勇者との旅編

第6話 シェスカのお説教タイム

イジメを受けていた時でさえ、こんな屈辱は味わなかった

そう、全裸で正座をさせられている

汚らしいものは見たくないという理由で一応腰にタオルは巻いているがそれでも全裸だ

一方、この部屋の主人であるシェスカはローブに着替え終えている

シェスカ・オルドヴィンは16歳だが結構なエリートらしく、年頃の女の子らしいキュートな部屋とは裏腹に数々のトロフィーや賞状が飾られている

もっとも、今のところ簡単な文字や単語しか読めないので文章がぶつ切りに見えるような状態だ



「で、気付いたらここにいたと」

「はい……」



話すべきかそうでないか迷ったが身の潔白を証明するため、転生してきた事をしっかり話した



「神の啓示を受け、魔王を倒すためにこの世界に転生したのよね?」

「はい……」

「だったらなんで全裸で私の部屋にいるの」

「転生事故です」

「事故って、神様がそんなミスをするかしら」

「ミスをしたのはエ……なんとかいう虫みたいな奴で」

「神の使いが虫みたいな奴って、神様への冒涜よ」

「だから本当なんです」



この世界……というかこの国は神への信仰心が強いらしい、元々いた日本が宗教への関心が薄いだけかもしれないが



「まぁ、ハルジーナの人間では無さそうなのは確かね。 黒髪にブラウンの瞳なんて見た事ないもの」

「ハルジーナ? ラーセオスじゃなくて」

「ラーセオスはこの世界の名前でしょ、ハルジーナは英雄王『ムルジュカ』が建国したグレンバルト大陸中央に位置する国。 私たちがいるこの町はリクレーナ」



なんだか頭が混乱してきた、一気に横文字が頭に入り込んでくる

原初の海で身体がバラバラになった事で一応この世界に最適化されているのだろうが、聞き慣れない言葉が出てくると全部の言葉が遠い異国の地の言葉に聞こえてくる



「ごめん、この星の名前はラーセオスで国の名前がリクレー……」

「国の名前はハルジーナ……っていうか、星って空に浮かんでいるものなのに変な言い回しするのね」



どうやら天文学はあまり進歩していないらしい



「あ! ヤバい、こんな時間……勇者様をお待たせしちゃう!!」

「そうだ、勇者……俺、魔王を倒さなきゃ!! 連れて行ってくれ!!」

「全裸を!?」

「じゃなきゃ、死ぬ事が出来ない!!」

「ハァ!?」



と、いうわけでシェスカに同行する事になった



女装で



「お姉ちゃんと背丈同じくらいだと思っていたけど案外入ったわね」

「…………お姉さん、背が高いんだね」

「まぁ、平均よりちょい上くらい?」

「お姉ちゃん、骨だけになっちゃったけどね。 転生者は何かしらの特殊スキルを身につけてるって話だし、魔王ボコるのに協力なさい。 乙女の柔肌を見た罪滅ぼしに」

「待って、今の一文情報量多過ぎて咀嚼しきれないから整理させて」



・シェスカにはお姉さんがいて骨だけになった

・転生者は何かしらの特殊スキルを持って生まれ変わる

・乙女の柔肌を見た罪は魔王を討滅しないと滅ぼせない

・僕が自殺したい理由とか割とどうでもいいしシェスカのお姉さんが死んだ事に対してあんまりウェットな空気にならない



「ああ、お姉ちゃんは先代勇者と魔王を倒す旅に出たんだけど。 先代勇者がゴブリンの群れに囲まれて火炎放射器で焼き殺されちゃったのよね」

「あの、お姉さんとは……仲悪かったの?」

「ううん、普通くらいじゃないかな? 私と違って何やらせても優秀で……おっとりしてたけど、優しかった」

「辛くないの?」

「しばらく立ち直れなかったけど、もう5年前の出来事だし。 いつまでもお姉ちゃんお姉ちゃんって悲しんでいたら安心出来ないでしょ?」



僕の目の前を歩いていたシェスカが振り向いてニコッと笑う

強がってみせたのか、心配している僕を安心させようとしたのかは分からない

女の子に笑顔を向けられたのは随分久しぶりな気がした



「アンタはなんで自殺したの?」

「色々、イジメとか、親とか」

「何それ、ほぼ他人のせい!? っていうかイジメならやり返せばいいじゃない!!」

「あはは……ここはどうだか分からないけど、イジメって反撃したら倍返しになってそれをやり返したらもっと酷いことされて」

「友達とかいなかったの?」

「友達は作ろうとしても作れなかった、友達になろうとしたらその子がハブ……うーんと、村八分にされる」

「ムラハチブ?」

「ようは、その子が無視されたり嫌がらせされたりして精神的苦痛が与えられるんだ。 で、学校行かなかったら社会から爪弾きにされたり親は理解してくれない」

「で、自殺したんだ。 そんなの完全な負けじゃん」

「悪い?」

「悪いよ!!」

「断言するね!?」

「するよ!! だって、これから先人生どう転ぶか分からないんだよ? 誰かを好きになったり、誰かから好かれたり生き甲斐とか見つけたり出来るかもしれないよ!? 勿体ないじゃん!!」

「そう思うのは君が勝ち組だからでしょ」

「何よ、勝ち組負け組ってそうやってカテゴライズするから負け組になるんじゃん」

「負け組は一生負け組なんだよ、どんなに足掻いたって勝ち組になれないんだ」

「弱虫!!」

「弱虫で結構」

「ところでさ……」

「うん?」

「ここ、どこ?」



見渡すと裏路地というか、よく分からないスラム的な場所に立っていた

ボディショップ、セクシーバー、アングラウェポン、ナイトドラッグといったスラングでよく分からない看板が並んでいる



「あはは、なんかお話してたらよく分からない場所に来ちゃった」

「ホームタウンで迷子になるなよ!?」



続く

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