第139話「地下帝国買い出し紀行、熱闘編」
「わざわざそのボディ持ち出してよう来るわ......」
ねぱたのハードなツッコミを受けたフォッカーだが、ひゅるりと立ち上がり土下座して言う......
「おいどんも買い出しに、ついて行きとうございます......」
へりくだったフォッカーの姿勢は、正に大名行列に道を開ける平民の如く潔かった。
「はじめからそう言い、コテコテのナンパ師になってまで懇願されたら、ユナちゃんが笑い倒れるわ......」
後ろのユナは、笑いすぎて起き上がれそうにない。
「それ......そのリムジン......よしこさんが付き合わされてる! 酷い......」
ユナの指摘に従い、リムジンのミニチュアからよしこの霊体が顔を出して来た。
「いい加減ツッコミ不在もキツイから、今のでスッキリしたワン」
よしこリムジンは何気に軍用トラックであるハマーを思わせる大型六輪車両、内部サイズもしっかりしていて人形が乗り込めるサイズを確保していた。
「どこでこんなリムジンを? 誰かの私物ですか? 」
「コイツは俺がこの街でしばらく厄介になってた時の相棒だ、この街は住民のサイズが不安定だからな、長いリムジンタイプがよく走ってるんだぜ」
ユナの質問に答えるフォッカー。
そして執事の様に手を広げ、高らかに誘う。
「さあお嬢様方、御車の準備が出来ております」
執事フォッカーに言われて、ねぱたとユナはよしこリムジンに乗る。
「よしこ、お邪魔するで」
「よしこさん、お邪魔します」
よしこリムジンは二人を乗せて走り出す。
ユナのヌイグルミサイズも今のねぱたのボディも、窮屈を感じない内装である。
「凄い、思ってたより広い......」
ユナはリムジンの内装に感心していて、外の様子を見渡せる視界を確保した窓を眺める。
周囲の車両もトラックやら架空の戦車、四足ロボット等、道路は混沌と化している。
「びっくりするくらい広い街ですね、学校の校庭も目じゃない位広い......」
地下帝国は大きな造船所がベースである、人間サイズで言えば小さな港ほどの広さはあり得る。
ここでフォッカーが語る。
「細長く広い船みたいな構造をしていてな、住宅街と施設フロアと地下帝国本部との三層構造になってるんだ」
「そりゃ、まあアンタは住んでた訳やし、詳しくて当たり前やな」
ねぱたのツッコミ、フォッカーは鼻で笑って皮肉(ソレ)を一蹴すると、親指を立ててどや顔で言う。
「買い出し(ショッピング)ならいい場所(スポット)を知ってるぜ!! 楽しみにしとけよ! 」
こうして、フォッカーとよしこのハマーリムジンに乗って、ユナとねぱたは地下帝国高速道路を走っていった。
******
場所は変わって、ここは地下帝国のプラモデル屋。
ジャンボサイズのロボットプラモデルが目印の大型マーケットである。
ザジはガールプラモデル、ドクは運搬車(人型に変形可能)に憑依、荷台を牽引しながら内部に入った。
「運搬車と荷台が丸ごと入れるのか......凄い広さだ」
各スペースに見られるプラモデルやフィギュアの箱、試憑依室等が充実しており。
亡霊ライフをサポートする最善の施設だと思われる。
ドクは周囲のプラモデルのラインナップを見ながらザジに問いかける。
「ザジ......どうだ、良いのは在りそうか? 」
「最近のプラモデルって出来が凄いからベースにするには、これ以上良いものは無いんだけど......」
プラモデルの箱を眺めるザジ、自信のオリジナルボディに近い見た目のプラモデルを探している。
ふとここで飾られてるショーケースに目が行く。
そこに飾られているのは......
「あれ......これって? 」
そこにあったのは、ザジのオリジナルボディと同じ形状のプラモデル。
「間違いない、俺のオリジナルボディのあのプラモデルだ......若干形が違う、何これ? 」
ショーケースに張り付くザジ、そこに店の店主がやって来る。
以下にも量産型というプラモデルのボディの店主、量産型が好きすぎる外見のこだわりが感じられる。
「最近良くあるだろ? 再販や続編の代わりに、プラモデルだけを扱った新シリーズとか......」
「これもそういうモノで、過去のキットを作り直して、プラモデル作品が主流のストーリーに登場させて新たなファンを獲得したって奴さ」
それを聞いたザジは、マジマジとボディの形状を観察する。
追加パーツと顔の形や色が違うが、間違いなくザジのオリジナルボディのプラモデルと同じ品である。
「うん......決めた! これにしよう、成型色が安っぽいけど......なんとかなるだろ」
ドクはザジの選んだプラモデルのボディを運び込む作業を行う為に、荷台に乗せる作業に集中する。
店の奥で店員に支払いを済ませる為に、内部の事務所に向かった。
「まいどあり、君は地下帝国外から来たんだね......このプラモデルをそこまで気にかける亡霊はここには居ないから、すぐわかったよ」
「ついでにここの名物である霊糸ボディ型バトルシュミレーターも見ていきな!」
気さくにザジに話しかける店主が、壁にあるスイッチを操作すると"奥に続く扉"が開いた。
ここから先は会員制及び登録者制らしく、ザジを気に入った店主は特別に招待をしたようだ。
「バトルシュミレーター!! 」
「地下帝国の闘技場ってフォッカーから聞いてたけど凄い施設だって話だぞ、余所者の俺が使って良いの? 」
その話を聞いてザジが驚く、どうやら亡霊界隈では有名なバトルスポットらしい、わざわざ遠方からやって来る者も居るとか......そして店主は言う。
「いいや君だから誘ったんだよ、君は" 有 名 人 "だからね! 」
「 ? 」
いまいち話が飲み込めないザジ......
だがシュミレーターに対する興味は薄れず、扉の奥に歩みを進めた......
そう、その先にある光景は正に地獄。
そしてその光景は、容赦なくザジに襲い掛かるのである!
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