第155話「調整される世界軸」
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ユナが未来の自分との邂逅(かいごう)を果たしている中。
キャンパーの面々はディルムンの準備に明け暮れている。
ザジはガールプラモデルのオプションパーツである、ステージ衣装装備に困惑しながら打ち合わせの準備を行っていた。
「何......この衣装? (動揺)ディルムンで勝ったあとに俺......センターで歌って踊るの!? 」
「妙に高い声を出して歌ってダンスまで訓練させられてたけど、ディルムンってこういうイベントだったっけ? (汗)」
ザジは隠しバトルステージのボスキャラとして、かなりレアな存在という立ち位置での登場予定だ。
だがボス専用のボディは聞いていたのと全く違うのである(主に二依子がガールボディアイドル仕様に改変)
ザジは考える。
「大型の騎士ロボットボディで戦うつもりだったけど、結局はガールボディの新たな戦い方の練り直しが必要になったのか......」
「えーっと......アイドルっぽく飛び跳ねてマイク剣で斬りつける技とか必要かなあ......? 」
ちゃっかり新技の構想も練るザジ。
二依子色に染まりすぎである。
その日、ザジは予定の打ち合わせを終えて、キャンパー面子が集まる投資会社に向かっていた......
ふと、道行く亡霊の往来をみる
「街の亡霊の密度が増えてる......ディルムンの参加者が増えてるのか」
地下帝国の大通り、ディルムン参加の沢山の亡霊が通る。
サイズもバラバラで、姿も歪(いびつ)。
そんな地下帝国の亡霊の移動の流れに、一際目立つのが≪霊体投影ボディ≫の存在だが......
「 !!? 」
その時、ザジの近くを通りすぎる。
視界に入ったその霊体投影ボディは、忘れもしない"あの顔"のボディだった。
「え......」
「何で......」
それは......忘れもしないあの顔。
「久遠坂......シラ!! 」
その顔は、あの戦いで成層圏に消えた天国教団のリーダー。
久遠坂シラそのものだったのだ。
「霊体が消えてなかったのか......でも」
「アイツ! こんな所で遭遇するなんて何か企んでいるのか?!! 」
ザジは亡霊の人混みを掻き分けて、シラを追いかける。
「待て!! 」
シラは街の奥へと歩み進める。
ザジは急いで追跡を開始する。
(......)
何も言わないシラの姿をした霊体投影ボディは、ゆっくり何処かに歩みを進めていった。
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再び、舞台はユナと未来のユナが邂逅する儀式の場所に。
水の塊のユナは未来のある"出来事"を語る。
その"出来事"とは......
「ついに確認されたの......戦地に投入されたファントムドローンが、射撃斬撃、打撃以外の行動をするのが......」
「ブロックの様なパーツで装甲防御を行ったり、合体による霊力の補助を行ったり......激しい戦術スキルを行うの」
水の塊のユナが語る未来のファントムドローンの行動は、ユナ達にはあってはならぬ行動だ......そう。
「つまり......未来のファントムドローン兵器に......」
「キャンパーのみんなの ≪ハイファントムスキル≫ が......コピーされて性能のアップデートに組み込まれてる!! 」
ユナは声を大にして確信に至る。
あのファントムドローンが集団で、ザジ達のようなハイファントムスキルを使う様になるとどうなるか......
想像が付く......だがそれは相手をした場合、自分達ではもう手に終えない強さ。
そんなものが沢山使われる未来の兵器の世界。
巨大霊体との戦いでファントムドローンに攻撃されて、血まみれの陰陽師達を目の当たりにした事を思い出し、決意する。
「これは阻止しよう、未来霊を倒そう! 」
「亡霊達のスキルは人を傷付けられない、生きてる人間に危害を加えない事は......彼らが寧(むし)ろ誇りに思う位なのに、それを兵器に採用するとか言語道断だよ! 」
水の塊のユナはその言葉を聞くと、未来霊の今回のイベントでの未来霊対策の詳細を語りだした。
「まず......フォッカーさんは隔離、カンチョウも裏方から出てこない様に、ねぱたさんは未来霊との接触を出来るだけ回避」
「パルドさんやドクは現状待機、そしてラマーさんはFXの今夜のポジションを一つも取らせない事......またダマシに会って資産を溶かすわ」
(さらっとラマーさんをディスってる!? )
ユナの未来を超えた突っ込みが入る。
水の塊のユナによる対策が提案される、だがあまり時間がないのか簡略的な対応策しか出てこない。
「フォッカーを使って奴らを誘き出す様な事はしないで、未来霊も馬鹿じゃないの」
「≪スキル狩り≫をしに行く時点で相当強力な戦闘能力を有している筈よ......」
形成している水の塊が揺らぐ。
すると水の塊のユナはゆっくり形が崩れだしてきた。
「 !! 」
ユナが慌てる、もっと聞きたい事が沢山有るのだ。
「待って、まだ崩れないで!! 」
「......時間切れね、でも機会がない訳じゃないわ、次の新月まで術が使用出来ないから、会えない訳じゃない......だけど」
水の塊のユナの言葉に紀伊ママが察する。
「そうね......次に会うなら、ディルムンが終わってしまった後ね」
つまり......これだけの情報と対策で、未来霊を撃破しなければならないのである。
「あっ......まだザジ君をどうさせるか決まってない! ザジ君のスキルもかなりヤバイ筈だよ! 」
ユナがそう言った瞬間......水の塊のユナは何か反応を見せた!
「ザジ君......?」
「ザジ君ですって?! 」
それは明らかに動揺の声だ!
未来を知るユナがザジの存在に驚いている!
ユナは困惑する。
(......?)
水の塊のユナは急にユナにしがみついた!
「うわっ!? 何? どうしたの? 」
驚くユナ、水の塊のユナは崩れる体を気にもせず、崩れる手をユナから離した後、その場で立ちすくす。
「ザジ君が......消えてない!? 」
水の塊のユナは崩れる間際まで来ている。
そしてこう言った。
「ザジ君は......久遠坂シラと"相討ち"になった筈よ......」
「えっ......」
その言葉に驚くユナ。
その言葉が示す事......
水の塊のユナは言う。
「私の知る過去と時間軸が変わっている!! 」
それは世界改変の始まりを意味する......
想定を超えた結果だったのである。
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