第52話 貴方は本当にそこにいたのか

※解答回です。怪盗回かもしれません。ついでに言うとダンガンロンパパロディ回でもあるので途中で唐突になんか始まったぞ!?と思われたらそれです。

そしてギャグがないよお!なんでぇ!?



前回までのあらすじ

暗黒探偵ヤミメキリンは手駒であるバフォメットたかたを駆使し事件の解決を目指す。しかしバフォメットが優秀過ぎて自らのポンコツさを露呈させてしまった。

それはそれとしてバフォメット=つなぎは謎が解けたためライブを止めに浜辺へ向かう。




「さあ、コウテイ。始まるわよ、私達のライブが」


「ああ、もうすぐ準備が終わるから、そうしたら行こう」


 浜辺に接岸するように作られたライブ用特設海上ステージ。そこから少し離れた楽屋の様な場所に、プリンセスとコウテイは来ていた。


「これでよし、さあ、行こうプリンセス」


 コウテイがステージへ向かおうとしたその時



「ちょおおっとまったあああ!!」


「ん? この声は」


「このままライブに行かせる訳には行かないわ! この悪行、おてんと様とファンと浜辺が許しても、この暗黒探偵ア…ヤミメキリンの目はごまかせないわよ!!」


 そろそろ暗黒探偵終了かもしれない。


「悪行?いったい何のこと?」


「しらばっくれても無駄よ! アデリー達のものを盗んだのは、あなたね!!」


 そう言ってコウテイとプリンセスの中間を指差す。


「どっち?」


「よいしょ」


 後ろからつなぎがアミメキリンの指差す方をコウテイへ向けてずらす。


「コウテイ、あなたが犯人ね!」


「今明らかに後ろから調整が入ったよな!?」


 突っ込みを無視してつなぎは言う。


「ヤミメキリンさん……こんな謎、貴方ほどのフレンズが解く必要はありません……この私にお任せ下さい」


「そ、そこまで言うなら」


 どうやらアミメキリンは犯人は貴方だ!が出来て満足…したようだ。


「プリンセス……長くなるかもしれない。先に行っててくれ……」


「わ、分かったわ……」


 コウテイにそう促されプリンセスはステージへと向かう。


「───さぁ、これで私だけになったぞ。一体、何の言いがかりなんだ?」


 コウテイはうんざりするかのように首を降りながら言った。


「さて、コウテイさん。なぜ貴方が怪盗PPP事件の犯人か…… それは、貴方にしか出来ないことが数多くあるからです」


 つなぎは腕を組みながらそう言う。


「まず、アデリーさん達の家への侵入。ドアは鍵がかかっており、進入は不可能。

にも関わらずドア自体にこじ開けられたような形跡は無し。単純に言って鍵を持たないものに進入は出来ないんです。つまり、この時点で容疑者はコウテイさん、アデリーさん、ヒゲッペさん、キングさんに絞られてきます」


 そこまで言って、コウテイから抗議の声がかかる。


「何とも単純な理由だが……私は電気が落ちたとき部屋にいたんだぞ? 私の声がしたことを他に部屋にいたメンバーも聞いている。

電気が落ちてからアデリー達の家に行き盗んで帰ってくる……あの暗闇の時間では片道行って来るのがせいぜいだったし、部屋にいた私に犯行は不可能だろう?」


「じゃあ敢えて聞きますが……本当にあの部屋にいたのはコウテイさんでしたか?あの部屋でしたのはコウテイさんの声でしたか?」


「何を馬鹿な……」


と言っているんです、僕は」


「……!?」


「その話をするためには、まずもう一人の犯人について明言する必要があります」


「ヤギね!」


「違います」


「がっ!?」


「ブレーカーがタイミングよく落ちた、という事を聞いた時点で僕はまず二人以上での共犯の可能性を考えました。

こちらのハウスで騒ぎを起こしている間に誰かがアデリーさん達の家へ侵入して盗む。これが単純で簡単です。

そもそも分業しないと時間が間に合わないということもあります」


 ブレーカーが落ちていた時間は、かなり短かったのだ。


「そして共犯者として怪しい存在……ブレーカーのような機械を触ることが出来る存在はそんなに多くはありません」


「やっぱりヒトであるつなぎ……」


「……ジャンジャンさん、アミメキリンさんをちょっとの間だけ外に」


「退出……」


「ああっ! ごめんなさい言ってみただけなの!」


 手をわきわきさせてアミメキリンに近寄るジャンジャンだったが、彼女が素直に謝ったため矛を納めた。


「…………おほん、話を戻します、ブレーカーを操作できる知識があり、あの場に居なかったフレンズ、まず第一の犯人。それは…………マーゲイさんです!」


 そうつなぎが言うと共に、イワビーとジェーンに連行される形でマーゲイが入ってきた。


「くっ…… 申し訳ありません…… 私は、おおせのとおりにぃ…………」


 悔しがるマーゲイ。だが、ジェーンが無情に告げる。


「私達の私物から何点か渡すだけで買収簡単でしたよ」


「その事は内緒にしてくれるって言ったのにぃぃぃぃぃ!? こうなったら力付くでも……!」


「まだ浄化がたりねーみてーだなほら、もっと食べろよ」


 イワビーはホワイトセルペッパーをマーゲイの口に入れる。


「もががが……!」


 じゅうう、という音と共にマーゲイの体から、サンドスター・ロウの煙が逃げていく。かくり、と首が傾き意識を失ってしまった。



「PPPライブにて複雑な機器に触れている彼女ならば、ブレーカーの扱いなど造作もないことでしょう。事実、ブレーカー室の登れそうな鉄の梁や柱には、爪の後が有りました。そして、梁の上、下から見えない部分に三人の大切なものが隠されていました」


 あんな高い所までスルスルと登れるのはマーゲイ以外には難しいであろう。なお、つなぎは飛べるがそれを言い出すと後ろのキリンがやっぱり犯人だとうるさいので黙っておく。


「マーゲイさんであれば、あの場にいない人の声を代用できます。つまり、あの暗闇の中で声をあげたことはアリバイにならないんですよ」


「…………それはそうかも知れないが……そんな事を言えば誰にだって入れ代わることが出来るじゃないか。鍵だって、アデリーや私が持っている物をこっそり盗んで後で戻したりしたら開けられるだろう?」


「犯行時間の10分前まで、アデリーさん達の家の扉は閉まったままでした。それから先は皆さんあの部屋に集まっていた。そういう形は取れないと思います」


「だったらあの部屋に私もずっといた訳だしやっぱり私以外の誰かが……」


「ここで、先程の質問に戻りましょう。本当にあの部屋にいたのはコウテイさんでしたか?」


「くどいぞ! 私はあの部屋のソファーに寝ていたんだ!」


 憤った様子のコウテイにも怯まずつなぎは続ける。


「フルルさんが言ってくださったので分かりました。ソファーにうつ伏せで寝ていたんですよね? 全く寝返りもうたずに……」


 つなぎはそこまで言うと息を整え、意を決して再び口を開いた。


「勿体づけるのは止めましょう。ソファーで寝ているコウテイさんの顔を直接見た方は誰も居ません。コウテイさんが自分でソファーで休んでいると皆に伝えた。だから皆ソファーにいるのはコウテイさんだと信じて疑わなかった」


「でも、ソファーにうつ伏せになっていたのは────気絶したキングさんだったんです!」


 つなぎの言葉に、コウテイは目を丸くする。


「……ふ、ふふふ。ははははは! 何を言い出すかと思えば…… 私とキングを見間違えたって言うのか?」


「十分あり得るでしょう。元々コウテイペンギンとキングペンギンは見た目が似ています。フレンズ化しても同様です。前髪の先端の色や髪の向き等が違います……がうつ伏せでは分かりません」


「それにキングさんに話を聞いてみたところ、彼女は気絶から目が覚めたら真っ暗だった。そして、あの暗闇の中、扉が開閉する音は一度しかしなかったそうですよ。キングさんは隣の部屋から移動してきた訳じゃありません。その部屋に居た。なら、コウテイさんはどこに…………?」


 その場にいる一同の視線が、一斉にコウテイに向けられる。


「う、うるさいうるさいうるさい!! わ、私はやってない! やっていない! マーゲイが何とかして全部やったんだ!」


 狼狽えるコウテイを、つなぎは冷静な目で見つめる。


「あくまでも、シラを切るんですね。なら良いでしょう」


(───だいぶ追い詰めてきている、ここで彼女が犯人であることを証明する!)




 相手の発言の “ “ で挟まれた部分にリストから言葉を選んで叩きつけろ!


使える言葉

・ずれた時計

・盗まれたコウテイ人形

・暗闇でのプリンセスの発言




 ──議論開始!──


以下コウテイのセリフ


「私は “怪盗PPPじゃない“ ……!」



「 “マーゲイが盗んだ“ に違いない!」



「 “物的証拠は何もない“ ……」



「 “鍵ならばアデリーだって開けられる“ だろう?」



「 “私はあの場に居たんだ!それは揺るがない“ !」



「もっと上を目指さないと…………!」



「────や、やっぱり私が犯人かなんて分からない。この事件は、鍵開けが上手い謎のフレンズ、怪盗PPPの仕業なんだ!!」




つなぎ(確かにこの事件、物的証拠を掴めていない……なら、犯人ならば知らないことを突きつけ嘘を炙り出す!)



再議論開始!



コウテイ


「私は “怪盗PPPじゃない“ ……!」



「 “マーゲイが盗んだ“ に違いない!」



「 “物的証拠は何もない“ ……」



「 “鍵ならばアデリーだって開けられる“ だろう?」



「 “私はあの場に居たんだ!それは揺るがない“ !」


ここだ!


突きつける言葉

・暗闇のプリンセスの発言


───break!!────



「コウテイさん、ならば答えて貰いましょう。あの暗闇の中、プリンセスさんは何をして、何と言っていましたか?」


「何って……」


「分からないんですか? 他のフレンズさんにも聞いてみましたが、あの場にいた方は全員覚えていましたよ?」


「う、ぐぐ……た、たまたま覚えていなくて……」


「他の事でも良いですよ? 暗闇の中で思い出せることはありますか?」


「ぐ、ぐうう!!」


「イワビーさんとヒゲッペさんが揉めていたことは? アミメキリンさんが叫んだ言葉は? まさか…………あの場に居たのに何一つ覚えていないんですか? 違いますよね? 貴方は! 確かにあの場にいなかったんだ!!」


「ぐううううううううう!!!!」


 叫んだかと思うと、急にコウテイは静かになった。そして、ボソリと喋り始める。


「やーめた。私の敗けだ。そうだよ、私が犯人、怪盗PPPその人だよ」




 最初に予告状を書いたのも私さ。

当日、私はキングを担いでベッドに連れていき、人がいなくなってから一度起こし、後ろから驚かせてもう一度気絶させソファーに寝かせた。私は、隣の部屋のベッドに寝た。丁度入れ代わる形になった訳だ。


 犯行時間が近づいた頃、盗みに入るはずの部屋に集中し隣の部屋の事を誰も気にしなくなった頃、私は勝手口から外に出てアデリー達の家に鍵を開けて入り、お目当ての品を盗んだ。そして、そちらのブレーカーをマーゲイが落とした事を確認してからそちらに合流するため動き出した。途中、扉の前で私の声真似をしたマーゲイに盗んだ物を渡し、私はまるで怪盗が逃げたかの様な大きな音をたてて扉を開閉し、そちらに合流した。


 マーゲイは見付かる前に鉄の梁まで登り、その裏に身を隠した。盗んだ品といっしょにね。そして、脱出しようと梁を降りた所を、アミメキリンに見付かった。


「だから、アミメキリンの口封じをしたんだ…… どうやって元に戻したかは分からないけどね」


 コウテイは肩をすくめた。


「なぜ、こんなことをしたんですか?」


「何故って? 時間稼ぎだよ。君達を倒すための、絶好の場を整えるための……ね」


 コウテイはつなぎ達に背を向け、水上に設けられたステージへ向けて走り始める。


「あっ! 待ちなさい!」


「待てと言われて待つ怪盗がいるものか!!」


 アミメキリンの制止も振り切り浜辺から水上ステージへ向けてジャンプするコウテイ。着地すると同時に、水上ステージが浜辺から離れ10メートル程沖まで移動する。


「な、何故そこまで頑なにライブを…………」


 疑問に思うつなぎだが、その理由は少しずつ明らかになる。


「気を付けて……周囲……フレンズだらけ……おかされている……サンドスター・ロウに……」


 ジャンジャンの言葉通り、何処からともなく現れたフレンズ達が、水上ライブステージへと向かいゆっくりと歩く。


「そ、それによ! あの海見てみろよ! 真っ黒だぜ!? あれもサンドスター・ロウなのか!?」


 イワビーが叫んだ瞬間、風向きが変わりつなぎ達の元へ海の異臭が流れてくる。


「この臭い…………まさか、石油!?」


 ヒトであるつなぎのみ、その臭いが何か感じることが出来た。


 そのつなぎに対し、ステージ上からプリンセスが語りかける。


「ご名答! 今、ここに向かっているフレンズ達は、このサンドスター・オイルに軽く毒されているわ! 思考能力を奪われ、輝きが強い所へ向けてただ向かうフレンズの姿をしたセルリアン見たいなものになってしまっているの」


 バッとステージの照明が灯る。


「輝きは心の力、魂の輝きよ! 強い魅力や文化、想いが発する光! このままではここに向かうフレンズ達は、私とコウテイのアイドルという輝きに引き寄せられサンドスター・オイルの海に沈んでしまうでしょう。 それを防ぐ為には貴方達がより強い輝きで、ファンを引き寄せなくちゃいけないってこと!」


 プリンセスは浜辺に立つつなぎ達を指差し、堂々と宣言する。


「まさにアイドルの為の闘いのステージ、探偵はもう用済みね…… イワビー、ジェーン、フルル! アイドルは私とコウテイだけで十分だって教えてあげるわ!! 文字通りファンを賭けたライブバトルよ! 完膚なきまでに…………叩きのめしてあげる!」

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