緑色の㉑
クリスティーナの
「ふむ、クリスティーナ。君の考え方は正しい。実にその通りだからだ。我々は始祖ペルゼデール様にとって、一種のバクテリアか細菌か何かの存在と同程度のものなのであろう」
デュバラは言い切った。それが正に、人類創造の
「なっ……!? 何よ、デュバラさん! なぜあなた、そんなにも軽々しく、こんなにも絶望的な内容をすんなり受け入れられるの!? 少し考えが変過ぎてよ!?」
「ならば問おう、クリス。君は、我々人類が始祖ペルゼデール様にとってバクテリアレベルの存在であったからと言って、君自身が今日から我々の知るバクテリアの存在になり得るとでも考えているのか? 今の君は、今日も昨日も明日でさえもクリスティーナ・浪野という存在でしかないはずだ! 少なくとも俺の目の前に佇む君は、どこからどう見てもとても気が強くてとても努力家で、外見も素晴らしくチャーミングな一人の女性に変わりはしないではないか! 少なくとも俺にはそうとしか受け取れない。いいか? よく聞け! 俺は君が好きだ。そういう君が好きだ! 好きになってしまったのだ! この気持ちに一切の偽りはない! そうだ、そうだとも。これが我々人間なのだ! 人類の営みなのだ!!」
「なっ……!!」
それを受けてクリスティーナは一瞬言葉を飲み込めず、ポカンと口が開いたままになったが、どうやらその重大な内容を把握してか顔面から火を噴いたように真っ赤に染まった。デュバラの突然の告白に、今度こそ彼女は完全に言葉を失ったのだ。
「こんな深刻でスケールの大きい話をしているのに、デュバラさんて意外に大胆……」
いままで呆けていた小紋も思わずボソッとつぶやいてしまう。隙あらば何とかという言葉があるが、余りにも脈絡のない愛の告白に、たまらずにやけが止まらなくなる。
「ちょ、ちょっと……デュバラさん。あ、あの、わ、わ、わ、わたし、その……」
未だ慌てふためいて顔の火照りが止まらぬクリスティーナに、
「良いではないか、クリス。それとも迷惑だったか?」
「い、いや、そ、その……、そういうわけではないんですけど……」
「なら返事はすぐでなくて良い。俺のこの腹の底から湧き出でたる本心はそのまま君に伝えた。後は君の返答次第だ」
「あ、はい……」
小紋は、この二人のやり取りを端から窺って、これこそが自分たち人類の有り様なのだとまざまざと感じた。
そう、もしデュバラ・デフーの話の通り、我々人類が始祖ペルゼデールという存在にとってバクテリア程度の意味合いしか持たなかったとしても、それはそれでいい。きっとそれでいい。彼女にはそう思えて仕方なかった。
(だって、こんなにもお互を感じ合えるんだもん。きっと僕だって、いつかきっと……)
こんなにも混沌とした内容の話の最中であるにもかかわらず、なぜか彼女は前向きな気持ちで一杯になった。
緑色の邂逅 終わり 新章に続く
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