第222話 不正をやりました
共通点?なんだそりゃあ?
ダーウィンは進化論で知られる19世紀のイギリス人、
しかも、ヴィクトリア女王といえば今のイギリス女王であるエリザベス2世の
カール5世はハプスブルク家の絶頂期に君臨し、「太陽の沈まない国」と称されたようにヨーロッパから新大陸、アジア(フィリピン)に至る世界帝国を築き上げた16世紀の人物だ。
時代も場所も違う7人の共通点と言われても・・・
♪ピンポーン♪
“おい、勘弁してくれ!これはトキコー教師陣が誰一人として答えられなかった校長先生の自信作なんだぞ!それを30秒もしないうちに分かったとでも言うのか!!”
「山口せんせー、分かる物は分かるんだから仕方ないだろ?」
そう呑気な口調で言ったのは篠原だ。俺と長田は納得顔で篠原を見てるけど、相沢先輩たちや藍たちは唖然とした表情で篠原を見ている。
“と、とにかく篠原、これで正解ならクイズ同好会の圧勝というか完勝というか、盛り上がりに欠ける結末になるんだが・・・”
「おれたちに場の空気を読めと言っても無駄だ。おれたちクイズ同好会がクイズで負けたら存在意義を失う。だからおれたちはクイズで負けない。どんな難問でも解いてみせるのがクイズ同好会の使命だ」
そう言ったかと思うと篠原はスケッチブックを頭上に掲げた。
『いとこ同士で結婚した』
“はー・・・クイズ同好会、ゆーしょー”
山口先生はぶっきらぼうに言うと俺と篠原、長田の3人は右手をグーにして小突きあった。そう、このやり方は俺たちが去年の本選で1回戦、2回戦、準々決勝を勝ち上がった時にやった勝利のポースだ。
『まったくー、名目上ではあるが顧問としては喜ぶべきかもしれないが、企画担当者としては超がつく程に面白くない結末になってしまったぞ』
「あー、どうもすみませーん」
『これがテレビ番組の制作スタッフだったら、編集作業をどうするかで本気で泣くぞお』
「そうかもしれないですねー。最後は盛り下がっちゃいましたからー」
『まあいいや。とにかく賞品の食券は月曜日に渡すから昼休みにでも取りに来てくれ』
「いいですよー」
それを言うと俺たちは初めてニコリとしたが、会場はあっけない終わり方にしらけムードになって、帰り始める奴がゾロゾロいた。
「おーい、篠原、拓真、それに長田」
そう言って藤本先輩が俺たちのところへ来て右手を差し出してきた。俺たちは一瞬だけ戸惑ったけど、やはり無視する訳にはいかず、篠原、俺、長田の順番で藤本先輩と握手をした。藤本先輩に続いて相沢先輩、村山先輩とも握手をして互いの健闘を称え合った。
「いやー、それにしても最後は圧巻の終わり方だった。さすがにこれだけ圧倒されると完敗を認めるしかないかないね」
それだけ言うと藤本先輩は珍しくクールな笑みではなく自然な笑みを見せた。
「しのはらー、お前を引き抜く事はしない。それは約束しましょう」
「わたしも約束するわ。『高校生クイズキング選手権』はあなたがた三人でいきなさい」
「あなた達なら全国制覇も夢じゃあないと思うわよ。むしろ3人でトキコーの名を知らしめてきなさい」
藤本先輩たちは笑顔で俺たちと話していて終始融和ムードだった。
でも・・・もう1つのテーブルは全然違った。
「おーい、佐藤藍さん、預かっていた物を返すよ」
そう言って教頭先生は藍のところへ来たけど、藍はさっきから立ったまま顔を伏せて何も喋ろうとはせず、唯と舞が話しかけても一言も喋ろうとしていない。
藍は教頭先生から話しかけられてハッとして顔を上げて教頭先生を見たが、その目は涙で一杯になっていた。でも、なかなか教頭先生から紙袋を受け取ろうとしなかった。
俺は藍が心配になって教頭先生の横へ行って、優しく藍に声を掛けた。
「藍・・・まさかとは思うけど・・・これは、このノートは『知識の女神』が残した物だよな」
「『知識の女神』?・・・拓真先輩、七不思議の4番目の?」
舞は俺に向かって話しかけたけど、俺は舞に視線だけを向けて首を縦に振った。
藍の目はまだ涙で一杯だったけど、一瞬だけ俺に冷徹な笑みを見せた。けど、それは一瞬だけで、いかにも弱弱しい女の子の目だった。
「そう、『知識の女神』が残したノート・・・と言いたいけど、違うわ」
「違う?どういう事だ?」
「教頭先生・・・大変申し訳ありません。不正をやりました」
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