神々の旗印64


 勇斗はその後も、何度も何度も正太郎の模範演技をその目に焼き付けようと頑張った。が、どうにも彼のあの動きが頭の中に入らない。

 何と言っても目の前の伝説の兵士のその動きというものは、まるで全ての先を見越したように舞い、そしてその反動を活かしつつ対象物を叩き斬っている。それはいかにもシンプルでありながら、途轍もなく複雑怪奇な動作。勇斗が先ほど行ったように、ただ闇雲に剣を振りかざすのではない。その先にある別の何かを切り裂く流れるような動きなのである。そんな神技とも言える動きなど、白兵戦はおろか生身の体で剣を振りかざすのが初めての彼にはとてもレベルが高すぎるのである。

 だがしかし、

「良いんだよ勇斗、今はそれでな。今のお前にはそれぐらいがちょうど良いんだ。そしてな、お前はいちいち頭ん中で理解しようとするから混乱する。いちいち理屈で考えようとするから、頭の中の考えと身体の動きのイメージとのバランスを崩してグチャグチャになっちまうんだ。しかし、こういう体を張った実技ってのはな、そうじゃねえんだ。俺みたいに戦略を考えるとかならまだしも、身体が中心になって動く時ァな、その動きのイメージを体ん中に落とし込むつもりで覚なきゃいけねえんだ。解かるか? そうさな、例えるなら俺たち人間は黙って息を吸ったり吐いたりするだろ? 何も考えずに呼吸というものをしちまうだろ? 正にそんなのと一緒なんだ」

 と、目の前の男は言うのだ。

「呼吸と同じ……ですか?」

 勇斗はキョトンと言葉を飲み込めないまま聞き返す。

 すると正太郎は視線を宙に移して、

「ああ、そうだ。呼吸と同じだ。そしてな、もう一つ……」

「もう一つ……? もう一つって……まだあるんですか?」

「ああ、ここからが大事だ。耳の穴かっぽじいてよく聞け」

「え、あ、はい……」

「とまあ、その前に一つ質問だ。お前さ、さっきの俺の動きを見て、冗談にも超能力者エスパーか何かじゃねえかと思って見てただろ?」

「え、ええ、そりゃまあ……」

「やっぱりな。だがよ、勇斗。実はそうじゃねえ、そうじゃねえんだ。実ァな、俺ァ、お前がこの俺に空き缶を打ち出す瞬間に、お前の機体が射出する角度やタイミングを見計らってそれに合わせて動いていただけなんだ。ほら、何も不思議なこっちゃねえだろ?」

「え、ええええっ!? 何なんですかそれ!? 俺はどっちかって言うと、そっちの方がびっくりですよ!!」

「え、ああ、そうなのか? うむ……まだお前の経験値じゃそんなもんか。だがそれがよ、勇斗。俺たちネイチャーの道を選んだ連中ってのは、どうやら元々そういった部分に長けている場合が多いらしい。だからこそ、この道を選んだんだと思う。子供の頃からの、自分自身への可能性を信じてな……」

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