「キレたんですよ、うちの上司が」
「ッ、キリねえッ!」
「間違った
無駄口を
「…まずいな。離されてる」
ぽつりと呟くように、ソウヤがもらした。
ルカとフルヤの標的の
ソウヤは、意識せず舌打ちした。
そこに、爆音が響く。咄嗟に、三人ともが視線を向けた。花のある辺りだ。
「フルヤッ!?」
「阿呆、鼠連れてく気か!」
駆け出しかけたスダをリツが叱り飛ばし、しかし当人が忌々しげに舌打ちする。目が、
「――ソウヤ」
「はい」
ぎろり、と睨まれ、ソウヤはため息を押し殺して返事をした。これで、片付ける始末書の数が増えた。
だが、雑用やお偉方の説教と仲間の身と、どちらを選ぶかは言われるまでもない。
「スダ一佐、鎖月の一、使ってください」
「――何?」
「早く! 自分のことだけは自分で守ってください」
「だから、何を――」
「キレたんですよ、うちの上司が。山がはげないよう祈ってください。――鎖月、一の戒!」
説得に時間をかけることなく言葉を投げつけて、ソウヤは自分のための術を発動させた。局地的な結界が生み出される。
続いて、スダの声が聞こえた。間に合った。
「雨月、九の月! ――晴月、五の月! 晴月、二の月!」
強力な
「守月、九の月!」
下手に術中に結界や今使った守壁を使えば、術の失敗や術者への被害が及びかねない。
しかし、先に行動を言ってくれればもっと早く守れるのにと、リツを守る術を発動させながらソウヤは歯
炎を、三人ともが見つめていた。
「――ソウヤ、ありがと」
素早く、手順に沿って術を
瞬発ではなく継続するものは、その手順を踏んで解かなければ、術者や被術者の体に多く負荷がかかったり下手をすると解けずに終わったりしてしまう。
リツは、炎の中で鬼神のように立っていた。
「雨月、一の式!」
柔らかく、細かな水が――雨が降る。
ソウヤはリツと目を見交わし、頷いてルカの元へと向かった。結界も、リツのものと一緒に解いたため、少しばかり髪がこげている気がする。
一拍置いて、スダも続いた。
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