第35話 ヤバイなら 助けてあげよう コノハズク

※しんりんちほーまとめ回かと思った?残念まだつづくんじゃ。

でも今回は(作者)息抜き回です。ちょっとゆるめなのです。




 色々なお薬による副作用が抜けたのは、結局騒動がおさまった翌々日であった。


「キンシコウ……リカオン……手を握っててくれ……いなくなっちゃ嫌だ……」


「だ、大丈夫です、私はここにいますよ!」

「僕も! 側にいますから!」


 一足早く副作用が抜けたリカオンとサンドスター・ロウが除去されて元に戻ったキンシコウは、高熱にうなされるヒグマの看病をするはめになった。

 リカオンをぎゅっとした時に存外心地が良かったらしく、無意識下でふれあいを求める癖がついてしまったようだ。以後三人で寝たときに、朝どちらかがヒグマに抱きつかれているようになる。羨まけしからん。



「ア、アミメキリンさん! もう駄目、早くジャパリまんを!!」ウーンウーン


「つなぎ、多分貴方·、割と平気よね?」


 つなぎは消費したサンドスターの量が少なく、またダメージも控えめの為比較的副作用が軽かった。まぁ大事を取って一日休んだ。



 そうして事件解決から二日後。

 ヒグマから貰った情報を元に、みずべちほーへと向かいたい、つなぎとアミメキリン。


 しかし、あれから会っていない博士と助手の様子も気になる。


 完全包囲されていた状況から切り抜けられたのか、皆でご飯を食べる食事会はやるのかなど、訪問して確認しなければいけないことがあったため、二人はとしょかんへと向かっていた。


「アミメキリンさん、もしみずべちほーで僕の事に関して色々分かって、旅する必要が無くなったらどうしますか?」


 そうつなぎに聞かれたアミメキリンは、人差し指をあごに当て、考えるそぶりを見せながら答える。


「まぁロッジに帰るけど…… 貴方、放っておいたらなにするか分からないし行くところも無いだろうから、行きたい所無ければ一緒にロッジに来なさい?」


「ふふ、そうですか。信用されてないみたいで心外です」


「そう言うわりには嬉しそうに見えるわね。……というか貴方なんか今日気持ち悪いくらいに機嫌が良いのよね、何かあったの?」


「いやー、今回は本当に死にかけたので、それを思うと平和っていいなって」


「ま、まあそうね……」


「すがすがしい日ですよね、今日は。小鳥は歌い、花は咲き乱れ、こんな日こそさっき貰ったジャパリまんマシュマロ味には、としょかんの焚き火で焼かれてもらうぜって感じですね」


 何てことはない、新しいおやつが手に入っただけであった。G(グルメ)ルートなのだ。


「まぁジャパリまんは良いとして、としょかん、壊れてたりしないといいけど……」


 そういった直後、木々の間からとしょかんが見えてきた。

 博士達には悪いが、元々ちょっと壊れてる建物である。外見に特に変化は見られない。


 しかし、遠くからは分からなかったが中を見ると、あちこちの本棚がひっくり返りぐちゃぐちゃになっていた。


「こ、これは片付けが大変ですね……」


「それより博士と助手は留守かしら……? いないの二人ともー!!」


 アミメキリンは大声で呼びかける。


 ……ナ…ス


「今ナスって聞こえませんでした?」


「いや内容より声がしたわよ! 多分どっかにいるわよ! 何処にいるのー!?」


 更に大きな声で呼ぶ。すると、反応も少し大きくなって返ってきた。


 ……チカ、チカナノデス!

 トジコメラレタノデス! ハヤクタスケルノデス!


 声のする方を見ると、なるほど地下へ降りる階段があり、その先に扉があった。……だが、本棚が転がって落ちてその扉を塞いでしまっているようだ。


 それにしても、鉄製の丈夫な扉で余り声も漏れなさそうなのにそれでも聞こえるとは、余程必死に叫んでいるのであろう。ミミコノハウル、顔面に9点でリーサル、長のお友達になってくれる?


 本棚を退けて扉を開けると、中からげっそりとした博士と助手が出てきた。


「あ、ありがとうなのです……」

「もう駄目かと思ったのですよ……」


 よろよろの二人を何とか地上まで連れていき、持っていたジャパリまんを食べさせる。ちなみにつなぎのおやつより捻出。 


「はぐっ! がつっ!」

「ふむっ! むぐっ!」


「み、水もどうぞ……」


「んぐっんぐっんぐっ……ぷはー! 生き返ったのです!」


 博士復活。先程までは驚きの細さであったがようやく元に戻ったのだった。


「ごくっごくっごくっ……ぷはー、少し落ち着いたのです。危うく博士を、本当の意味で食べてしまう所でした……」


 助手復活。そして野生化寸前であったようだ。もしそんなことになってしまったら本当に殺フレ事件勃発なのでギリギリだったと言えるだろう。


「ラッキービースト達が部屋の中まで入り込んできて、地下室に籠城したまでは良かったのです」

「しかし、棚が偶然落ちてしまったので、騒動が起こっても中からは開けられず……」


「そ、そうだったの…… 昨日早く来てあげれば良かったわね」


 そんなことが起きているとは露知らず、存分にゆっくりしてからとしょかんに来たアミメキリンとつなぎ。さすがに少し罪悪感を覚える。


「いや、そちらも大変だったようですし気にしていませんよ、我々は寛容なので」

「ただ……まだまだお腹が空いています。可能なら、何か食べるものを作って欲しいのです。ボリュームがあって力が湧くものが良いのです、我々はヘロヘロなので……」


「ボリュームのあるものですか? うーん……」


「食材は今回のお詫びでラッキービーストが色々もってきてくれた様なのです。ここから出してはくれませんでしたが……」

「鶏肉含め肉類とか使っても全然問題ないですよ、むしろバッチコイなのですよ」


 フレンズと食肉は切ってもきれない問題かも知れないが、つまる所美味しいものならオッケーという簡単な規準。大事なのはいただきますの感謝の心。



「ということでボリューム料理の本を持って厨房に来ましたが……」

「あんま荒らされて無いわね、博士達こっちに籠城した方が良かったんじゃないかしら」


 多分そうしたらそうしたでこっちに来るのがラッキービーストクオリティ。敵の時は強い。


 早速つなぎはパラパラとページをめくりながら、使えそうな料理を探す。アミメキリンも一緒に除きこむ。写真が多めなので分かりやすい。


「これなんかどう? お米を炒めたやつ」


「うーん、お米を炊いていると結構時間かかりますし、パンでは力が湧く程のガッツリになるかどうか……よし、決めました!麺類にしましょう」


 つなぎはレシピ本のとあるページをバン!と開き机に置く。そして材料を取りに行く。


「ほうほうどれどれ……?」


 アミメキリンがそのページを覗きこむ。


「なるほど……これはボリューミーね……」




「おお食欲をくすぐる匂いがするのです…… これは、醤油?」

「脂の匂いもしますね……」


 博士が厨房から漂う香りに鼻をひくひくさせる。お腹が空いている助手もごくりと唾を飲む。


「お待たせしました~」


 つなぎは和、洋、中なんでも食事運搬用のカートに銀のドーム型お盆(クローシュ)を被せて持ってくる。開けるまで何か分からない。


「ボリュームが欲しい、ということで、かつてヒトが愛したと言われる最強のボリュームメニューにしました!」


 カートから机に料理を移す。ドン!という置いたときの音がかなりの重量を感じさせる。

 

 つなぎがクローシュを外す。そこにあったのは─────


山盛りの野菜! たっぷりの背油 もちもち太麺!

 一部の人の心をつかんで離さない、ラーメン界の異端児、二郎系ラーメンであった!


 あっ! それはジロリアンだよ! 食べてぇ!

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