神々の旗印70
その後の事は、誰もが想像するに容易い。なんと、彼らの駆るフェイズウォーカー小隊に向かって、五、六十体にも及ぶ凶獣の群れが無差別に襲い掛かって来てしまったのだ。
彼らは必死になってそれに抵抗した。必死でヴェロンの群れを叩き斬った。上空から時速三百キロメートル以上のスピードで滑空してくるヴェロン。それに対して、彼らは唾を飲み込む暇も無く
そして――、
そして、その怒涛の攻撃が一様に
それは、イーアンの娘、マルセーユの乗ったフェイズウォーカー“
「あれ以来、背骨折りは、あの特訓を超えられない者は自分のチームの一員として認めなかったというわけさ。分かったかい? お嬢ちゃん」
イーアンは感慨深く早雲を見つめた。それはどこか優しさを帯び、どこか悲しさを滲み出させた眼差しだった。
「分かりました、曹長……。でも、わたし、何て言ったら良いか……」
「良いんだよ、別に気の利いた言葉を返してくれなくても。ただ、今話した内容の意味さえ分かっていてくれれば……」
彼はそう言うと、痛々しい仕草で車椅子を反転させた。まだそれに慣れていないせいか、かなり動作がぎこちない。
「曹長、わたし、ベッドまでお送りします!」
早雲が言うと、
「いいよ、今はその坊やの面倒を見ておきな。傷ついた老兵はただ去るのみってな。ただ今回は、ちょっとしたお節介……いや、老婆心てえのが湧いちまっただけの話さ」
「曹長……」
「俺もそろそろ、前の奥さんと娘の所に行く身だ。それだけに、つまらねえわだかまりだけは残しておきたくねえのよ」
彼はそう言って静かに扉を閉めて部屋を出て行った。
その姿を見送った彼女は、どんどん自分が人間に近づきつつあることを実感せざるを得ないのであった。
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