第140話 あーーーーーーーー!!!!!!!!
その後、俺と藍は無言のままテレビを見ていた。やがて母さんが、続いて父さんが起きてきたが、やはり唯は起きてこなかった。
母さんは唯がいない事で「おやっ?」と思ったらしく、藍に「唯ちゃんはコンビニにでも行ったのかな?」と聞いてきたが、藍が「まだ寝てますよ」と答えたら「珍しいわね。夜更かしでもしたのかしら?」と言ってキッチンに入った。父さんは特に何も言わず、ノンビリと新聞を読んでいる。
さすがに俺も心配になってきたが、母さんが朝食の支度を始め、目玉焼きを作り始めた頃に唯が2階から降りてきた。さすがに泣いてはいなかったが、いつものような威勢の良さはない。どちらかと言えば無理して普段通りの自分を演じているという印象を受けた。それは藍も感じたようで一瞬だが顔色を変えたが、その後は何も気付かなかったかのように振舞っている。
「あー、おはようございますー」
「おはよう。珍しいわね、唯ちゃんが最後に起きてくるなんて」
「いやー、昨夜はついついマンガを読み始めたら止まらなくなってしまい、明るくなるまで読み続けちゃいましたー」
「まあ、たまにはいいと思うけど、夜更かしはお肌に良くないわよー」
「そうですね、お義母さんの言う通りですから気を付けまーす」
そう母さんと会話した後に唯はトイレの方へ向かったが、何となくだが後ろ姿が寂しげに見えるのは俺だけだろうか・・・
「あーーーーーーーー!!!!!!!!」
突然、トイレに入った唯が家中に響く大声を上げたから、俺だけでなく藍や母さん、父さんまでもがびっくりしてトイレの方を見た。しかも藍は立ち上がって「何かあったのか?」と言わんばかりの顔をしてトイレの方へ走っていった。俺も藍の後を追う形でトイレの方に行った。
「唯さん!何かあったの?返事して頂戴!」
藍がトイレのドアを激しく叩きながら大声を上げたら、唯が顔だけ出して
「い、いや、そのー・・・すみません、ちょっと寝ぼけてしまいまして・・・」
それだけ言うと唯は再びトイレのドアを閉めてしまった。
藍はため息をついたかと思うと「あんまり人騒がせな事をしないで下さい」とだけ言ってリビングに戻っていった。俺は唯に声を掛けようかと思ったが、結局は藍の後を追う形でリビングに戻っていった。唯がトイレから出てきたのは、それから2~3分経ってからだ。
あれっ?
俺は唯の顔を見た時に逆に困惑してしまった。
さっき、唯はトイレに行く時は悲壮感漂う雰囲気があったが、今の唯からは悲壮感は感じられず、むしろ戸惑っているような顔をしている。それに、何となくだが焦点があってない。しかも俺や藍を意図的に避けているのは明白だ。
という事は・・・絶対に何かあったとしか思えない。だが、何があったのかは分からない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます