神々の旗印87
これには、さすがの百戦錬磨の彼らでも度肝を抜かれた。かつてこんな不可解な敵襲を経験したことがない。いきなりゼロの距離で敵が襲い掛かって来るなど予想出来るものではない。
「オラッ! マドセード!! 機体の右半身がガラ空きだぞ! もっと相棒と効率よく攻撃を分担しろ! エセンシスはその逆だ!! そんなにソードをぶんぶん振り回してちゃあ、背中からの不意打ちを避け切れなくなる! 早雲ちゃんは機体をその場に固定して、自分の全面だけに意識を集中だ!! その他の方位は俺に任せておけ! ぜってえ後ろは取らせねえからよ!!」
「りょ、了解です! 少佐!!」
早雲は機体の片足を失ったことで思うように制御が出来なかった。ここは何とか得意の予測計算で乗り切ることは可能だが、こうも敵が無数に現れたのではスラスターの推進力のみで逃れることは出来ない。機体のサポート人工知能アーシラトも、彼女と同様に予測計算によって何とか乗り切っているという感じだが、いつまでこれが耐えられるのか知れたものではない。
敵はまるで無尽蔵である。彼らがどんなに一丸となって叩き落しても、次から次へと空間が引き裂かれ、羽の生えた戦闘マシンが矢継ぎ早に襲い掛かって来る。
それでも彼らは愚痴もこぼさずに迎撃するのであった。特に早雲以外の三人は、生粋のネイチャーであるにもかかわらず、あの特訓を経て来たお陰で敵を討ち漏らすことなかった。正に早雲は神技の集大成を目撃しているのである。
「おい烈!! 闇雲に撃ちまくるだけじゃだめだ!! 近接戦闘はこの俺に任せておけ!! その代わり、外周からいきなり現れた化け物だけをお前が葬るんだ!! お前に備わった高感度センサーなら、奴らの空間が割れて飛び出て来る様子を瞬間的に捉えられるはずだ!! そこにソニックブームキャノンを撃ちこめばいい!!」
「ア、アイアイサーだよ、兄貴!! レトロなモグラたたきゲームの要領でやるんだね!?」
「へへっ、分かってるじゃねえか、このバカ烈があ!! いいかテメエら! 四の五の考えるのは二の次だ! そういう小難しいことは俺たちが生き残ってからにしようぜ!!」
「何だよ、背骨折り!! アンタがそれを言うのかね!? 一番小難しい考えをするのは、いつも言い出しっぺのアンタじゃねえか!!」
「兄ちゃん、お喋りしている場合じゃないだすですよ!! やっぱり兄ちゃんの右側の警戒が緩いだすです!! もしかしてどこか体が痛いのだすですか!?」
「ああ、すまねえ、エセンシス! 昨日、どうやら寝違えて右肩が上がらねえみたいなんでゲスよ!」
「じゃあ、オラがそっち側をサポートするから、兄ちゃんはオラの背中を警戒して欲しいだす!!」
「なんでゲスか、エセンシス! そんなに背中がかゆいのなら、次の戦闘からは孫の手でも用意して来るんでゲスね!!」
早雲は自ら迎撃に勤しみながらも、彼ら連携の凄まじさに息を飲んでいた。彼らはこの息継ぎする暇もない死に直面した状況ですら明日のことを持ち出す余裕を持っている。
これがかの戦乱を経験した伝説の男たちの姿であった。これがかのゲリラ軍の兵士たちの実力なのであった。
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