160話
あれから、俺は順調に勝ち進み決勝戦まで来ていた。
対戦相手はブラハリーである。元々、才能があった奴なので納得の結果ではある。
「アルバ君、いよいよ決勝戦だね」
俺が控室で待機しているとフォレが話しかけてくる。
結局、フラム達と意気投合したフォレは俺のハーレムに入った(らしい)。
ちなみに俺のハーレムメンバーは、フラム、アルディ、フォレとの事だ。
まったく、いつの間に作ったんだか。本人の知らない間に本人の為のハーレムが出来てるなんてどうなんだろうか。
……まぁ、正直に言うとモテない前世を経験してるからモテない男の夢であるハーレムが嬉しくないかと言われれば嬉しかったりする。
そんな事を言って、またエロバ扱いされても困るから言わないが。
「対戦相手は今流行りのアイドル冒険者らしいけど、強さ的にはどうなの? 決勝まで上がってくるって事は強いんだろうけど」
「今のブラハリーの強さは、見た限りだと昔より強くなって感じはするね」
実際、学園に居た時の武闘大会では精霊と魔力共鳴をして初めて黒い炎の魔法が使えていたが、今のブラハリーは共鳴無しでも黒い炎の魔法が使っている。
それだけでも、昔より強いというのが分かるというものだ。
「まぁでも、アルバ君の方が強いんでしょ? 昔、二回も勝ったことあるみたいだし。それに、なんてったってこの街の英雄だもんね」
「いやー、それはどうかなー……」
実際、あの時とは状況が違う。
今まではアルディが居たが、今回は居ないのだ。ブラハリーには精霊が居るので、実質一対二である。
魔人モードになれば、勝敗は分からないが今回は出来れば使いたくない。
なるべく、俺の実力でブラハリーに勝ちたい。
これが他の奴なら遠慮なく魔人モードでぶちのめすのだが、相手がブラハリーならば違ってくる。
最初に本格的に戦ったのがブラハリーというのもあるが、奴とは何かと因縁がある。
向こうがどう思ってるかは分からないが、俺としてはブラハリーはライバルだと思っている。
そんなライバルと思っている相手に対し、半ばズルみたいな事をして勝ちたくはない。
まあ、エレメアが居ればそんな気にせずにぶちかませとか言われそうだけどな。
そうそう、フラムやアルディも無事に決勝まで進んだそうだ。
まさか三人とも決勝に進めると思っていなかったが、これもエレメア達による修行の賜物だろう。
「いよいよ決勝戦を開始いたします! アルバ選手、ブラハリー選手、入場ください!」
フォレと会話をしていると、そんなアナウンスが聞こえてくる。
「それじゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい。記事になるんだからしっかり優勝してきてね」
中々無茶を仰る
だがまぁ……それくらいの意気込みで行かないとブラハリーには勝てないだろう。
「とりあえず、やれるだけやってみるよ」
そう答えると、俺は舞台へと向かうのだった。
◆
「皆様、お待たせいたしました! いよいよ決勝の開始です。司会は、白虎族のベンガルが担当します!」
そう名乗るのは、肩まで伸ばした真っ白な髪に黄色い瞳が印象的なロリっ子だった。
胸の方は、フォレとタメが張れるくらい無い。まあ、見た目を考えれば当たり前なのだが。
「キャー! ブラハリー様ー!」
ブラハリーと対峙していると、観客席から黄色い声援が聞こえてくる。
久しぶりに会った時も女性に囲まれていたし、ブラハリーは普通にイケメンだから納得といえば納得だ。
納得なのだが……、
「L・O・V・E! ア・ル・バー!」
対して、俺の方では野太い声援が聞こえてくる。
中には女性の声も聞こえてこない事も無いが、男の比率が圧倒的に多い。
しかも、なにやら若干肉感が凄いオタクちっくなある意味なじみ深い方々が多い気がする。
「くくく、モテモテだな。アルバ?」
俺が、野太い声援に辟易しているとブラハリーが肩を震わせながら話しかけてくる。
「ははは、そちらこそ女性陣に人気で羨ましいですよ」
くそが! ちょっとばかり女の子にモテモテだからって調子に乗りやがって。
俺だって、好きで男にモテてるわけじゃないんだぞ!
「ま。不本意だが、これでも一応アイドルなんでな。これくらいは当然だ。むしろ、アイドルでもないのにそれだけ人気のあるお前が羨ましいよ。仮にも、この街の英雄だけあるな」
煽ってるのか、褒めてるのか微妙な発言しやがって。
反応に困るじゃねーか。
「――――それでは、決勝戦……開始ー!」
いつの間にか俺達の紹介が終わっていたのか、ベンガルが試合開始の合図をする。
大武闘大会の決勝戦が、今始まるのだった。
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