第24話 前 舌
遠くに人影いくつ見えた。でも、こんなところに人がいるはずがない。あれは、多分、例の蛭。みんなから聞いた通りの外見。白目まで真っ黒くてすごく不気味。
「皆、気を引き締めよう!」
皆は戦闘態勢に入った。カイル兄さんは前線に出って、アシュリーさんは後ろで色んな強化魔法をかけてる。メイさんはメアリーさんが水晶の陣の範囲に入っているかを意識しつつ蛭を牽制してる。
え? よくよく考えると、どうしてカイル兄さんは前線にでるの? だって、武器が効かないんでしょ…
と思いきや、カイル兄さんは群と距離を離れた蛭を狙って、双剣をハサミにして蛭を持ち上げ、腰から真っ二つに切断しようとしてる。でも、危ない! そんなことしたら反撃されて殺されでしまう! ほら、目からピンクのが…。矢で目を狙うか? ダメ、間に合わない!
「カイル兄さん!」
舌がカイル兄さんに届く前に虹色の光の壁が舌を防いだ。あれが、女神の盾…
私も女神の盾を使って自分の価値を証明しないと!
「女神の盾」
「女神の…」
先越された…でも、よくよく考えるてみると私が女神の盾をかけたところで、カイル兄さんはアシュリーにかけられたと勘違いするのが落ち…はぁ、私は何をすれば…
カイル兄さんは蛭を両断した。これでようやく1匹か。蛭の動きが遅いから、群れから離れた蛭を狙えば包囲されずに戦えるけど。残り8体か…
なんとか分散する方法はないのか? いや、集めているからかえってチャンスなんじゃない? メアリーさん! あっ、すでに詠唱してる。
カイル兄さんも剣をハサミから双剣に戻し、メアリーさんの詠唱が終わるまでメイさんと一緒に蛭を牽制する作戦なんだね。
結局私、見せ場なかった…
「どいて! アシッドウェーブ!」
カイル兄さん達は後ろに下がって、蛭達が被った人の皮は次々と溶けていく。女の子としてはこの魔法だけは当てられたくない。
人の皮は全部溶かしたけど2匹しか倒していなかった。でも、人の皮を溶かしたのは大きい。口の位置を把握できるから。
案の定、カイル兄さんとメイさんはまた前線に出た。私は矢の飛ぶ速度を上げるように、鏃の形を変えるように弓を調整し、反応速度を上げる薬を飲んだ。
カイル兄さんの女神の盾を発動させないように、蛭の口に注意し、舌を出そうとするとすぐに口の中に矢を打ち込む。
うまくいったみたい。6匹の蛭の舌を全部潰し、無力化させて、殲滅戦にした。
「ケイリ、出来した!」
「ありがとう」
修行は無駄ではなかった。一年前の私は絶対にこんなことできなかった。
「油断するな、新手だ!」
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