第66話 スリーサイズはいくつですか?
これを聞いた藍は藤本先輩同様、絶対にやると言い出した。他の実行委員のメンバーも、男子も女子も関係なく「いいぞー」「俺は賛成だー」「私も四人のメイド服を見たーい」など、一斉に「やれー!」の大合唱が起きた。俺も藍と唯のメイド姿を見たいから、当然の如く賛成に回った。
ただ、黒田先生が「ちょっと待ってくれ」と言って大合唱を制して発言した。
「たしかに先生個人としては面白い企画だから賛成に回りたいのだが、予備費を一部の部や同好会に回す事は規則違反に当たるぞ。だから、アニ研のトキコー祭予算と今年度活動費、昨年からの繰り越し金で賄うというなら問題ないけど、予備費を使って揃えるのは無理だ。あと、藤本さんと佐藤藍さんは風紀委員として巡回する時、それと全員『ミス・トキコー』にエントリーするなら、その時も制服に着替えてもらう事になるぞ。他の生徒会行事やクラスの行事、同好会の行事はこのコスプレでも構わないけど、これだけは言っておく」
この発言を聞いたら、ますます実行委員の声がヒートアップした。藤本先輩も藍も、さらに宇津井先輩までもが他の実行委員に同調して、相沢先輩と唯にやれと言い出す始末だ。
相沢先輩と唯は二人で顔を見合わせ、「はーーー」と長いため息をついた後
「わかったわよー。言い出したのは私だからやりますよ」
「唯もやりますよ」
と、渋々ながら言ったから、みんな拍手喝采となった。
さて問題は、本当に四人分のメイド服を揃えられるかどうかだ。安孫子先輩を始め、男子の何人かはスマホを使って検索を始めた。当然、藤本先輩も自分のスマホで検索している。丁度ここで本岡先輩が会議室に戻ってきた。どうやら直接田中先輩の所へ行って企画書を受け取ってきたようだ。本岡先輩は唯に軽音楽同好会の企画書を渡した後、宇津井先輩から状況を聞いて驚いていたが、内容そのものには反対してないようで、むしろ乗り気だ。
「・・・おい、トキコー祭予算だけでは絶対に無理だぞ」
「今年度活動費の残りはいくらだ?」
などと、みんな小声で話し合っている。
俺もスマホを見ながら2年B組の実行委員と話をしているが、活動費の残り金額次第ではギリギリやれそうな気がする。
だが、ここで俺はとある見落としがある事に気付いた。安孫子先輩もそれに気付いたらしく、手を上げてから発言した。
「あのー・・・失礼ですが、藤本さんと佐藤藍さんのスリーサイズはいくつですか?」
「「はあ?」」
「このメイド服、S、M、Lの3種類しかなくて、Lサイズはバストの目安が90センチ、身長の目安が165センチになっているんですよ。しかも、それ以上のサイズを希望の場合は特別料金が掛かるって書いてあります・・・特に藤本さんは絶対に特別料金になると思いますけど、どうなんですか?」
結局、女子四人が会議室の隅に集まって色々と協議を始めた。完全に女子トークになっているけど、特に藤本先輩は顔を真っ赤にしながら四人でスマホ片手に話し込んでいる。でも、それを見た限りでは険悪な雰囲気にはなっていない。むしろ会話を楽しんでいるようにも見える。
やがて四人共に席に戻り、全員が座った所で相沢先輩が発言した。
「・・・あー、大変申し訳ないんだけど、佐藤藍さんは大丈夫ですが、真姫はバストだけでなく身長も相まって、特別料金どころか、ほとんど『御相談ください』のレベルだから、四人分を揃えるのはほぼ無理です。今ここで真姫のスリーサイズと身長を言う訳にはいかないので、安孫子君、実行委員会が終わったら、おおよそで構わないので割り増し金額がいくらになるかを問い合わせてみてください。金額如何ではアニ研の展示にも影響が出ますので」
「あー、わかりましたー。まあ、いくら何でも2倍になるとは思えないけど後で必ずメールしておきますよー」
そう言ってから安孫子先輩は一度スマホをしまった。
それを見た藤本先輩が発言を続けた。
「もし四人分を揃えられなかった場合、三人しか着用できない。その場合は生徒会三役のみ着用とし、佐藤藍は、私が風紀委員として巡回している間のみ着用してもらうという事になるが実行委員のみんなはそれでいいか?恐らく、土日共に1回ずつ、多分午前中の一番最初だけになる。だから、私と佐藤藍が同時に着用する事だけは絶対にありえないから、それでもいいならアニ研の方で準備を進めてくれ」
俺は藍の方をチラッと見たが、藍は「仕方ないわよね」というサバサバした顔をしていた。他の実行委員のみんなも仕方無いという顔をしていて、やがて「意義なーし」「私もそれでいいわ」「右に同じ」「了解した」などという事があがり、最終的に黒田先生も了承したので、この件はアニ研に任せる事で決着した。軽音楽同好会を含めた他の部や同好会の企画も同様に了承され、また、各クラスのイベント、講堂や体育館の使用予定も提案通り了承され、会議はスムーズに終わった。
今日の実行委員会が終わった後、唯は飛び切りの笑顔を見せた。昨日の実行委員会が終わった後とはまるで別人のようだ。懸案だった事項が無事解決して、心底ホッとしたのだろうな。俺も唯のこの笑顔が見る事ができて、実行委員をやって良かったなと思った。
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