虹色の人類132
「うん、もうっ失礼ね! それを言わないでよ、ショウタロウ・ハザマ。あたしだってそうしたいのだけど、今はこれしか思い浮かばなかったのよ! だってさ、あたし……そういうのにとても
彼女は両手の人差し指同士をつんつんと合わせると、可愛らしく口を尖らせて顔を赤らめる。
それもその筈である。彼女は幼少の頃より、戦略家として軍を陰から支えてきたのだ。一般的な女の子の価値観には程遠い世界の住人だったのだ。
「なあ、エナ。お前はもう誰でもねえ、誰の指図も受ける必要のねえ自由の身になったんだ。これからは、お前の好きに生きるべきだと思うぜ?」
「うん、ありがとう、ショウタロウ・ハザマ。あたしもそう思うわ。きっとこれも、あなたのお陰よ。……でもね、あたしはもう、ここからは離れられない。だって、この施設のマザーシステムは、どうやら三次元ネットワークとは繋がっていないらしいの。だから、あたしのこの意識は、もうここでしか生きる事が出来ないということ……」
「な、なんだと!? そ、それじゃあ……」
「ううん、いいの。それも覚悟の内よ。あなたにここに連れて来てもらった時点で、このケースは想定していたわ。そして……」
「そして? 何だ?」
「そして……。今、こうしている時から、あたしの意識も記憶も段々薄れて行っている……」
「な、何ィ……!?」
「それは前にも言った通り、あなたにも分かっていた事よ。あなたが以前愛したアンナさんだって、こうやってこのマザーシステムに意識を吸い取られて……。そして、別の物に生まれ変わった……。だからあたしも、別の生命体に生まれ変わる……」
「別の生命体だと……!?」
「そうよ、とても人間ではなく人間に近い別の生き物。いいえ、別の人類とでもいうのかしら? それはとても前衛的で、とても先進的な物……。だけど、とても愛が含まれていて、美しい物かもしれないわ……」
「それは何だ? エナ!!」
「そう、それは……、人間だけの力では作れない、とても優秀なアンドロイドのこと……」
「なんだと!? それはまさか……!?」
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