神々の旗印④


 彼らの狙いは適確だった。

 陽の光が通らぬほどヴェロン一色に染め上げられていた真っ黒な空に、大穴が開くほどの一筋の閃光が通り過ぎる。

 その弾頭の勢いによってぶち抜かれた一体の小さな飛翔体。それこそが正太郎が睨んだ核となる存在だった。

 ヴェロンは、凶獣とまで呼ばれ、その姿は古代の大翼竜を想起させる。そして、その攻撃力と残忍さは、一発の弾道ミサイルにしてやられるのと同等の精神的ダメージを受けるとまで人々に恐れを抱かせる。

 そんな威圧の塊の集団が束になって襲い掛かって来た時、人々は恐怖で思考を停止させられ、反撃すらまともに出来ないことを彼らは心得ている。

 しかし万が一にも彼らに反撃するとしたならば、通常なら必ず体長も大きく立派なヴェロンを本能的に選んで反撃するに違いない。

 だが実際は、侵攻を防ぐペルゼデール・ネイションの正規軍の反撃も虚しく、一向に相手の陣形も崩せぬまま猛攻撃を受けてしまう状態が続いていた。

 羽間正太郎は、そんな状況をじっくりと観察した上で一つの答えを模索していたのだ。

(ならば、奴らの中で一番小さく目立たないヴェロンを撃ち落してみるか……)

 と。

 案の定、烈太郎の監視モニターによって判別され、定点観測された極小のヴェロンの動きは、他の大きなヴェロンの陰に隠れながら、あちらこちらに動き回る様子が確認された。さらに、その極小のヴェロンは、大きなヴェロンらに混じる事無く、攻撃に加わることすらなかったのだ。

 よって正太郎が導き出した答えが、

「アイツだ! アイツを撃つんだ! 烈!!」

 と、こうなったわけである。

 後の人類側の功績は想像するに容易い。

 強力なレールキャノンによって指揮系統を撃ち抜かれたヴェロンの大群は、正規軍と、正太郎によって新たに招集された元反政府ゲリラ軍の面々の猛反撃に遭い、その殆どを緑色の粘液のにされてしまったのだ。

 その勢いによって、地上で暴れまくっていた下等な肉食系植物のローゼンデビルやグレイピーナッツらも駆逐され、多大な被害は被ったものの一応のこと、人類側の勝利を収めるに至ったのである。


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