激突の⑫
正太郎は、輸送機の中にある武器を手当たり次第片っ端から寄せ集めると、高速ホバーバギーにそれを積み込んだ。
「てめえらが、なまじ知能が高まったって言うんならよ。俺はその上を行くだけだ」
戦略というものは、それを企てた策士がその盤上に引き込むことで優位性を発揮する。つまり、相手を勝手に自らの土俵の上に誘い込むことが雌雄を決する第一要因なのだ。
今の正太郎には、これらの肉食系植物の大群を裏で操ろうとしている正体は分からない。しかし、これらが何者かの何らかの目的によって進化を遂げたことだけは想像できる。
であるならば、その策謀をもたらした側は、我々人類側がまだその事実を知らないであろうと高を括っていることが予想される。それが証拠に、肉食系植物の大群は擬態化したまま両軍の高みの見物を気取っているのだ。
「てえことはよ、逆にこっちが知っててそんなことやってた、みてえな演出すればいいってわけよ」
彼は、高速ホバーバギーを縦横無尽に操りながら、所々に武器をセットしてゆく。無論、リモコン操作で発射できるバズーカ砲や簡易ミサイルキャノン、そして強力な爆薬を矢の先端に取り付けたクロスボウなどである。
そんなあらゆる射出武器をあらゆる場所に仕掛け、凶獣ヴェロンなどが擬態化した方向に狙いを定めてゆく。
「まったく、こんな大事な時にバカ烈の野郎は気持ちよくグースカピーってな感じでお寝んねしちまっているからな。俺ァひとり寂しく内職仕事ってか!」
そんな憎まれ口を叩きつつも、彼はどこか意気揚々としている。したたり落ちるほどの大汗をかき、息を切らせながら作業を進めているのだが、その手さばきは職人芸そのものである。
彼は広範囲にそれらを仕掛けているのにもかかわらず、余計な物音一つ立てずにそれを成し遂げてゆく。これこそが過去に反乱軍で培ってきた経験によるものなのだ。
「へへっ、これで準備万端だぜ。そしてこれからが勝負ってわけだ」
口角を上げ、爛々とした目の輝きが止まらない。
彼は、最後の仕上げとばかりに高速ホバーバギーに跨ると、エンジンを切ったまま簡易ミサイルキャノン砲を方天戟とチャクラマカーンが睨み合うフェイズウォーカーの群れに狙いを定めた。
「もしかして当たっちまったら悪く思わねえでくれよ。俺ァてめえらに当てるつもりはねえんだからな!」
彼は言葉を終えた瞬間、キャノン砲のトリガーを引いた。そのミサイルは真っ白な閃光を放ち糸を引きながら凄まじい速度で一台のチャクラマカーンの機体の前に着弾する。着弾したミサイルは火炎と共に四方八方に凄まじい土煙を上げ弾け跳んだ。
「よし!」
正太郎はその様子を確認すると、すぐさま携帯していたリモコンのスイッチを押す。すると今度は随所に仕掛けていた射出武器が一斉に擬態化した肉食系植物の方向へと撃ち出される。
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