虹色の人類㊴


 正太郎を取り囲んだ数人分の意識は、正に狂気と殺意に満ちていた。

 しかし、彼らの手の中には、以前この街中で出くわした金色のチャクラムは握られていない。ただ、にじり寄る殺気の元から、数本のレーザーソードの光が坑道の暗闇にまばゆいばかりに映え渡る。

「へへっ、やはりそうだったか。やはりそうだったのかよ。俺ァ、とんだ勘違いをしてたみたいだぜ。以前、ここでやり合った連中がアヴェル率いる黄金の円月輪だったもんだから、きっと奴らがこの世界を混沌に追いやった首謀者なんだとばかり考えていたぜ。だがよ、こりゃあ完全なミスリードだったってもんだ。なあ、そうだろう? ノックス・フォリーの飼い犬さんたちよ」

 正太郎は右手で拳銃を構えつつ、左手のレーザーソードの出力を全開にした。

 すると、相手方の数本のレーザーソードが青白い光と共にゆらゆらと辺り一帯を照らし出し、一様に殺意を隠せない刺客の表情を際立たせる。

「そうよ、そうだとも。これはお前さん方の思った通りよ。俺ァな、もう一度ここに来れば、今回の騒動の真犯人が手を出して来ると考えて舞い戻って来たってわけだ。しかし、まさかテメエらがその首謀者の片鱗だったとはな。その細けえ理由は分からねえが、この入り口の向こうにテメエらの見られたくねえもんが眠ってるってわけなんだろ?」

 正太郎は相手方を煽り立てるが、刺客共は戸板で隔てたように言葉を一切口にしない。ただひたすら彼に向って間合いを詰めて来るばかりである。

「へへっ、目は口ほどにものを言うってな。どうやら返事がねえってところは図星のズっちゃんイカ確定だな。いいか? そうやってな。押すな押すなと言われりゃ押したくなるのが人情ってもんだ。そこまで見るな見るなと命を狙われちまえば、こちとらどうしても中身を拝みたくなるってのが筋ってなもんだぜ。いいかテメエら! この俺をどうしてもここで止めたきゃな、死ぬ気で掛かって来やがれ!! この頭でっかちのゲス野郎ども!!」

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