神々の旗印56


 七尾大尉は、一旦フェイズウォーカーのメンテナンス作業を切り上げて、朱塗りのフェイズウォーカーの分析作業場へ様子を見に舞い戻って来た。

「おや、やけに静かだとは思ったが、調査の方々が誰もおらんではないか。はてさて、どこへ行ってしもうたのだろう……」

 この作業場は、特殊な軽い金属板で囲われただけのだたっ広いスペースである。簡易的にしつらえたクレーンなどはある。が、その他の細々した機材などは殆どを整備場へと移行している。それだけに、やたら閑散とした雰囲気が目立つ。

 そして、幕の向こうに設けられた特別スペース。そこがあの朱塗りのフェイズウォーカーの分解作業をした場所である。

 七尾大尉は首を傾げながら、キョトンとした目でその幕をめくりあげた。余りも二物静かなので、大尉は恐る恐る中を覗き見ると、

「あれまあ、何てことだ! 赤い化け物が、元通りに組み上がっとるではないかえ!」

 赤い化け物とは、言わずと知れた朱塗りのフェイズウォーカーの事である。何と、その赤い化け物の姿が、まるでこの軍事キャンプ内を襲撃してきた時と同じ姿でその場所にそびえ立っていたのだ。

「し、信じられん……。この短時間で、あの四人がここまで復元してしまったのかえ……!?」

 七尾大尉は驚きの余り小首を上げたまま唸り声を上げた。さらに、赤い化け物の足の辺りからコックピットの中までを隅から隅へと目を通してみると、

「か、完璧じゃ……。あの調査班の四人がやったのかえ……。それにしても、あの連中にこんな整備能力があったのなら、こっちの部隊に手を貸して欲しいぐらいだったわい……」

 七尾大尉は手放しに感心する。

「これだったら、実戦にも使えそうじゃ。ふむ、そうだ。羽間少佐に提案してみよう。あのジェリーとかいう若造の適性を検査してみるのも悪くはないだろう」



 

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