虹色の人類123
「嫌あぁぁぁーっ!!」
とばかりに、耳をつんざくほどの甲高い奇声が坑道内に
正太郎は突然のことに呆気にとられ、目をまん丸くして辺りを見渡すと、
「な、なんだありゃあ!?」
なんと、その異様な生物の群れの後方から、怒涛の波しぶきが上がるが如く血みどろにまみれた肉片が弾けて飛んで来る。
「うおあっ、ヤバいぜ、こりゃあ!?」
どうやら、その肉片が弾き飛んでくる中心から奇声が放たれているようだった。だが、その奇声の元はその内容とは真逆に次々と異様で不気味な生き物たちを、憐れな肉塊の如く粉砕してゆく。
正太郎は、あのおぞましい姿をした不気味な生き物が、さらに砕け散り飛んで行く様を見て、
「う、うへえ……」
と、思わず胃の奥底から何もかもが込み上がって来てしまいそうになった。
彼がそんな光景に唖然としていると、
「ま、待ってくれえ、はやぐもぉ!!」
と、どこかで聞いたことのある男の情けない声が遠くの方から聞こえてきた。その間も、奇声と肉塊の飛び散りは収まらない。
不気味な生き物の群れは、未だ大河のように押し寄せて来るが、次第にその上流の方は落ち着き始めている。それもその筈で、あの奇声の主の並々ならぬ暴虐的な力によって不気味な生き物たちがゴミ屑のように
正太郎は、未だ意識プログラムの移送が完了していないエナの様子が気になりつつも、それを横目で確認しつつ、即座に這いつくばりながら、彼らの視界から身を隠した。
「あ、あいつら……、一体なんだってんだ……!?」
確かにここは、エナが述べていたように特殊な〝世界〟を複数管理する施設である。だが、このような化け物染みたイレギュラーな生き物がまかり通っているなどとは、現実には信じられない。
どんなに羽間正太郎が、途轍もなく様々な経験値を重ねて来ていたとしても、これは気色が悪すぎるのだ。
彼は言葉を無くし、唸り気味に押し黙って様子を窺っていると、
「あっ……、あいつは……!?」
と、一人の男の姿を視界にキャッチした。そう、その男とは、先ほどから情けない声を上げながら、奇声の主を追い駆けて来る人物のことである。
「ま、まさか……!? ありゃあ、ジェリー、ジェリー・アトキンスじゃねえか!?」
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