アトキンスの姿をした勇斗の体が突然体じゅうの至るところでひび割れを起こした。そして見る見るうちに皮膚組織が崩れて行くと、なんとその姿はか細い女の細腕に変わっていた。

「ま、まさか……!?」

 勇斗は反射的にモニターに自分を写し込んでその姿を確認するや、思わず震えが止まらなくなった。

「セ、セシル……なぜ俺の体がセシルさんに変わちゃうんだ……!?」

 なんと、今までジェリー・アトキンスの姿をしていた勇斗の体は、最愛の恋人であったセシル・セウウェルの身体に変貌を遂げていたのだ。

「ク、クロヅカ二等兵……その格好ハ、どういうことデスノ!? というか、アナタは一体誰なんデスノ!?」

 流石の人工知能のマーキュリーでさえ絶叫した。それもその筈である。勇斗は、一瞬にして軍人の中でも体格の良かったジェリー・アトキンスの姿から、少しだけ儚げな雰囲気を持った女性兵士に様変わりしてしまったからだ。

「お、俺だって何が何だか分からないよ、マーキュリー! 一体全体、今何が起こっているのかさえ……」

 すると、

「サア、ユート・クロヅカ隊長。アナタハ、ソノ姿デ、コノアタシト戦ウノデス!! アナタハ誰ニデモナレルノダカラ。サア、アタシノ無念ヲソノ姿デ晴ラスノデス!!」

 無線のその先から、彼らの心を撫でまわすようなその声が聞こえて来た。それは、間違いなくミシェル・ランドンの声そのものであり、こちら側の気が引き裂かれる程の怨念が込められていた。

「意味が分からない! 意味が分からないよ、ミシェル兵士長!! これはどういう事なんだ、一体どうして俺の体がこうもコロコロと変わってしまうんだ!?」

「アラ、マダ分カラナイノデスカ、ユート隊長? アナタハアナタデアッテアナタデハナイ。アナタハアナタデハナイケレモドモ、アナタダカラナノデスヨ!?」

「なっ!? 一体それはどういう……!?」

 勇斗が聞き返した瞬間だった。突然フランキスカの右半身に強い衝撃が走り、勇斗はもその衝撃に全身を持って行かれ、そのままコックピットの壁に叩きつけられた。

「うわあああーっ!?」

 

 

 

 

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