神々の旗印⑥


 身長は正太郎よりも頭二つ抜きんで居ているが、ずんぐりと岩のように張り出した筋肉男のマドセードも正太郎の背中を勢い良く叩く。

 それに釣られ、彼の弟のエセンシスも正太郎に詰め寄り、

あんちゃんの言う通りだすです、背骨折りさん。オラたちは、あの時の背骨折りさんの気持ちが痛い程分かるだすですから。確かに、五年前の時点ではオラたちも戸惑っただし、頼りにしていた背骨折りさんが突然居なくなっちまった虚脱感からあんさんを憎むような気持ちも無くはなかっただすです、はい。……でもそれ以上に、オラたちは背骨折りさんが居たことによって今がある事に感謝しているだすです。今あるオラたちの幸せは、背骨折りさんあっての物なのだすですはい」

「エセンシス……」

 正太郎は、まるでトーテムポールのようにひょろ長いエセンシスの穏やかな表情を見上げると、発酵した果実酒の入った盃の淵を合わせ、軽やかにチンと音を鳴らした。

 彼らは昔から複雑な考えは後回しにする悪い癖があった。が、その反面、非常に小ざっぱりとして後腐れのない気の良いところは何も変わっていない。

 前の作戦で、どんなに過酷な目に遭っていても、彼らは任務を確実にこなすことが出来る。そして正太郎が目を見張るほどの身体能力も有している。彼が企てたどんな困難な作戦ですらも、彼らのような逸材が居てくれたお陰で難なく遂行することが出来た。彼が思い描いた以上に、死傷者も被害も出すことなく多大なる戦果を上げられた。正に、少数精鋭とはこのことを示すのだと、正太郎はその時感じていた程の連中なのだ。

 そんな彼らとて、あの戦乱が収束して以来、今は無きヴェルデムンド新政府の監視を受けながら稼業ビジネスに精を出しつつ、温かな家族に囲われ生活を送っていたのだ。

「……しかしな。俺ァ、お前たちを、この時点で不幸に引きずり込んじまっているのかもしれねえ……」

 正太郎が神妙な面持ちで言うや、

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