第31話
「磁力って土属性と風属性どっちなんですかね?」
今日も迷宮攻略が終わり校舎に戻る道中で俺はそんな事をぽつりと言う。
風より雷じゃね?とかツッコミを入れられそうなので念の為言っておくが、この世界では風と雷は同じ属性として扱われている為分かりやすく言っている。
「どうしたの急に?」
ヤツフサは、俺の言葉に不思議そうな顔をしながらこちらを見てくる。
「いえね、そういえば磁力って属性で言えばどっちに分類されるか気になりまして。どっちに分類かで使える魔法が変わりますし」
よくバトル漫画とかでも磁力は、それなりに強キャラとして扱われることが多い。雷の方が性質的には近いかもしれないが磁石とかもあるから土属性とも言えるし何とも微妙なところだ。
「そういえばそうですわね……私は炎属性なんでそもそも気にしたことが無かったですわ。アルディさん、分かりますか?」
フラムも顎に指を当てながら考え込み、大地の精霊であるアルディに問いかける。
「うーん、土属性だと思うよ?多分、私も操ろうと思えば操れるし……ただ、アルバの知識が私にも入ってくるから風属性の人も操れるんじゃないかと思う。ただ、私は他の属性については良く知らないから確証は無いけど」
フラムの問いにアルディはそう答える。なるほど、土属性もやっぱり扱えるのか、なら魔法の幅が広がりそうだ。
もし、雷も関わってくるならヤツフサには是非覚えさせたい魔法がある。
「先生に聞いた方が早いかもねぇ」
「あ、その手がありましたね」
ヤツフサの言葉に俺は、ある事を思い出すと1つの鈴を取り出す。
「それはなんですの?」
「まあ、見てれば分かりますよ。驚きますから」
フラムの問いに俺はニヤリと笑い、チリンと鈴を軽く鳴らす。
「呼んだかの?」
「「うわあ!?」」
俺達のすぐそばに現れた学園長にフラムとヤツフサは揃って驚く。
まあ、いきなり現れたら普通に驚くわな。俺も最初びびったもん。
この鈴は、学園長を呼ぶためのマジックアイテムみたいなものだ。本人曰く気に入った生徒に渡してるらしい。
俺も、決闘の件で気に入られて以来ちょくちょく魔法の授業に乱入してくる学園長に渡されたのだ。
しかもこれ、何が凄いって鳴らしてからノータイムで現れんだぜ。同時に鳴らされたらどうなるんだと気にならなくもないが、それよりもまじで仕事しなくて大丈夫なのかの方が気になったりする。
とりあえず、俺は驚いてる二人に事情を説明した後、学園長に磁力について尋ねてみる。
なんだかんだで学園長の話は、ためになるから実は何度か呼んでいる。アルディが学園長を気に入ってるのもあるが俺も結構こういう権力にこだわらないタイプというのは好きだ。
「ふむ……話は分かった。結論から言うと土属性と風属性……細かく言えば雷属性、この2つの属性持ちが扱うことが出来る。どちらか片方さえ持っていれば扱えるのう」
なるほど、この世界ではそういう風になっているのか。磁力が使えるとなれば魔法研究も捗ると言うものだ。磁力は、この世界では特に有効だろう。
理由としては、磁場の影響を受けるのは鉄だけであると思われがちだが、強力な磁場の中では、様々な物質が影響を受けるのだ。
なので、そういう魔法を開発もしくは覚えれば相手をなんなく無効化できると言うわけだ。
「という事は、俺も使えるんですか?」
学園長の話を聞いてヤツフサは、興味深そうに尋ねる。
「君は確かワーウルフの……」
「あ、ヤツフサです。アルバとは親友です。一応風属性……の雷が得意です」
「わ、私も……し、親友ですわ!……ですわよね?」
ヤツフサの親友と言う言葉に反応したフラムが負けじと叫ぶが不安になったのか、こちらを見ながら尋ねてくるので俺は苦笑しながら肯定してやる。
するとフラムは、小さくガッツポーズをしていた。俺に親友認定されたのがそんな嬉しいのか。
前世では男友達は結構いたが、女友達はいなかったのでフラムの様な可愛い女の子に嬉しがられると俺も嬉しくなってしまう。
「ふぉふぉふぉ、アルバ君は素敵な友達が居るのう」
「はい、自慢の親友たちです」
学園長が愉快そうに笑いながら髭を撫でつつ俺に話しかけて来たので、俺は胸を張ってそう答えた。
本当にこの二人は俺にはもったいないくらい自慢の親友だ。
「人の絆というのは何にも代え難い宝じゃ。大切にするんじゃぞ?……と、ヤツフサ君の質問にも答えんとな。もちろん、君にも使えるぞ。使い方次第では強力な武器になるからしっかりと勉強するんじゃぞ?」
「はい!」
そこまで話すと、学園長は仕事があるからとその場を去って行った。
「それにしても驚いたよ。まさかアルバが学園長先生と仲が良かったなんて」
学園長が去った後、ヤツフサがそんな事を言ってくる。
「私も驚きましたわ」
「学園長先生は、父様の時代にいらっしゃったので、そっちの関係でもお話して仲良くなったんですよ。先生は土属性だからと馬鹿にしない良い先生ですよ」
そんな会話をしながら俺達は帰路へと着いたのだった。
次の日、俺達は迷宮攻略を休み訓練所へと来ていた。
迷宮攻略の時間は、基本自由で素直に迷宮を攻略するもよし、魔法や戦闘訓練をしてパーティの地力を上げるもよしと生徒の自主性に任されている。
「今日は攻略休みたいって言ってたけど何か訓練でもやりたいの?」
フラムとヤツフサには特に理由を言わずに一緒に来てもらったので二人は不思議そうに首を傾げている。
「いえね、昨日の話でちょっと僕が考えたヤツフサさん用の魔法が使えるかどうかの確認をしたかったんです」
「俺の魔法?それって磁力関係の?」
ヤツフサの言葉に俺は頷く。磁力、雷(電気)で俺は1つ思いついたのがあるのだ。
本来は人体でやるものではないのだが、ヤツフサは雷動と呼ばれる雷を体に通して動く高速移動があるからやってみようと思ったのだ。
「そうですね。それで、1つ聞きたいんですがヤツフサさんって自身の雷を体内に大量に流した時ってダメージを喰らいますか?」
「ううん、喰らわないよ。自分で生み出した雷ならまずダメージは無いね。多分、炎とかも同じじゃないのかな?」
「そうですわね。私はやったことありませんが、クラスには自分の手に炎を宿して殴ったりする方もいますよ」
なにそれカッコいい。実は海賊のトップを目指す少年の兄とかそういうんじゃないんだろうな。
まあ、そんな阿保な考えは置いておいて、自分の属性ならダメージを喰らわないと言うのなら、やはり実現できるかもしれない。
「それでですね。ヤツフサさんに試してもらいたいと言うのは
「「
「ああ、学園と……」
「そこまでだアルディ。その名称自体は実在するけど流れ的にアウトだ」
ここまで大人しく話を聞いていたアルディが唐突に危険な発言をしようとしたので俺はそれを制する。
地球に居た頃、とある小説で有名になった技だが、簡単に言うと、2本の電気を通すレールで同じく電気を通す弾を挟んで電気流して発射するって事だ。
速度は21世紀初頭で5mのレールガンで最大速度が秒速8km程度出るとされている。拳銃が秒速230m ~ 680mなので、単純に10倍以上である。これを見るとレールガンの出鱈目さは分かると思う。
んで、これをヤツフサにどう再現してもらうかというと、2本のレールを両腕に代替し、間に弾を挟み発射してもらうと言うものだ。
が、単純に腕で挟んでしまうと弾の発射の際の摩擦でヤツフサの腕が偉い事になってしまう。なのでファンタジーっぽさを利用し腕の間で電気を流し弾を空中で固定させ発射させると言うアレンジを加える。
もちろん、上手く行くかどうかは分からない。
あくまでこれは、出来たら面白い程度のアイディアなので失敗しても特に構わない。
ヤツフサは詠唱無しで雷動を扱っていることから発電自体は詠唱を必要としないはずなので、これはかなり使えるはずだ。
まあ、間違いなく人に向けて撃てないがそもそも魔物相手なので問題ない。
俺は、そんな内容を三人に噛み砕いて説明する。
「な、なんだか凄そうだね」
「でも、覚えたら間違いなく強そうですわ。それで、弾はどうしますの?」
「電気を通す金属が好ましいので手に入れやすくて安価な物がいいですね。銅や鉄……あとは、高温だと溶けてしまいますが鉛辺りになりますかね。高価で良いなら、もっと電気を通しやすい銀もありますけど、
「それなら、不要な鉄くずとかが無いか先生に聞いてみませんか?練習用にいくつか必要でしょうし」
「そうだね、それじゃ手分けして探して来よう!」
ヤツフサも、俺の説明を聞いてワクワクしてきたのかブンブンと尻尾を振りながら提案してくる。
手分けした方が効率も良いので俺はそれを了承する。
まあ、鉄だから量が多くなれば重くなると思うが、そこは子供特権をフルに活用させてもらい先生に手伝ってもらう事にしよう。
そんなこんなで、今訓練場には壊れて使わなくなった鉄製の装備の山が転がっていた。
「結構、集まったねー。それで、これってこのまま弾として使うの?」
「それもいいですが、やはり挟みやすい形にしたほうがいいでしょうね、少し待っててください。アルディ」
俺は、あらかじめアルディに指示していたことをお願いし俺もしゃがみこんで装備品をあさり始める。
金属も土属性に含まれるため、魔力を込めて硬度を変えることが出来る。硬くすることも出来れば柔らかくすることも出来るのだ。
つまり、魔力の操作さえできれば鉄製の武器も子供の力で難なくちぎれるのだ。
これ、知らない人が見れば怪力な子供だよな。
ちなみに、エストレア先生曰く金属に限らず土に関連するものならば、その物質に流れる魔力の流れが分かれば形を変えたりも出来るとのこと。
ちなみに、訓練した覚えもないのになぜか魔力の流れとやらが分かったので特に苦も無く出来るようになっていた。
俺の籠手も傷がついたら魔力操作して修復とかなりお手軽である。
流石に形を変えるのは、元の形に戻す自信が無いのでやらないが。
そんなこんなで、鉄を良い感じの大きさにちぎって砲丸の様な形にした弾丸を並べていく。
「これを腕に挟んで、左右の腕に流す電力の量を変えてください」
「えーっと……こうかな……」
ヤツフサは、四苦八苦しながらも両腕に流す電力の量を変えてみせる。その後も俺なりのやり方を説明し、訓練用の木人形に向かって
「それじゃ、撃ってみてください。発動するかどうか分からないので特に気負わなくていいですから」
「わ、わかったよ」
ヤツフサは緊張しながらも人形に向かい両腕の間に電磁波を発生させ弾を設置して突き出す。
そして、ヤツフサの体が電気……というか雷を纏い始め、一瞬スパークが走ったかと思えば轟音と共に人形が弾け飛び、結界に熱で溶けたのかかなり小さくなった弾丸が食い込んでいた。
「け、結界に弾丸が食い込んでますわ……」
この学園の結界は、かなり強固でよっぽどの事が無い限り壊れる事は無いと言う。
実際、壊れてこそないが結界に食い込んでその周辺にヒビが入っていると言うのはかなりやばい。
発射した本人はというと、両腕を前に突き出したまま茫然としていた。特に怪我はないようだった。
「アルバ……これ、凄いね……」
我に返ったヤツフサがこちらを見てそんな事を言う。
「僕も正直、ここまでの威力だとは思ってませんでした」
「でも、これをマスターすれば大幅な戦力アップになりますわ」
「確かに……うん!俺、これマスターするよ!アルバ!ありがとう!」
ヤツフサは笑顔で礼を言うと先程の反省点などについて話し合いながら練習を始めた。
その日、訓練場から謎の轟音が何度も響き渡り話を聞きつけた教師が向かった所、ヒビだらけになった結界といくつも空いたクレーターの傍に2名の男子生徒と1名の女子生徒がおり、この3名が原因でしこたま怒られたそうだ。
……マッタク、ダレナンダロウネ
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