ミュンヘン4

 過剰な人口を移民させるために新しい土地を求めることは、現在ではなく将来を見据えるならば多くの利益がある。


 すべての国民の基礎として健全な農民階級を維持していく可能性でさえも決して十分に評価されているとは言えない。


 今日の私たちの多くの悩みはそもそも農村とたちとの不完全な状態に由来する。中小農民の固い絆はいつの時代でも我々が今日持っているような社会的疾患に対する最大の防御である。


 しかし、これは国民が経済の国内循環において日々のパンを獲得する唯一の解決法でもある。商工業はその不健全な地位から退いて国際的な需要均衡経済という一般的な枠組みに組み入れられる。それとともに両方とももはや国民を扶養する基礎ではなく、その補助手段なるのだ。


 商工業はあらゆる分野で自国の清算と需要を課題とすることによって全国民の扶養を多少とも外国から独立させ、特に重大な時にこうして国家の自由と国民の独立を助けるのである。


 もちろんこのような領土拡大政策はカメルーンにおいてではなく、今日ではもっぱらヨーロッパにおいて実現された。人々はそれと同時に冷静に、真面目に、ある民族がこの世界で他の民族より五十倍も多くの土地や領土を与えられているのは神の意思ではありえないという観点に立たなければならない。


 この場合人々は政治的な境界にとって権利の境界から遠ざけられてはならない。この地上がすべての人の生活圏を有しているのなら、我々にも生活に必要な土地が与えられてもよいはずである。


 もちろん誰も喜ばないであろう。しかしその場合には生存権がその効力をあらわす。そして示談が拒否されればまさしく拳でいかなければならない。


 もしもかつて我々の祖先がその決意を現代と同じような平和主義的ナンセンスに基づかせていたならば、我々は現在の領土のわずか三分の一程度しか所有していないだろう。


 その場合、ドイツ民族はヨーロッパでは何もすることがなかったに違いない。そうだ――ドイツ帝国の二つの東部辺境州と、今まで我々を存在させてきた国家と民族の領域の大きさの強靭さは、我々が生存のために戦う自然な決断力のおかげなのだ。


 もう一つの理由からもこの解決方法は正しかったと言えるだろう。すなわち、今日のヨーロッパ諸国の多くはピラミッドを逆さまにしたに等しい。そのヨーロッパの底面は植民地、外国貿易などにおける他の重荷にたいして驚くべきほど小さい。ヨーロッパが先端にあり、全世界が基底にあると言ってもよい。


 基底をなお自分たちの大陸に持ち、そしてただ先端のみが他の土地に触れているアメリカ合衆国とは違うのである。それゆえに、この国は未曾有の国内的な力を持ち、ヨーロッパの植民地国家の大半が脆弱なのだ。


 イギリスもまた例外ではない。とにかく人々は大英帝国を見る場合、アングロサクソン系の世界そのものを見ていることを簡単に忘れてしまう。イギリスの地位は一人でアメリカと言語上、文化上で同じであるために他のヨーロッパの国々とも比較されないのだ。


 それゆえドイツにとって健全な領土拡大政策を実施する唯一の可能性は、ヨーロッパの中で新しい土地を獲得することだけであった。植民地はそれが大規模なヨーロッパ人の植民のために適していないと思われる限りその目的を支持することはできない。


 だが平和的解決方法では十九世紀においては植民地を得ることができなかった。したがって、困難な闘争によってのみあの植民地政策を実施することができたのである。そしてヨーロッパ以外の地域よりも故郷の対利器の土地のために戦った方がいっそう目的にかなっていたのだ。


 このような決意はもちろん終始一貫させることが必要である。中途半端な方法や、ぐずぐずしているだけでは精神力まで緊張させて遂行できると思われるような課題にも近づくことができない。


 そのときにはまた、ドイツ帝国の政治的支配がこの唯一の目的に熱中しなければならなかった。


 こうした課題や条件を認識する以外に他の策は決して考えられなかった。この目的は闘争によってのみ達せられるということを認識させ、しかしまた冷静に戦闘に立ち向かわなければならないのだ。

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