青い世界の赤い㉔
クハドは、その自慢の目や耳で拾った情報を基に、彼の予測を兼ねた見解をデュバラに詳しく語った。
「なるほど……そういうわけか。お前のその突出した能力が裏目にでるとはな。才能が故の悩みと言ったところか」
「は、はい……、まさか、こんなことが障害になろうとは思いもよりませんでした。さすがに俺には〝三心映操の法術〟使いと思われる対象人物の意図が何なのか読めません。なぜここで笑う。なぜこんなところで余裕をぶちかませているのか……? まるで見当が付かないのです」
「うむ、確かにな……。しかしな、クハド」
「はい……」
「これがもし、あの羽間正太郎だったらと仮定したならば、無闇にこの場面で、我々だけで
「ええ、仰る通りです、デュバラさん……」
「だが、お前の言うように、この近くにいる対象が女なのだとしたら……しかも、子供のような出で立ちの女なら、我々の力だけで任務を果たすのも十分なのではないだろうか?」
「い、いや、デュバラさん! それはいけません! 相手はあの三心映操の法術の使い手なのですよ? いくらこの場にいる対象人物が羽間正太郎ではないと仮定しても、安易に攻めるのは危険だと思います!」
「しかしクハド。お前は俺がここに来る前に、一人でそれをやろうとしてたではないか?」
「そ、そりゃそうですが……。確かに私は、そのつもりでした。だけど、なぜかは分からないけれど、全然体が動かなかったのです! 一人でいきり立って攻めようと試みても、全く自身の身体が攻めることを拒否しまくっていたのです! だって、相手はあの三心映操の法術の使い手なのですよ? 我らの組織に延々と伝わるそれは特異なる奇跡の秘術なのですよ? 先代のゲネック様ですら習得できなかったその技の持ち主と有らば、女であるとか子供であるとかは関係ないと思います!」
「すると何か? クハド、お前は俺の意見には反対だというのだな?」
「い、いや……、反対であるとかそうでないとかの問題ではなくて……」
二人の意見は、この期に及んで平行線を辿っていた。
クハドは、その天性の鋭すぎる感覚を有する身である分、いささか以上に慎重に事を運びたかった。
だが、デュバラはそうではない。彼は、ここで自分が想像する成果を上げて、古参のメンバーにその力量を誇示したくてたまらないのだ。
「いいさ、クハド。お前がそこまで言うのなら、お前は俺の後に付いて後方からの支援に回るのだ。俺は、お前の見立てた通りの情報を基に、一気に攻める。それで文句はないな」
「は、はあ……」
クハドは、あくまでも乗り気ではなかった。なぜか後ろ髪を引かれる様に、本能がゆく手を
だが、ここはデュバラの言い様に流されるまま、渋々後を付いて行くしかなかった。
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