第7話 スラム街の惨劇

シェスカから女物の服を借りたが、ただそれだけだと不審に思われるので一応ウィッグをつけて簡単な化粧もしてもらった

……というよりはシェスカが楽しそうにしていたので、多分裸を見てしまった腹いせというのもあるのだろう

だが、この事態はなんだ



「こんな場所スラムに入りこむなんてよぉ、綺麗なお姉ちゃん『達』は俺たちと遊びたいのかな?」

「久々の上物だぜ、ケケケ……」



モヒカン頭にスカーフェイス、ナイフを手に持ってニヤニヤ笑っている分かりやすいくらいのチンピラに囲まれている

スラム街という場所があるくらいなのだから、こういう輩が現れることも分かる(異世界にモヒカン頭のヒャッハーがいる事は想定外だったけれど)



「俺はロングヘアのちびっ子にする」

「いいねえ、俺はブロンドヘアの高身長美人だあ!!」



眼が腐ってるのか!!と叫びたかったが、僕にそんな度胸はない



「誰がちびっ子よ!! 私はこれでも16歳!! ロングヘアの美人に訂正なさい!!」

「ツッコミ所そこじゃないでしょシェスカ!!」

「なんかお前、美人の割に……声汚ねえな?」

「というか、気付けよ!!」

「俺たちが言うのもなんだけど、酒の飲み過ぎ歌い過ぎは良くねえぞ?」

「未成年だよ!! これでも男だ僕は!!」



それを証明するために服を捲りあげ、体を見せ付けるとその場の空気が凍りつく

「ちょっとアスカ!! バレなきゃバレないで逃げ道あったのに!!

「…………アリだな」

「うん、アリ」

「えっ」

モヒカン頭は目をギラギラさせ、鼻息を荒くしている

これまでヤバいと思うような事態は多数経験してきたが、これまで味わった事のない恐怖を感じる

「お嬢、もといお兄さん。 お歳は?」

「じ、17……」

「17かあ、若いねえ。 エッチな経験はあるかな?」

「無いよ!!」

助けを求めようとシェスカに視線を向けるが、シェスカは黙って首を横にする

つまりは、諦めろという事か

「良いねえ、初モノかあ。 おじさん達が教えてあげちゃおうかなあ」

ああ、やっぱダメだ

このモヒカン達に変な事をされるだなんて絶対に耐えられない

というか男に何かをされて悦ぶ性癖は持ち合わせていない

「あの、僕なんかよりもあっちのシェスカの方が」

「女の子もイイけど、抱ける男はレアだからね……今回ばかりはキミが優先さ」

「待っ……!!」



「紫電縛撃!! スパークロッド!!」

僕の口の中にモヒカン男の舌が捻じ込まれ、口の中を舐め回されたその瞬間に男たちが空に持ち上げられた

「な、なんだあ!?」

あまりの出来事に目を白黒させていたが、どうやら縄らしきものにモヒカン達が捕まって持ち上げられているらしい

「大気中に存在する『地』のエレメントオーブを私の魔力で縄のように構成したもの、よってこの縄は自由自在…!!」

「シェスカ!!」

「ごめん、アスカ。 反属性の多重詠唱ってまだ慣れてなくって詠唱に時間がかかっちゃった。 大丈夫……じゃないわね」

モヒカン男の口の臭さとか顔の気持ち悪さとか、舌の感触とかを思い出して頭がクラクラする

幸か不幸か転生したばかりで胃の中が空っぽだったのもあり、吐き出すものが無い



「お、おい!! 離しやがれ!!」

「おっと、この魔法はまだ終わりじゃないの」

「何ィ!?」

「地のエレメントオーブで通電性の高い金属を錬成し、捕縛……そして風のエレメントオーブで強力な摩擦を引き起こして高圧電流を——」

縄を持つ両手にバチバチと電流が生まれていく、痺れたりしないのだろうか?

というか、電力を直接ぶち当てたりして大丈夫なのだろうか?

「待て待て待て待て!!」

縄に捕まったモヒカン頭達がジタバタと抵抗する

「男だろうと女だろうと、自分の欲望を満たすために人を酷い目に遭わせようとする輩は嫌いなの」

「お、お前!! 例えスラム街の人間だろうと人を殺せば殺人罪に問われ……」

「安心なさい、アンタ達を警察に突き出すだけ。 死ぬほどの電流は流さないから安心していいわ」

「そ、それでも傷害罪だ!!」

「正当防衛よ!!」

シェスカがニヤリと口元を緩ませた瞬間、縄にバチバチと電流を走らせる

一瞬目がくらむほど、カメラのフラッシュとか太陽の光のような眩しい光が縄を走っていく

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

このラーセオスにおける物理法則とかはよく分からないが、はっきり言ってオーバーキルだと思う

モヒカン男達の身体は黒く焦げあがり、ブスブスと黒煙をあげており

シェスカが溜息をつくと魔法の縄が消滅し、モヒカン達の身体が地面に叩きつけられる

「あ、あの……死んでない?」

「大丈夫大丈夫、この程度じゃ普通は死なないから。 飛鳥がいた世界だとこの程度で死んじゃうの?」

「ああ、うん。 ちょっとした電流とか火事で」

「ふーん、不便ね」

二度とシェスカには逆らわないでおこう、小さく決意を固めるとシェスカが叫び声をあげる

「教会、教会に行かないと!! 勇者様を待たせちゃう!!」



続く

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