野望の72

 コンダクターは、発電施設の中に数えきれないほど存在する。中にはダミーとして設置している物も含めれば百箇所は下らない。

 正太郎は作戦計画の時点で、エクスブーストが効果的に作用する場所をコンピューターによって割り出させている。

「エクスブーストは効き目があり過ぎても無さ過ぎてもいけねえ。それはさっきの武装ドールとの一戦でそれを証明しちまっている。アンナがあの変電中継器に仕掛けたエクスブーストの量がいかほどの物だったかは知れねえが、あれだけ放電圧の怪物が暴れ出しちまったら俺の計画もそこでおじゃんになっちまう。ここは気を引き締めていかねえと……」

 前日、前々日と二回に分けてアンナから手渡されたエクスブーストは、あらかじめ適正量に小分けし、いくつかの時限装置にセットして置いた。これの量を少しでも間違えれば発電施設は暴走し、計画に必要な電力量を供給するどころか逆流を防ぐための装置が作動してしまい、自動でシャットダウンしてしまう。

「俺の計画は、あくまでミックスとネイチャーの全ての連中の意識を繋いでこのゲッスンの谷の戦いが不毛であるかを世に知らしめる事だ。この谷に埋もれている宝の山が今後未来のために有効活用されることを願ってな……」

 そうこうしているうちに、もう残り時間は一時間を切った。あと二箇所ほど設置すれば計画は最終段階を迎える。

 そんな折り――

「お、おい! 第三区画の武装ドールがいきなり暴れ出したぞ! 気をつけろ!」

 ここの施設の警備兵らが一斉に騒ぎ立て始めた。それと同時に全館にけたたましい警告音が鳴り響き、空気が今まで以上にピンと張り詰めた。

 正太郎は物陰に隠れながらも、

「何なんだ!? 俺が見つかったわけでもねえはずなのに、この騒ぎっぷりは何があったんだ!?  確か、武装ドールが暴れ出したとか言ってたな……」


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