第197話 ドッペルゲンガーとリアルステレオ

「うーん、お義父さんの最初のカードは魔術師マジシャンの正位置ね」

「はいはい、最初は魔術師マジシャンの正位置だな。よーし、OKだ」

「次は女帝エンプレスの・・・」


「お義姉さん、それにお義兄さんも紅茶が入りました」

「サンキュー」

「それにしても、絵里が二人いるみたいで何か怖いな」

「ある意味、ステレオ効果みたいでしょ?」

「それはそうだけど、絵里と藍ちゃんのリアルステレオはマジで怖いぞ」

「そんな事を言ったらウチと唯ちゃんは、それこそドッペルゲンガーよ」

「うわっ、忘れてた。そっちもマジ怖い!」


 藍と唯が最後に使っていたメイド服を返すのは明後日の登校した後だ。柳瀬先輩が藍と唯に「火曜日の朝に持ってきてくれれば持ち出してもいいよ」と好意で持ち出しをOKしてくれたから、俺の家でメイド占いとメイド喫茶をやっているのだ。しかも客は俺と父さん、母さん、姉貴、それに雄介さんで、唯が占いを、藍がウェイターをメイド姿でやっているのだ。父さんたちの部屋にあるパソコンに俺が占いソフトをインストールして、それをリビングに持ち込んで占いをやっているしリビングにビデオカメラをセットして撮影までしている。まさに我が家がメイド喫茶になってしまっているのだ。

 姉貴はこの話を聞いたらノリノリになって雄介さんを連れてわざわざ車を飛ばしてきたのだ。もちろん、我が家の駐車場には車を置くスペースがないから近所のスーパーの駐車場に車を止め、そこから歩いてきたのだ。

「それにしても藍ちゃん手作りのティラミスは結構いけるわよ」

「あー、お義姉さん、ありがとうございます」

「わたしもそう思うわよ」

「うわー、お義母さんまで言ってくれて私も嬉しいですー」

「将来はパティシエかしら?」

「うーん、それも悪くないかもね」

「何なら毎日買い物に行っちゃおうかしら?」

「そうしようかねえ」

「お義母さんもお義姉さんも止めてくださいよお、私はそこまで上手ではないですよ。それに決まった訳じゃあないですから」

「それもそうね。来年の事を言うだけで鬼が笑うのに、何年も先の事を言っても始まらないわよねー」

「そういう事ですよ。私だってトキコーを卒業した後の道筋をハッキリと決めてる訳じゃないですから」

「決まったらウチにも教えてね」

「はーい、分かりました」

「おーい、頼むから絵里が一人芝居してるみたいだから勘弁してくれー」

「あらー、じゃあ、こっちで喋りましょうか?💛」

「おい!それを使うのは封印したんじゃあないのか!?」

「だってー、一人芝居とか言われたらこっちを使うしかないでしょ💛」

「どっちも勘弁してくれよー」

とまあ、夕食を挟んで結構賑やかなひとときだった。

 雄介さんも姉貴と唯の『ドッペルゲンガー』の間に立って写真を撮ったり、姉貴と藍の『リアルステレオ』をビデオに収めたりと、なんだかんだ言って結構ノリノリで楽しんでたけど、正直、一番楽しんでいたのは父さんだった。藍と唯の二人のメイドが悪ノリして「あーん」で父さんにティラミスやクッキーを食べさせたから相当鼻の下を伸ばしてたのは事実だ。母さんもなんだかんだ言って結構楽しんでいた。


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