第150話 俺が最も苦手とする存在
なんだかんだで今日は金曜日、いよいよ明日・明後日はトキコー祭だ。今日の授業は午前のみで午後からはトキコー祭の準備作業をやる。既に大半の準備は済んでるが、A組をイベント会場として作り変える作業や本番を想定したリハーサルは今日の午後に行われる。
今朝は珍しく五人揃っての朝食となった・・・が、何の前触れもなく父さんが
「拓真、
と言った。俺はそんな話は全然聞かされてなかったから、まさに『寝耳に水』である。
「えー!姉貴が来るのかあ!?」
「たくまー、その態度はないだろ?」
「・・・ごめんなさい」
「まあ、絵里も藍ちゃんや唯ちゃんとは面と向かって挨拶をした訳じゃあないから、それも兼ねてうちに来るようだぞ」
「藍ちゃんも唯ちゃんも直接会って話をした事がないよね」
「私、まだお義姉さんと話をした事ないですよ」
「唯もだよ」
「変に気負う事はないぞ。普段通りでいてくれればそれで問題ない。絵里だって姉さん
「そうよ。どっちかといえば無頓着だから、全然そういう所を気にしないから大丈夫よ」
「はあ、そうですか・・・」
「本当に大丈夫ですか?」
「・・・・・」
「あ、そうそう、トキコー祭にも顔を出すそうよ」
「マジかよ!?」
「教頭先生と榎本先生にも挨拶してくるって言ってたわよー」
石田絵里、旧姓佐藤、つまり俺の姉貴だ。俺がトキコーに入学した直後に結婚して今は札幌の隣の江別市に住んでいる。雄介さん、つまり旦那さんが出張で東京へ行ってて明日の夕方に帰ってくるので、それを出迎えるついでに今夜は実家である俺の家で泊まり、トキコー祭に顔を出した後に新千歳空港へ行って、そのまま夕食を札幌市内で食べた後に帰宅するらしい。まあ、暇潰しの為に実家に1泊するという表現が正しいかもしれない。
俺が最も苦手とする存在、それが姉貴だ。
姉貴の事だから俺の昔話とかを藍や唯の前で平気で暴露して帰っていくに違いない。俺は藍や唯を絶対に姉貴に合わせたくなかったのだが、既に父さんと母さんが知っている状況では反論する余地がない。とにかく嵐が早く去ってくれることを祈るのみだ。
だが、それ以外にもマジで姉貴を2人に合わせたくない理由がある・・・。
姉貴はトキコーのOGだ。教頭先生は姉貴が3年生の時の、榎本先生は1年生と2年生の時の担任だ。つまり、俺と姉貴は姉弟で榎本先生のお世話になった事になるのだ。教頭先生も榎本先生も姉貴の事を覚えていて、入学早々、俺に「おー、君が佐藤絵里の弟の拓真かあ」と話し掛けてきたくらいだ。
今はすっかり丸くなった教頭先生だが、母さんの話では当時は『ブシドー
面倒見のいい榎本先生はともかく、なぜ教頭先生が覚えているのか・・・その理由を二人が知ったら卒倒するぞ・・・。
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