雨降って地固ま・・・

第224話 予選会が終わって・・・

 形の上では和解が成立し、一時休戦の形になって『高校生クイズキング選手権』に挑む事になったけど、それはあくまで一時的な物だというのは俺にも分かっていた。藤本先輩も相沢先輩も『呉越同舟』で村山先輩とのトリオで予選会に出場登録し、大会が終わるまでは篠原を追いかけまわさない事で紳士協定(淑女協定?)を結んだようだ。藍も唯、舞とのトリオで参加登録し、大会までは俺にちょっかいを出さないと明言した。

 まあ、藍の場合、俺に何か変な事をして藤本先輩の耳に入ったらが現実になるから、少なくとも大会が終わるまでは封印するようだ。ただ、藤本先輩も相沢先輩も、それに藍も「大会が終わるまで」と言っていた・・・。


 俺たちにとってもクイズに集中できる環境が整った・・・のだが

「おーい、最近の図書室、やけに部外者が多くないか?」

「拓真もそう思うか?」

「多分、目当ての連中がオレたちを負かそうと必死になって探してるんじゃあないか?」

「あー、ねえ。しのはらー、お前、本当にが出てきたらどうするんだ?」

「そんなのは決まってる。神であろうと天才であろうと、おれたちが乗り越えればいい」

「相変わらず篠原はクールだねえ」

「そういう長田は暑すぎるんじゃあないのかあ?」

「うーん、それは認めるけどなあ」

「浮かれすぎるなよ」

「分かってる」

 そう、藍が血眼になって探していたトキコー七不思議の4番目の『知識の女神』が残したという書物を巡って、クイズ勝負があった日の放課後からトキコー図書室に生徒たちが殺到する事態が続いていて、図書室の司書さんたちも迷惑顔だし、俺たちクイズ同好会も図書室で落ち着いてクイズ合戦(?)をやれる状況ではない。当然だが藍も唯も舞も、さらに泰介や歩美ちゃん、それに村山先輩、他にも『高校生クイズキング選手権』に出場する面々、単に興味本位や自身の成績アップ目的の連中までもが乗り出して必死になって探しているが、誰一人として『知識の女神』が残した書物を見付け出していない。中には平川先生に情報提供を求める生徒もいたが、平川先生は「知らぬ、存ぜぬ」で押し通して無関係を貫き通す有様で、連日図書室は開設以来最高の賑わい(?)となっていた。

 変わった点といえば、校内随一の変態集団(?)とまで言われたクイズ同好会が一躍校内の人気者の仲間入りをして、クイズ勝負が終わった直後から文芸部の女子が一斉に『文学王』長田の奪い合いを始める事態に発展した。何しろ奪い合いに参加しなかったのが彼氏持ちである部長と俺を狙っている藍だけだった(1年生の女子二人と2年生、3年生の女子一人の四人は付き合っていた彼氏と強引に別れて長田争奪戦に加わった)から、それはもう凄まじいとしか言いようがない状況が1週間続く異常事態で文芸部は活動休止状態だった。

 結局、俺が仲介役になって、まあ実際には藍が「文芸部随一のお調子者だけど根は真面目。胸は唯さんより小さめだけどルックスも結構いいから選んでも誰からも文句が出そうもない」という半ば投げやりな仲裁で俺や藍と同じ2年A組の黒沢朋代さんを指名したのだが、藍の紹介の形にすると間違いなく将来に禍根を残しそうだったから「拓真君がやってね」と強引に俺を仲介役に仕立て上げて、やむを得ず俺が昨日の放課後に黒沢さんを大通りの地下街にあるWcDに連れだす形で長田と引き合わせて、長田と黒沢さんは付き合う事になった。それで今朝の登校時に二人揃って肩を寄せ合うようにして登場した事でようやく(?)騒ぎが収まり、中には本当に泣き出す子までいたが何とか文芸部の騒動は沈静化した。でも、そのWcDのお前らの支払いは俺が持ったんだぞ!藍の依頼(強要が正しいかも)でなかったら文句を言いたかったほどだ。

 まあ、藍がため息混じりに黒沢さんを指名しなければ文芸部内で血で血を洗う抗争(?)が勃発する寸前の状況だったから、やむを得ないのかもしれない。俺も男を巡る女の争いの凄まじさを思い知らされたような気がした。彼氏と別れてまで参戦した四人の女の子、ゴメンナサイ!


 そんな話はさておき、夏休みが始まって最初の日曜日である7月最後の日曜日に快晴のモエレ沼公園(札幌市東区)で行われた高校生クイズキング選手権北海道予選では、俺たち2年A組のメンバーがいる6チーム(クイズ同好会、佐藤三姉妹、藍派会長・副会長、唯派会長・副会長、泰介・歩美ちゃん・村山さん、伊藤さん・堀江さん・平野さん)は第1ステージ〇×クイズだけは協力しあって突破しようという協定を結んで挑み、約束通り共闘して全チームが突破できたけど残念ながらそれ以外のトキコーチームは早々に全滅した。相沢先輩・藤本先輩・村山先輩も第1ステージ最終問題で間違えて姿を消した。第2ステージの三択問題では共闘しないという事もあり次々と脱落し、突破したのは俺たちと佐藤三姉妹だけだった。

 でも、準決勝で不幸にも俺たちクイズ同好会と佐藤三姉妹が同校同士で潰し合う形になったが俺たちが圧倒した事で佐藤三姉妹は脱落し、決勝は俺たちが日本海大学付属札幌高校の3年生男子チーム相手に完勝し2年連続で北海道代表となった。同一校の2年連続代表は道内では4例目だが同じメンバーでの代表は初だ。

 藍も唯も舞も、正々堂々と勝負して俺たちに完敗した事もあってか最後は清々すがすがしい顔をしていたのが印象的だった。



「おーい、たっくーん、まだなのー?」

「拓真君、時間が掛かり過ぎよー」

「ちょっと待ってくれよー。だいたい、いきなり言い出すって酷くない?」

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