第144話「鉄則二十八負けFX」

(此処から先はあくまでメチャクチャフィクションです、実際の相場ではこんな風に動いたりするかも知れませんが、それを認識したり判断するような事はあり得ません……順張り以外は)


 「ラマー君、DX(米ドル指数)はどうだ? 動きはあるかね? 」

 

 カンチョウの問いかけにラマーが確認すると、予想どうりドルが激しく動いている。

 ラマーが驚きの声をあげる。

 

 「動いてる、まさか......アメリカから大きな霊力の売却が発生しているのだというのか! 信じられない! 」

 

 「可能性があるならドル上げ要因としてかなりの霊力の保有をしていたと思われる、石油や金の売りとかでは他の通貨と競合になるから......」

 

 ラマーの驚きにカンチョウが呟く。

 近年よく聞くだろう、ワクチンを製造販売するためにドル高を保持する為、金等の先物を売りドルに変えている大口ファンドの流れ。

 だが高値の金は通過価値すべてに関わる要因なため、再び金の値段を取り戻そうと言う他の通貨が競合を始める。

 

 金をドルに変え高値を確保すると、自動売買でユーロやポンドが買われてドルが売られ。

 再び金が買われて値段が上がるのである、結果的にドル下げが起こりドル高政策の効果が薄いと言う訳である。

 ラマーがカンチョウに問う。

 

 「金売りでのドル上げは結果的に、ドルの基盤の弱さも相まって伸び悩むから、霊力の売りを行う為に国中から買い込んだと!? 」

 

 「可能性はある、そうなると我々亡霊は束になっても勝てず、値段が上がることはない......ラマー君、ポジションを切ろうそうしよ......」

 

 カンチョウがラマーに指示をしたその瞬間!

 

 市場の下落を示す!

 

 超長い!

 黒いローソク足が駆け下がる! (ズギャアアアン)

 

 「うわあああああああああああああああ! (超悲鳴)」

 「ぎゃあああああああああああああ (トラウマ)」

 

 カンチョウとラマーがポジションを切る頃にはたっぷり運営資金を噛られる始末。

 

 「リスクリワードを大きく見積もり、ロスカットに余裕持たせてた分、決済まで行かずに反転し損益が三割......痛い」

 

 ここで一旦手を引けば良いと誰でも思うだろう。

 だがこう言う時に起こる病気がある......ポジポジ病だ。

 

 それは正にすぐにでも損益を取り戻そうと躍起になって、果てしなくポジションを取ろうとする行動。

 

 「また大幅な下降トレンドだ、サポートライン(直近の安値)を抜けるぞ! 次の暴落が来る! 押し目売りを狙え! 」

 

 「「エントリーだ!! 」」

 

 テクニカル(相場分析)的に見出だした暴落の兆し、正に必勝の型!

 うん、こんなの見せられたらエントリーしちゃう、普通なら見逃しちゃうね。

 でも実際昨今の相場は見逃した方が良かったりもする。

 つまり。

 

 「なんで反転しちゃうかなああ!! (更に三割削られる)」

 

 ラマーが嘆く、やはり現金が関わって来ると、人は叫ばざる終えない。

 相場は急上昇。

 それはもう売りエントリーしたカンチョウ達を嘲笑うかのように高値を付けていく。

 

 「くそ! ......だがドル高、霊力売りの動きが無くなったのか? そもそも何故アメリカで霊力の取引があるのかね? 」

 

 カンチョウの疑問は絶えない。

 傍観していたパルドが見解を述べる。

 

 「俺のオリジナルボディって基板じゃない? 製造元もアメリカで、亡霊の研究施設があると見て良い」

 「俺のオリジナルボディのコアチップは人間との融合的な霊糸が埋め込まれてるから、人間の脳にでも埋め込んでたンじゃね?」

 

 「「 さらっと怖いこと言わないで頂きたい!? 」」

 

 パルドの見解にカンチョウが突っ込む。

 

 「それなら死んでからすぐに亡霊になれるね(アメリカンファントムジョーク)」

 

 ラマーも非人道的な話に呆れて言葉を返し。

 そしてポジションを切る。

 

 「リミット前に反転とは、これまた盛大に資金が噛られたな......」

 

 この状況でロットを下げて、チマチマ稼ごうと思う人が要るとしたなら天才である。

 現実はポジポジ病が悪化しただけで、このやり取りは数時間にも及び。

 口座は見るも無惨な損益額を計上していた。

 カンチョウは神妙な顔で言う。

 

 「完全に相場にもてあそばれている......ラマー君、オシレーターやインジケータの動きで、次の波が予測出来るかね? 」

 

 「正直、最高値を更新するより反転して売りになる可能性が高いと思われます......日足で見るなら200MAライン(移動平均線)にぶつかり、またドル高の肥やしになるとすれば売りですね」

 

 ラマーの分析は過去と現在を見ている、オシレーターで買われ過ぎや売られ過ぎを把握していた。

 だが未来は見えないのもまた、テクニカル分析の欠点である。

 カンチョウの決断は......。

 

 「売りだ!! 200MAの相場の反転に会わせろ、もうロットは高く張って損益額を取り戻そう」

 

 ポジポジ病にヤケクソが重なり最強に嫌な予感しかない。

 

 数時間後、相場は再び急上昇した!!

 

 「「なんでだあああああ!! 」」

 

 カンチョウの絶望の悲鳴が轟く、同時に顔が......

 

 以下にも"FXで溶かした顔"に変わった(デローン! )。

 

 「こ......これはまさか、ビットコインの暴落が始まっている、ビットコイン売り、霊力買いに走るだと......おのれ!! ビットコ勢(ぜい)!! 」

 

 ここにおいてビットコイン勢参戦! (スマ◯ラ風)である。

 ラマーが嘆く。

 

 「まさかドル高霊力売りは最初だけで、ドルの動きは全部フェイクだったとは......ガクッ(デローン! )」

 

 そしてラマーもFXで溶かした顔になってしまった。

 

 そんな二人に"ある幻"が現れ言う......

 

 「どうもビットコインの精霊です! 今回霊力さん買わせて頂きました」

 「「 同じスカスカ通貨同士仲良くしましょ!! 」」

 

 「「ふざけんなー! 」」

 

 カンチョウとラマーが誰も居ない中空に向かって叫ぶ姿に、パルドが困惑していた。

 

 「一体何と戦っているんだ!? 」

 

 ******

 

 「ただいまー、アレ? カンチョウさん? ラマーさん? 」

 「......何があったの? 」

 

 ユナが驚愕する。

 ザジ達も帰還したが二人の様子に困惑している。

 よくわかってない顔のねぱたが、二人にある報告をする。

 

 「せや! 二人に朗報や! さっき陰陽師の頭目さんか、そんな感じの人が連絡してきてな......」

 「「キャンパーの修理代出してくれるって! 良かったやん! 」」

 

 この会話の後、カンチョウとラマーの顔はみるみる戻っていった。

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