第220話 結構難問なんだぞ
「あー、それでは決勝のルールを説明するぞ」
教頭先生がマイクを握って立ち上がると、小ホールは静まり返った。
「決勝は3ポイント先取の早押しクイズだ。だが、問題は超難問の書き問題だ。高校生クイズキング選手権の決勝レベルかそれ以上の難問を出題するから、その答えが分かった時点でスケッチブックに書き込んでボタンを押してくれ。ただし、間違えたらマイナスポイントとなり、その問題に再解答する事はできなくなるから特に誤字・脱字や小数点の位置取りには気を付けてくれよ。1回戦と違い次の問題への解答権はなくならない。制限時間は5分だが、この時間で解くのは結構厳しいと思うから、そのつもりでいてくれ。ここまでで何か質問はあるかな?」
教頭先生は決勝が始まる前に俺たち3チームに質問したが、どのチームからも質問はなかった。
「会場のみんなと3チームには同時に問題文を公開する。問題文は山口先生が読み上げるけど、公開してから5分以内に答えを書いてくれたまえ。5分経ってどのチームも正解がなかった場合は次の問題へ進むから、そのつもりでいてくれ」
そう言って教頭先生は着席し、俺たちの席の横には茶封筒を持った前川さんが立った。相沢先輩たちの横には武田先生が、藍たちの横には小島先生が立った。松岡先生と原田先生は大きな模造紙のような物を二人で持っているという事は、問題が書かれた紙を拡大した物なんだろうな。でも、俺はそんな悠長な事を考えているほど暇ではない。まずは1問目に集中だ。
“じゃあ、いくぞ。第1問。これは明治時代に公開された小説の一部分であるが、この小説の元となった小説の原題(タイトル)と原作者の2つを答えなさい”
俺たちは前川さんから茶封筒を受け取ると、それを一気に開封した。そこにはA4の紙で文書が書かれていた。
恵美子「お止しなさいよ、孝さんはまるで宛然男みたいね。」
孝代 「好さ。何故宜けないの?」
恵美子「そんな荒っぽい事して、女らしくも無い・・・私大嫌いよ!」
孝代 「大きなお世話だ、気取ってグニャグニャしているのは猶嫌だ、馬鹿々々し
い。」
大変な喧嘩となった。
「鳥は塒に睦まじく」と歌ひながら露子は可笑しい顔つきして仲裁人を気
取ったので二人は思はず吹出した。
菊枝 「真實に何方も悪いわ、もう子供らしい悪戯する年でも無いのに…少し気を
お付けなさいよ孝代さん・・・幼少い時と違って既う髪も結んでるし、年
頃の婦人だと云う事をお考えなさい・・・」
孝代 「私婦人だなんて大嫌ひ・・・髪を上げたのが婦人らしいなら既う結はな
い、はたちになる迄編んで下げてるから好いわ…」
とピンを抜き取って黄金色の房々した髪を振り乱した。
孝代 「私成長くなったと思ふと、もう嫌で嫌で堪らない、・・・私こどもの遊び
や何かが大好き、お嬢さんなんて呼ばれるのが残念で仕様がない・・・
ア、男子に生まれたかった。」
♪ピンポーン♪
俺は問題を読んでる最中だったが、もう押した奴がいる。押したのは・・・マジかよ!?長田だ。当然だが相沢先輩たちのチームも佐藤三姉妹も問題文を読むのをやめて俺たちの方を見ながら唖然とした表情をしている。
“おい!まさかと思うがもう分かったのか?冗談だろ?”
「山口先生、こんなの即答ですよ」
“ながたー、勘弁してくれよー。10秒で答えられたら問題作成者として赤っ恥同然じゃあないか!結構問題を作るのに難儀したんだからマジで勘弁してくれ!”
「そんな事を言われてもオレは困ります。答えを見せてもいいですか?」
“ちょっと待ってくれ。まだ松岡先生と原田先生が問題文を貼り終わってないんだぞ!”
「じゃあ、出してもよくなったら教えて下さい」
“あー、わーかったって!長田、見せろ!”
「はーい、これが答えでーす」
そう言いながらスケッチブックを長田は自分の頭上に掲げた。
『
『
“はー・・・正解”
「山口せんせー、もうちょっと歯応えのある問題を出してくださいよお。いわゆる『若草物語』を明治39年(1906年)に日本で初めて訳した時の物ですよね」
“うるさい!これでも結構難問なんだぞ。因みにどこで分かった?”
「あー、これ、オレは読んだ事ある。この小説のタイトルは『
“ったくー、長田の言うとおりだ。まさか明治時代の書物を知ってるとは思わなかったぞ!”
「オレに文学問題を出題したかったら、今日出版された本から出題してくださいねー」
作者注釈:
明治39年(1906年)日本で初めて『Little Women』の小説が日本語訳された時には『
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