第160話 どっちがお前の・・・

“トントン”


 俺はベッドで横になりながら部屋にあるマンガを読んでたけど、誰かが俺の部屋をノックした。多分藍か唯のどちらかだと思うから、俺はいつものように

「はーい、誰ですかあ?」

そう答えたけど、返事がある訳ではなく、いきなりドアが開いた。

「おーっす、たくまー」

入ってきたのは姉貴だ。俺はまさか姉貴だとは思ってなかったから、当然ビックリした。

「ちょ、ちょっとー。返事くらいしてくれよお」

「別にいいだろ?それにここは元々ウチの部屋だ」

そう抗議したけど、姉貴には無駄だ。こういう所は昔から変わってない。

「何か用でもあるのか?」

「当然だよ。用があるからここに来た」

そう言うと姉貴はドアを閉めた。

 用があるって言ってたけど、一体、何の用だ?それに、わざわざ俺と1対1で話す事って何だ?

 姉貴は俺の机の椅子に座ると、俺を覗き込むような形でニコニコしながら


「たくまー、どっちがお前の彼女だ?」

「!!!!!」


 まさか、いきなり核心を突いてくるとは思ってなかったから俺は一瞬焦った。だが、それを顔に出すとマズイと思って、俺はひたすら平静を装った。

「あねきー、それはないだろ?藍や唯に失礼だろ?」

「ホントにそう思ってるのかー、あー、ひょっとして二股かあ?だったら姉としてビシッと指導してやらないといけないけどなあ」

「勘弁してくれよー。姉貴の勝手な想像だろ?」

「いんや、証拠はある!」

 この瞬間、姉貴は超がつく程の真面目な顔になったから俺は嫌な予感がした。俺の枕の下付近のベッドの下には未開封の『あれ』が隠してある。もしかしたら、姉貴はそれに気づいて・・・

「あー、お前、顔色が変わったぞ!」

「そ、そんな事はない、そんな事はない。だ、だいたい、何を証拠に」

「お前は嘘をつく時、必ず左側の上唇が少しだけヒクヒクする。今もそうなってるからなあ」

「・・・・・」

「まあ、ウチは父さんと母さんに言うつもりは無いから安心しろ」

「はーーーー・・・ホントだろうな」

「ウチを信用しろ。それは拓真が一番分かってるはずだ」

「・・・・・」

 たしかに姉貴は嘘はつかない。それに、秘密は絶対に守る主義だ。不正を見逃す事はないけど、他人の秘密をバラすような事は絶対にしない人だ。

「まあ、まだ手を出してない可能性もあるけど、あれだけの可愛い子だから、どっちかに惚れても不思議ではないからなあ。もしかしたらどっちにしようか迷ってるかもしれないなあ。何しろあんたは昔からシスコンだからねえ」

「勘弁しれくれよー。どうして俺がシスコンなんだよー」

「だってー、あんたさあ、幼稚園の頃には『お姉ちゃんと結婚する』って本気で言ってて幼稚園の先生だけでなく父さんや母さんまで笑ってたくらいだぞー」

「うわっ、マジでそんな事まで覚えていたのかよ!?」

「それで、最初の質問だ。どっちがお前の彼女だ?」

「そ、それは・・・」

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