あとがき ネタバレ人物紹介も兼ねて
強い奴を、圧倒的な不利を覆し、カッコよく倒す。バトル物では間違いなく王道であって、それだけに難しい。
そもそも、強さとは何ぞやということを突き詰めると、強い奴は油断も隙も慢心もしない。つまり、弱点がないので、倒せない。
そういうときに考えた設定が『天使の贈物』と、それを無効化する『悪魔の魔弾』でした。
よくあると言ってしまえばそれまで。しかし、何であれ自分の頭からひり出した物というのは何らかの糧になると思って書き続けてみたら、20万字の長編小説になったという格好です。
前作『黄昏街と暁の鐘』で、「今回は16万字で済んだぞ」などと意気揚々でしたが、広げた風呂敷を畳もうとすると、やはりこれくらいかかってしまうようです。これでもだいぶ巻き進行なのですが。
このサイトの中には百万字を越えて同じシリーズを執筆し続ける途方もない猛者がいらっしゃるし、それについていく読者も存在する。脅威的です。自分でやったら多分途中で飽きちゃいます。
とはいえ決して短くはない物語、最後まで読み続けてくださった方には厚く御礼申し上げます。エピローグで急に出てきた男子たちは、過去の拙作の主人公たちです。基本的に、他の作品を読まなければ分からないような小説は書かないつもりですが、興味と時間がありましたら、『Re:Re:Re:Re:-リリリリ-』『おマツリ少女とSCP!アフター!!』『黄昏街と暁の鐘』も併せて楽しんでいただけると幸いです。
ここからは、ネタバレしつつのキャラクター紹介をしていきます。プロットなど作らずに書いていますので「こんな風になっちゃったね」という作者のセルフレビューみたいなものだと思って読んでください。
〇ウィリアム・“ビリー”・サンタマリアJr.
アメリカの片田舎出身。飲んだくれの虐待親父を殺したはいいものの、虐待時の傷が元で亡くなった(普段は、なんだかんだ父親が病院に連れて行っていた)のち、父の銃を持ったままクリサリアに転生した。言語も時間の感覚も違う異世界に飛ばされたことで、記憶が混乱してしまい、以来クリサリア人としてクリーフに育てられた。
別の設定集で書いたように、C・イーストウッドとジョニー・デップを合成した上で、『ドル箱三部作』を始めとする色んな西部劇映画の主人公を継ぎ足して出来上がったキメラ型主人公。こいつが銃を撃つたびに作者は「え? そんなこともできるんすか」と驚いていた。
〇ジュンヤ
応援コメントでいただいた通り典型的なやられモブ敵キャラが、第二部では実質的な主人公。実は第二部開始時点まではこいつがクリーフに捕まり、それをビリーが救い出すはずだったのに、気が付いたら逆になっていた。二部のテーマが「ちゃんとカムバックできる『シェーン』と『大いなる西部』をミックスしてみよう」だったので、彼に頑張ってもらうことになった。本当に、ブリみたいな奴だった。
〇マコト
何でもできる系のチート勇者は書き辛いことを証明してくれたヒロイン。最強系は俺には無理だと分かりました。あまりにも活躍のさせ方が分からなさ過ぎて、一部のラスボスになってもらおうと思いついたときはホッとした。
〇マコトの愉快な仲間たち
『勇者狩り』が、いわゆる『異世界転生チート物』を嘲笑うような作品になってはいけないというのは、当初から真剣に考えていて、そのためにもコーザ・ピリス・ケンジ・フーたちの活躍を描くことは不可欠でした。彼らはきっと、クリサリアを良い国にしてくれるでしょう。
〇シリズ
第一部のラスボス―――の座を実質的にマコトに取られただけでなく、なんか物語が終わった後で冷静に見てみると、良いように使われた操り人形のようにも思えてくる哀しき敵。
クリーフに比べて、やらかしたことの動機があまりはっきりしないまま死んでしまったので、幽霊になっていろいろ語ってもらおうと思ったこともありましたが、もう死んだ奴がペラペラ喋るのは良くないと思い、無しにしました。ゾンビだったら許す。
〇クリーフ・リーヴァンズ
こいつを真のラスボス―――ムドーを倒した後に出てくるデスタムーアにすることは、名前を、『続・夕陽のガンマン』で“悪玉”を演じたリー・ヴァン・クリーフから取ったこともあり、最初から決まっていたのですが、「なんで?」の部分はまったく決まっていませんでした。
ついでに彼の能力であるネクロマンサーも、能力が明らかになる前の話数を書き上げた夜の風呂上がりに思いついたものです。本編にも描写した通りこやつは『千里眼』に抵抗力があるので、世界を震撼させたゾンビ騒動の首謀者ということも、すべての黒幕だということもほとんどの人間には知られぬまま、天界に旅立っていきました。
女神に恋焦れるあまり世界を滅ぼしかける。何ともしょうもない恋愛脳野郎ですが、それだけに巷に溢れる神話っぽくていいかなと思ったりもしています。
『勇者狩り』はひとまずここでエンドマークを打ちますが、一本、番外編を予定しています。次回作もあまり間をおかず書いていくつもりなので、今後ともよろしくお願いいたします。
2019年8月11日 祖父江直人
勇者狩り 祖父江直人 @naotosobue
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