虹色の人類118


 彼等は、この時点で互いの感覚を読み合っているだけではなく、激烈な攻防を重ね合っていた。ああ手を出せば、こうやって防ぐ。こう防御を張るのだとしたら、次はああやって攻める。

 まだ、どちらも物理的に攻撃を加えたりはしていないのだが、互いの心の中では死力を尽くした戦いが始まっていたのだ。



 ※※※


「反勢力だと……? それはどういう……!?」

 鳴子沢大膳は、玉虫色の男に向かって単刀直入に問うた。

「ふむ、その件だがな、鳴子沢大膳よ。貴様は、我々五次元人をどうも誤解しておるようだ。我々五次元人……、つまり、貴様らが呼ぶ虹色の人類とて、何も一筋縄などではない。敵対する勢力などやたらめったら存在する」

「な、なんだと!? し、しかし……、貴様らは、完全共有生命体。つまり、内面の隠し事も出来ぬほど繋がり合っている生命体なのだと言っていたではないか?」

「ふふふ、それが誤解だというのだよ、鳴子沢大膳。我々は、貴様らが想像出来ないぐらい遠い昔に、貴様らと同じ次元に生命を有していた一生物の集合体であった。そして、我々も貴様らと同じように、同種族どうしで殺し合い、醜い諍いを繰り返してきた生命種族であった。だが、その顛末を危惧した者らによって、人工的に完全共有能力を植え付けられ、それが自然発生的にこの世界に誕生したのだと教育されて育ったのだ」

「な、何ィ……!? そ、それでは、まるで、先の政府が行った強制的な〝ヒューマンチューニング手術〟施行法と似たり寄ったりではないか!?」

「そうだ、その通りだよ、鳴子沢大膳。我々五次元人とて、そういった過去を消し去ってまで永遠の統治をしようと画策している薄暗い過去がある。私はこのように、長年の様々な研究をしていた経緯があってそれに気付くことが出来たのだ。彼ら、過去の人類の勇者のコレクションによってな」

 玉虫色の男は、あの大きなガラス球のような球体の連続を見やる。

「しかし、他の者たちはそれをまるで知ることもないだろう。なぜなら……」

「なぜなら……?」

「完全共有などといった物自体がだからだ」

「か、完全共有がまやかしだと!?」

「そうだ。我々の概念である完全共有は偽りの共有なのだ」

「し、しかし……、貴様ら五次元人に、嘘偽りの概念が無いはずでは?」

「その説明は簡単だ。つまり、我々にとって不都合な情報だけを共有されなければ良いという手法がまかり通っているだけだ。具体的に言えば、私が先ほど述べた我々五次元人の遠い昔の過去の情報を共有されないように統治するシステムが、我々の体内に埋め込まれているというだけなのだ」

「なんだと!?」




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