stage 22 オナニー機関紙 -Naoki side-
本部道場を建設する候補地の選定は困難を極めた。
それもそのはず、未だオウムの悪印象が残る日本では、得体の知れない密教系団体になど土地を貸したくないのが大半の地主の心情であろう。
そんな中、救いの手を差し伸べてくれたのはカズさんだった。
「田舎でよければ土地を借りられそうな知り合いがいるんだけどなぁ・・・」
「それはありがたいっす。今いる世田谷の仮本部は近隣住民からの苦情で立ち退きを迫られてるんすよ。教団としては都心から離れた場所の方が、かえって好都合っす」
「大聖堂や神社仏閣はOKでチベット密教の道場はNGって根拠もよくわかんねーよな・・・。神話の世界なんてカルトそのものだろ?」
「ホントっすよ。でも、密教の驚くべきところは、そんな他宗教の神様たちでさえ、自身の胎内に組み込んじゃう性質なんすよ」
「おっ。なかなか成長したみたいだな。アッハハハハ。まぁそれより何より俺が一番驚いたのは、ナオキから宗教団体を設立するって話を聞かされた時だけどね。まさかあの娘を担ぎ上げるとは・・・。アーチャリーがテレビカメラの前で涙する場面は、思わずこっちまでホロリと来ちゃったよ。主要各紙が1面トップで扱ったもんなぁ」
「"宗教はイケるかも"ってヒントをくれたのはアニキっすよ。覚えてますか?ジンのアジトに乗り込む前に一緒にマントラを唱えたじゃないっすか?不思議なほど無心になれたんです。死ぬも生きるも大した問題じゃないって・・・。刹那的とかヤケクソとは別次元の心境なんすよね。恐怖どころか多幸感すら込み上げてきましたから」
「デンジャラスな夜だったよな・・・。今となっちゃ、あの親玉とナオキが兄弟分だもんよぉ」
「あいつだって付き合ってみりゃ意外とカワイイとこあるんすよ・・・」
「カワイイか・・・」
「ところでカズさん、先日の話はちゃんと進んでます?」
「先日の話」とは、かねてから頼んでおいたシャンバラ国のWEB機関誌発行の件だ。
「ナオキのオファーなら断る理由なんてないんだけどさ。一つだけ条件をつけさせてもらう」
「・・・・・・」
「俺はシャンバラ国だけを過剰に持ち上げる"オナニー機関誌"を作るつもりはない。良い面も悪い面も平等に記事にさせてもらうが、それでいいか?」
「望むところっす!」
「りょうかい。そんならまた連絡する。実は教団に土地を提供してくれそうな人物が住んでる場所は俺の故郷でもあるんだ」
「あっ!ひょっとすると・・・」
「ああ。新鮮な馬刺しをツマミに甲州ワインで乾杯できる日を楽しみに待ってるよ」
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