第263話 それこそ意味不明

 そうか、これからか・・・たしかに時間的に早過ぎだ。この時間に結論が出てるのは逆におかしいよな。


 10分が過ぎた。コーヒーのお替りをした。

 20分が過ぎた。もう1回コーヒーのお替りをした。

 30分が過ぎた。もう1回コーヒーのお替りをした。


 おいおい、いくら何でも次の連絡がこないなんておかしいぞ。まさか唯の奴、そのまま藍と口論になってないだろうな。それにさすがに店内が混んできた。いつまでもドーナツ1個でコーヒーのお替りを続けるのは失礼だぞ。

 40分待っても連絡がこないから俺はマイスドを出たけど、さすがにお昼を過ぎたから何か食べたい。仕方ないからWcDに行った。この時点で既に1時間が経過した。俺は『てりやきWcDバーガーのバリューセット』を買って一人で食べ始めた。でも、食べ始めてもまだ電話がこない。


 10分が経過した。てりやきバーガーを食べ終えたけど連絡がない。コーヒーをお替りした。

 20分が経過した。2回目のコーヒーのお替りをした。

 30分が経過した。ポテトも食べ終えた。3回目のコーヒーのお替りした。

 40分が経過した。4回目のコーヒーのお替りをした。

 50分が経過した。5回目のコーヒーのお替りをした。


 さすがの俺も苛立ちを隠せない。何かあったと考えるのが自然だ。俺はこれ以上待つのは無駄だと判断してトレーをもって立ち上がった。


“♪♪♪~”


 来た!メールだ!!

 俺は一度は立ち上がったけど再び座り直してスマホを取り出した。かれこれ2時間近くも待ったのだから、正直、悪い返事だけは勘弁してくれよ。

 俺は焦り気味でスマホを見たらそこにはこう書かれていた。


『連絡が遅くなってゴメン。全て終わったよ。悪いけど一度帰ってきてね。追伸:地下鉄を使うのは厳禁だからね。ぜーったいに歩いて帰ること。唯より』


 なんだこりゃあ?

 前半の文面だけを解釈すれば早く帰れとも読み取れる。だけど追伸以降の文面はどう考えても急いで帰るな、時間を掛けて帰れと言ってるとしか思えない。

 それこそ意味不明!?

 でも全体を見れば帰ってこいと書いてあるのは間違いない。俺はイマイチ理解できないけど歩いて帰る事にした。

 もう9月、今は一日で一番気温が高い時間帯だけど、もう30℃に手が届かなくなっている。朝晩はひんやりするのが当たり前になっているから寒暖の差が大きくなっているし、既に北海道の屋根と言われる大雪山系では紅葉が始まっている。早い年には今月末には市街地の街路樹も色づくようになるけど、今年は秋の訪れが例年よりも早いらしい話を昨日のニュースで言ってたなあ。秋刀魚サンマ、鮭、ジャガイモ・・・北海道の秋の味覚が店頭に並んでいるし、もうあちこちで収穫祭や港湾祭も始まっている。来週には石狩川河口で「石狩さけまつり」もある。昔は毎年のように言ってたけど、ここ数年は行ってない。だけど父さんと母さんが今年は行こうとか言ってたような気がする。

 そんな事を思いながらも俺は歩いて帰り、家の前まで来た・・・あれ?母さんの車がない。もしかして母さんは出掛けたのか?俺はその程度の認識で玄関のドアを開けた。

「ただいまー」

 あれ?・・・何も反応が無い・・・しかも父さんと母さんの靴が無い・・・藍と唯の靴はあるけど玄関の鍵は開いていた。どういう事だ?


“♪♪♪~”


 ここでメールかよ!?しかもこの音は唯からだ


『お姉さんとよーく話し合ってね。別にお姉さんは怒ってないからねー』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る