虹色の人類㉟


 エナが何を言っているのか、烈太郎には理解不能だった。理由も目的も勝手すぎて、人工知能の烈太郎の真っ直ぐな思考回路では付いて行けるもではない。

 それでもエナは、

「ねえ、烈くん。このままあたしを乗せて、どこか遠くの国まで行っちゃおうよ。何なら、このあたしとこのままペアを組んだりなんかしてさあ。ほら、その方が何かと都合が良いはずよ。だってあたしはミックスの手術も受けているし、ショウタロウ・ハザマと違ってインタラクティブコネクトも可能だわ。その方がお互いの気心も気兼ねなく知れるはずよ。それにほら、あたし女の子だから少しは華があるでしょ? どうやら烈くんは、人工知能のくせに人間の男の子みたいだから、きっと上手く行くはずだわ……」

「な、な、何言っているの、エナちゃん? そんなこと出来るわけないじゃないか! オイラ、兄貴を裏切ることなんて絶対に出来ないよ! それに……」

「それに?」

「それにね、オイラを作ってくれたお父さんから、兄貴とは離れるなってそうきつく言われているんだ……」

「お父さん? パパ? ああ、それはもしかして、あなたを作ったかの有名なドクター・キリノのことね。よく知っているわ。とにかく人工知能や機械分野のテクノロジーに関しての研究ではあの方は超有名人ですものね。何よりあたしたち研究者界隈ではすっごい変わり者の偏屈者として名が通っているわ」

「ハハハ……、やっぱりお父さんて、ちまたではそんな感じで言われているんだ……」

「そうよ。勿論、技術者、研究者としての畏怖や尊敬も含めてね。そんな偏屈者のドクター・キリノに唯一個人的に気に入られてコネクションを持っていたのが、あなたの相棒のショウタロウ・ハザマというわけね。そんな噂もあたしたち研究者の間では常識よ。何しろショウタロウ・ハザマは、元々が堅気の何でも屋を装った武器商人だもの。女ったらしの人たらしは彼の性分だし、その類稀なる特質は昔から健在だったというわけよ。あたしが最近になって学術的に名付けたインターフェーサーって言葉ね。あれはそういう意味も含まれているのよ」

「へええ、何でも知ってるんだね、エナちゃんは。さすがは兄貴の研究をしてきた人だけはあるね」

「当然よ。それだけに、あたしはショウタロウ・ハザマのウィークポイントも良く知っている」

「え?」


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