神々の旗印83
さあ、これを読まれている読者諸君ならもうお気づきのことだろう。
以前にも語ったようにアストラ・フリードリヒが思っている機械神【ダーナフロイズン】などというものはこの世界に存在しない。
それに関しては、鳴子沢大膳と、その片腕であるエルフレッド・ゲオルグ博士が証言している。
無論、その機械神ほどではないが、千分の一、万分の一以上もっと規模を小さくした【大型人工知能グリゴリ】と同じ規格の物はこの時代に至るところに点在している。皮肉にも、アストラ・フリードリヒが、そのデータと感情をフィードバックさせた相手とは、そんな大型人工知能と呼ばれる機械神とは程遠い存在だったのである。
しかし彼は、彼の目的のため、ひいては世界全人類に完璧なまでの幸福感を与えるために【ヒューマンチューニング手術計画】を推進する工作を行った。
「人間は、この革新的技術によって前代未聞のパラダイムシフトを迎えるだろう! それは進化とは名ばかりの人間以外のアイテムが進化することではない。人間という不完全だった生き物自体が次の段階へシフトするということを意味しているのだ!!」
人類は、産業革命以来、飛躍的な技術革新を果たしてきたと言われている。しかし、今までのこの人類の有り様を見てアストラ・フリードリヒは感じていた。
「これは人間自体が進化したのではない。人間が使っている道具が進化しただけなのだ! 人間はその中身も肉体も昔とそう大して変わらない。敢えて言うなら、人間という生き物は退化の一途を辿っていると言えるであろう!!」
彼には、この時代の人間がそういったように見えていた。それだけに、このヒューマンチューニング手術は彼にとって願ったり叶ったりな革新に他ならない技術だったのだ。
「その後の事は、いくら愚鈍なアナタでもご存じでショウ? クロヅカ二等兵。その後、騎士様はご自分のコネクションを最大限に利用シテ各大企業や力を持った各国の政府に働きかけ、このヴェルデムンドという大地に人々が足を踏み下ろシタ時には、ソレト同時にこのに住む人々ニ【ヒューマンチューニング手術】をスルような政策をお施しにナッタのデス」
人工知能マーキュリーのお弁舌が、やっとここで一息ついた。勇斗は呆気にとられながらも、彼女がそのような人物のサポート人工知能であったことに、半ば圧倒されていた。
「マ、マーキュリー……。あの、その……、こんな俺なんかでいいのかい?」
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