転生編

第2話 オーロラの見える場所

そこはまるで宇宙のような、海のような場所だった

地面に叩きつけられ、身体が潰れた瞬間に海に落ちたような感覚に陥った

水の中だけど酸素があるのか呼吸は出来るようだ

そもそも死んでいる身なので、酸素も何も無いような気がする

だが、『宇宙のような場所』と喩えたのは海と違って上下左右が分からないからだ

目を開けると薄暗い中、景色がオーロラのように色が重なっていたりグラデーションがかっていたり

光が点滅していたり、まさに宇宙を眺めているようだった

試しに身体を動かしてみるとスイスイと泳げる、手足を動かしてみると水の抵抗がほとんど感じられない

呼吸が出来て、SFで見たように吹っ飛ばされない宇宙おいったところか



そういえば死んだはずだけれど服を着ている、死んだ時に着ていたからこの服なのだろうか?

持っていないけれどメイド服を着て飛び降りたらメイド服のままここにいるのだろうか?

メイド服を着たまま宇宙空間か、ちょっとしたギャグになる

死んだという事は痛みはあるのだろうか、空腹状態にはなるのだろうか?

もしも空腹状態になるとしたらなかなか辛い思いをしそうだ

誰もここにはいないみたいだから排泄は特に問題なさそうだ、無駄に広いし汚れる事も無いはずだ

いや、そういえば用を足すための紙が無いじゃないか……もういっその事全裸で過ごそうか



「もしもし、おにーさん聞こえる?」

「えっ?」



おおよそここに落ちてきてから30分くらいが経っただろうか

まさか他人の声が聞こえてくるとは思わなかった

距離的にそんなに離れていないはずだが、姿が見えない

クルクル回ったりしながらあちこち見回してみる……がやはりどこにいるか分からない


「ここよここ!! 分からない?」


目の前に小さくて青く澄んだ透明な羽の生えた小さな女の子が現れる

虫が苦手なので条件反射的に手で叩き潰しそうになるが女の子が慌てて回避して事なきを得る


「あっぶな!? 何するのよ!!」

「……でかい虫だと思った」


彼女の姿はよく見なくても異質な姿をしている

二次元的にはよく見かける姿かもしれないが、ピンク色のストレートロングヘアに翡翠色の瞳に白い肌

真っ黄色の全身タイツに透き通った透明な羽

はっきり言ってキモい

二次元には理解がある彼だが本当に

「キモっ」

「初対面の女の子にぶつける言葉じゃないでしょ!?」

「なんか虫みたいでキモい……」



どうやら彼女は死んだ人間を導く水先案内人らしい

自己紹介によると彼女の名前は『エディ』で神様の代行任務が主な仕事らしい

で、自殺した僕は地獄行きとか存在抹消なのかと思いきや

「マルチユニバース地点J-382への転生……となってるね」

「は?」

「だってほら、神様からの案内書にそう書いてあるし」



案内書


死者:黒谷飛鳥

享年:17

死因:飛び降り自殺

処理:マルチユニバース地点J-382への転生

年齢は17歳と148日からの再開

外見はマルチユニバース地点J-382基準の標準的な容姿とする


「自殺って本来はこの空間に30年放置、後に赤子として

生まれ変わるとかそんな処理で済まされる事が多いんだけどアンタラッキーだね!! 異世界転生って今希望者が多いから抽選なんだけど」

「……要らない」

「はい?」

「転生とかしたくない、消滅したい」



エディは口を間抜けにあんぐりと開けている

それはそうだ、異世界転生は大人気なのだろう

こことは違うどこか別の世界でひと旗あげてやりたい人間が多いのだろう

だが、彼……黒谷飛鳥にとってはそれすらもしたくないのだ

「まぁまぁ、そう言わずに転生しちゃいなよ!! あ、追記があるね。 J-382で天寿を全うするか魔王グロムガルトを討つまでJ-382に存在を拘束するとあるね。 あ、これって……流刑だ」

「流刑」

「この処理は本人の意思を問わずに強制されるものってある、やっぱり流刑だ」

「流刑……」

「えっと、存在を拘束するって事は死んだら即その土地に転生するって事になるね」

「は?」

どうやらそう簡単に自殺というものは上手くいかないらしい


続く

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