第55話 90%以上
※最近更新頻度が落ちていて申し訳ない限りです……
今回はみずべちほー最終ボス戦開始回です。そして多分次の話で決着つきます。この小説のオイナリサマは損な役回りばっかさせられていますがこの先も変わらないことでしょう。
前回のあらすじ
筆者が書き下ろした黒歴史歌詞には誰も触れなかったので安心して連載再開。UPPPのライブによって、サンドスター・ロウを浄化するけもハーモニーが巻き起こる。そしてライブの最後、立っているものは独りだけであった。戦わなければ生き残れない!! アサヤケニツツマーレーテー‥‥
「い、一体何が起こったのですか……」
クルーザー型セルリアン、通称セルシップの追撃から、オイナリサマの助力を得て辛くも逃れた博士と助手。
しかし、目にしたのは浜辺にて気絶している大量のフレンズの姿であった。
「浜辺には近寄らないように伝えた筈ですが……」
倒れているフレンズ達の中心地には、UPPPとアミメキリン、つなぎがいた。その状況を見て、察する。
「……またやらかしですか」
「……ですね、博士」
「問題は誰がやらかしたか、ですが……」
「一見全員気絶しているように見えますが、恐らくは犯人は気絶したふりをしていると思われます。そしてやってきた我々にやらかしたことを知られたくないのはいつもの二人のうちのどちらかです」
博士の視線がアミメキリンとつなぎを捉える。
そして、元凶は勿論……
(気絶したふりを続けるのは難しいです…… しかし、気絶から今起きたフリをすれば……誰がこの状況を作り出したか分からないはず!)
最大音量マイクシャウトを決めたつなぎであった。そして何とか失態を隠したい為に気絶したふりをする、せこぎちゃんと化していた。
「…………」
博士は、暫し考えたあとつなぎの側まで行き、耳元で囁く。
ボソッ「つなぎ、キリンの交尾は90%以上が雄同士で行われるのですよ」
ガバッ
「───そういう言い方では語弊が生まれます! 正確には雄キリン二頭が雌キリンを奪い合っているうちに、戦いの興奮を性から来る興奮と勘違いし、戦い終わった二頭が交尾するんです! その割合なんと75%以上! そしてそれ以外に普通に同性愛する個体もいるためその割合を足して9割以上! 大丈夫かよキリン!! しかも雄はあまり気に入らない雌キリンに求愛されると、同性愛個体のふりをして雌キリンからの求愛を逃れることもあります! しかしその同性愛のふりから本物の恋に発展し……て……」
二人のものっすごい冷たい視線がつなぎを貫いていた。
「ヒトがいなくなったのは、やべーから過去のフレンズ達が追い出した説が浮上してきましたよ、助手」
「けものはいても、のけものはいなくても、けだものはいるのですね、博士」
「なんて卑劣なんですか……!? そんな反応せざるを得ない話をぶちこんでくるなんて……」
「気絶したふりで誤魔化そうとしたお前に卑劣だのなんだの言われる筋合いは無いのです!!」ハカセノオシカリタイム‼
「ぐああああっっっ!!!」
79HIT‼ 93652ダメージ‼
「ぐふっ…………けもくらべは…………怪我をしない安全な遊び…………」ガクッ
「…………悪は滅びたのです!」
何のことか分からないヒトはけもフェスをやろう! リセマラ博士スタートだ! 最高レア排出率2%ですけどね!!
と、そうこうしている間にPPP5人やアミメキリン、マーゲイ、ジャイアントパンダとジャンジャンなど気絶していたフレンズが目を覚ます。UPPP? ゼロ距離で喰らったのでまだ寝てます。
「改めて聞きますが、一体、何があったんですか?」
博士は、集まった皆の顔を見回しながら聞く。
「ええと、そこで伸びてるつなぎは放っておくとして、何者かの手によってサンドスター・ロウが蔓延して、何かに引き寄せられるようにロウに取りつかれたフレンズがここに集まったのよ。それをライブで何とかしたのだけど……あれ? 何でライブでサンドスター・ロウが浄化できたのかしら?」
首をかしげるアミメキリンだが、返答は返ってこなかった。
「…………皆がおかしくなったのは、私のせいよ」
プリンセスは俯いてそう言う。
「とあるフレンズが海で溺れていたから助けてあげたの。そしたら、後でそのフレンズに襲われて…… それから、あまり覚えていないけれど……多分何かにとりつかれてこのライブ開催の為に色々画策していた、そんな気がするのよ…………」
その話に、コウテイも補足をする。
「そうだな…………わ、私も何故かは知らないがなにかに操られていたような感覚で…………ずっと、心の中をある感情で染められていたんだ」
静かに、つなぎのことを手で指した。
「彼女、ヒトのフレンズを手に入れろ、と……」
「僕……ですか?」
その言葉に、ジャンジャンが
「恐らく…… サンドスター・ロウを与えられたフレンズは、与えた者の指示にしたがうようになる……そして、この黒い海を作り出した現況は、この海の沖にいる…………」
「そうです! 我々はそれを警告しに来たのです! 沖には、ヒトが作った船がセルリアン化した怪物がいたのです!」
「今海上でオイナ……仮面フレンズFOXと名乗る謎のフレンズが戦ってくれているのです! しかし黒い海に潜られて苦戦しているようなのです……」
博士と助手は皆に沖の状況を伝える。
「仮面フレンズ……こはんや森林で僕達を助けてくれた……」
つなぎの脳裏に、神殿型セルリアンから自分達を助けてくれた彼女の姿が甦る。
「そう言えば俺達のライブの前座で盛り上げてくれたこともあったよな?」
「そんなこともあったかも~」
「ありましたよ、確かに! 凄いキビキビ動かれるフレンズさんだな、とは思っていましたがとても強かったんですね……」
イワビー、フルル、ジェーンによると過去にコウテイとプリンセスが同時に体調を崩してライブが盛り上がらなくなりそうな時、突如現れて助太刀してくれたという。
そして、その時の事をさらに話そうとしたとき、聞きなれない声が聞こえてきた。
「しっしっしっ、その時はそいつだけじゃなく私も歌ってやったんだ、伝説のライブ回だナ」
「そうそう仮面フレンズを先輩が連れてきてくれて……って先輩!?」
いつの間にかPPP達の後ろに立っていたのは、先輩ことジャイアントペンギン。初代PPPのメンバーにして、古くからジャパリパークで暮らしている謎の多いフレンズである。
「黒い海を渡りたいんだろ? なら、サンドスター・ロウを消しながら進めば良いじゃないか。簡単な事だナ。雛鳥よりも雛鳥なアデリー達が出来たんだ、お前たちにも出来ると私は思うけどナ」
その言葉を受け、アミメキリンは言う。
「…………UPPPをライブにけしかけたあの時は、高台にフレンズ達を集められれば良いと思っていたのだけど、どういうわけかライブを聞いていたフレンズのサンドスター・ロウが浄化されていたわ。つまり、歌でサンドスター・ロウが浄化されていた……?」
「その通り、サンドスターとフレンズの願いが奇跡を起こす……けもハーモニーというやつだ。そして、一度歌でけもハーモニーが起きている今、たくさんの願いが無くても本気で歌えば同じ現象を起こせるはずだ…… サンドスターはどうにもその場の空気に引っ張られて現象を起こしがちだからナ。さて、黒い海を行く方法は教えたゾ? 後は、自分達で何とかしてみるんだナ、先輩は忙しいのだ!!」
そう言うと踵を返し、どこかへと走り去っていってしまった。
「一体何者なの? あのフレンズ」
アミメキリンの問いにPPP達は顔をしかめる。
「私達も良く分からないのよ、神出鬼没だし……」
「そ、そう…… まぁ、黒い海は取り敢えず何とかなるとして沖まで何で行けばいいのかしら……?」
問題はそこである、水中では歌えないのだ。何か、乗り物を用意する必要がある。しかし、アミメキリンにはその手段が思い浮かばなかった。
「…………乗り物?」
一方、何か引っ掛かったつなぎはしばし考えていた。少し前に、海を渡れる乗り物に関する何かを見た覚えがあったからだ。
「うーん…………あっ! あの時の!」
つなぎはジャイアントパンダの家に行ったときの事を思い出し、こっそりとマーゲイに尋ねる。
「あ、あれですか! 確かにあの時のポスターに使ったあれなら…… 皆さん! 海を渡る乗り物ですが……ひとつ、心当たりがあります!」
つなぎの言葉を受け、マーゲイが手を挙げてそう言う。もし、サンドスター・ロウに汚染されていなければそれを使って海に出ることが出来るかもしれなかった。
オイナリサマは一時も気を休めることのないまま、海上にてセルシップとの戦いを繰り広げていた。
「速度もパワーも大したことないのに……黒い海に潜られるだけで姿が見えなくなる……早く倒さなければ、海がどんどん汚染されていってしまうというのに……‼」
セルリアンの特性のひとつに、物質の模倣がある。セルシップは、元々自分の体内にあった石油燃料を模倣し、サンドスター・ロウ・オイルとして垂れ流し続けている。
「良いでしょう……こちらも、リスク覚悟で迎え撃ちます……!」
サンドスターの力で浮遊していたオイナリサマは、海面近くへと移動し深く精神を統一する。
「さあ、来なさい……!」
海中の物の動きを、気配を探り奇襲へ備えた。
そして突然、背後に気配が膨れ上がる。
「……そこです!!」
見とれるほど美しい軌道を描き、オイナリサマは回し蹴りを放った。単体ならせいけんづきの方が良いという人は浮遊している事を思い出して頂きたい。
「────────!」
彼女を飲み込む寸前にぶち当たる蹴り。予想だにしない反撃を喰らったセルシップは、声にあげないものの苦悶の表情を示す。
ずぶっ
「あ」
オイナリサマの名誉の為に記すが、彼女は以前の失敗を忘れてしまった訳ではない。ただ、長期戦で消耗してしまっていたぶん回し蹴りに沢山込めたと思ったサンドスターが足りなかったのだ。
色々書いたが、結果、オイナリサマはまた右足をセルリアンの体内に囚われる形となってしまった。
「え? あ、いや……嘘ですよね? 私ともあろうものが、同じ失敗をするなんて……」
めちゃめちゃショックを受けているが、今は戦闘中である。セルシップは捕らえた彼女を見せびらかすかのように海上を疾走する。
「くっ……こんな失態、末代までの恥……やはり責任をとって私のサンドスターをエネルギーとして叩きつけて倒すしか…… しかし、そうすると確実に私がこのサンドスター・ロウの海に沈み、空っぽになった体にそれを吸収してダーク・オイナリになってしまう……そうしたら、今よりも悲劇が訪れる……」
その場合、真相が知れると喜劇になりそうであるが。あとダーク化が多すぎる。
「すみません……スザク達…… 私はここまでです…… ていうか毎回敵が強いので頼りになる味方が欲しいです…… 砂漠のあいつ働いてください……」
半ば諦めかけたその時───
あそこよ!
「……! 何か近付いてきます!?」
自分はまだ見棄てられていなかった、そう思うと嬉しくなった。恐らく博士達が頼りになるフレンズを連れてきてくれたのだろう。誰であろうか、空のスペシャリスト、チームジャスティスであろうか。
「あそこよ! ……また足を囚われているわ! 何でぇ!?」
黒い海を光を纏いながら走る一隻のクルーザー、その甲板からアミメキリンが少し呆れながらこちらを指差していた。
宙ぶらりんに近いかたちになっているため、囚われた右足をわたくしで隠すことも出来なかったオイナリサマは、諦めたように口にする。
「……あ い つ ら に だ け は 見 つ か り た く あ り ま せ ん で し た」
しかし、無慈悲にもその船はこちらへと近付いてくるのであった。
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