第147話「ポゼ部再び」


 紀伊に連れられるユナだが、ここで驚くべき状況を目の当たりにする。

 

 ......紀伊にはボディが無いのだ。

 

 「えええ!!? 式神だからボディが不要なの? 便利!! 」

 

 紀伊はユナにその事を突っ込まれるが、毅然と振る舞ってこう言った。

 

 「便利なわけないのです、この分霊は分け札で作った分、脆いのですよ、プラモやヌイグルミのボディの方がよっぽど頑丈なのです」

 

 「え? 頑丈ならボディに入らないの? 」

 

 ユナは即答で言葉を返す、以下にもその通りの事だが。

 

 「分霊にはボディを動かせる程の霊力がないのです、そしてダメージを受けたら即消えるのですよ、そして霊力が本体に戻るだけです」

 「だがその気になれば、貴女の様に分霊の札を専用のボディに入れられる様に調整出来るわけですが、かなりの反動を受ける無茶(リスク)があるのでやりません」

 

 「えっ......」

 

 リスク......つまりダメージ的なモノがあるという事にユナは驚きの顔をする。

 身近に当たり前の様に存在した、式神プラモを見ただけにショックを受けた様だ。

 

 「ノーリスクでやるには陰陽師の業が必要なのです、そんな技術は今は失われてるはずなのです」

 

 「 ?! 」

 

 紀伊の話を聞くと、ユナは陰陽師の頭目さんの事を思い出した。

 

 「知り合いの陰陽師さんはその"失われた技術"っぽい方法で、プラモに式神を入れて戦ってるんだけど......」

 

 ユナの頭目さん情報に紀伊は何やら驚いている様子。

 だがちょっと呆れて憤慨しながら言い返してきた。

 

 「何と! 基本的式神権利の侵害なのです! ソイツに出会ったら率いてる式神に式神人権主張させて、ストライキを起こさせてやるのですよ! 」

 

 やはりプラモに式神を突っ込む事は良くないらしい、頭目はわざわざ失われた業まで掘り起こしてまで、憑依プラモバトルに勝ちたかったのである。

 

 (ああ......頭目さんが勝手に蔵から持ち出したモノが、また知らない所で彼女の首を絞める結果になるのね......)

 

 ユナはしみじみと人の業という、この世の真理を感じらざる終えないのであった。

 

 

 ******

 

 場所は変わり、ここはポゼッションバトル運営会社、パルド・ワーカー社のオフィス。

 この会議室に何故か女子高生が三人。

 ポゼ部の三人が居るのである。

 

 「ダニエルさん今日は一体何の用事ですか?」

 

 二依子が質問する、彼女達の前にはパルドワーカー社CEOダニエルが、何やら複雑な表情でポゼ部三人に語り出す。

 

 「わざわざ集まってすまない、今日はとある"お願い"をするためだ」

 

 「ダニエルさんが私達にお願いって......? 」

 

 ポゼ部三人が目を丸くして考え込む、大手ポゼッションバトルの運営チーム代表でありCEOの彼がプレイヤーである彼女達にするお願いとは......

 

 「是非ともあの"ディルムン"の参加報告レポートを作って欲しいのだ! 君たちが参加するのはカンチョウ筋から聞いている! 」

 

 二依子が以下にも「そう来たか」という顔で迎える。

 確かにポゼッションバトルの関連企業としては、とんでもない一大イベントゲームだろう。

 

 「ジオラマティックMMOバトルゲーム"ディルムン"! ゲーム内容はオープンシームレスフィールドの対戦型バトルタイムアタック、誰かがラスボスを倒してワンシーズン終了のルール」

 

 「プレイヤーはボディを三つまで登録し、以下に次のボディに霊力を注ぎ込めるかが重要な鍵になる、それ次第では亡霊も上回る霊力を持つことも可能なゲームシステム! 」

 

 「正に我々の先をいく新時代エンターテイメントだ! 是非とも映像とレポートを要求したい、バイト代なら弾むぞ! 勝つなら支援を惜しまない! 」

 

 熱弁を振るうダニエル、忙しく動くスタッフ達の中で浮いて見える。

 ちょっと恥ずかしくなったのか咳を置いて、仕事の話をしてくる。

 

 「オホン、まあ我々も参加したいがこの通り次回のアップデートに忙しくてな、あの大会で優勝したポゼ部の面々には一心の期待を乗せて参加してもらいたい......以上だ! 」

 

 二依子が眉間を押さえて呆れて語る。

 

 「わかりました、資金提供があるなら引き受けましょう、まあ私は別にザジ君に会えれば何でもいいけど......」

 

 また何かボディを作ったのか嬉しそうな顔をする二依子。

 菊名と愛華はバイト代が出ることに喜んでるようだ。

 

 「羨ましいなあああ、私もそんな面白いこと参加したいいい! 」

 

 ダニエルの悔しさに溢れる声がオフィスに響き渡った。

 ......が秘書に引きずられてデスクに向かって行った。

 

 「大変ですねー、ポゼッションバトルの再開も近いから追い込みで動けないんですよね......」

 

 前回の事件の関係で、暫く調査が入っていた為、バトル中継が出来なかった愛華がしんみりして語る、そこに菊名が合いの手を入れる。

 

 「バトルの停止から一週間、次回再開の目処が立ったからここの運営も必死で作業してるんだよ」

 「今は二依子センパイも憑依アプリ使えるから大分戦力が安定してるし、バトル前にディルムンで軽く楽しもうよ」

 

 そう言う菊名が二依子に話題を振って見たが、肝心の二依子はと言うと......

 

 「ザジ君の次のボディはフリフリのスカートで決まりね! アイドル衣装をCADで出力しないと......」

 

 完全に別の世界にトリップしていたのである。

 呆れた菊名は言う......

 

 「もうセンパイには何も聞こえていないわ、ディルムンにアイドル誕生させる事を夢見てるかも......」

 

 二依子Pによるザジ君プロデュースは始まったばかりだ。

 

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