第138話「地下帝国買い出し紀行、真理拳」
車用道路をキャンパーは進む、前方に見えるのはキャンパーの修理を請け負う地下帝国車両修理工場である。
「オーライ・オーライ......ストップ! 」
キャンパーはそのまま工場に停泊、ミニチュアの工場なので造船所さながら内装の修理工場に入った。
キャンパーの周囲に亡霊達の修理工が集まる。
ドクと同じ様な工作に特化した亡霊達だ。
「屋根は派手に壊れちまってるなあ、幸いフレームやエンジン、トランスミッションは大したダメージを受けてねえ」
「修理プランの通りに直すには一月かかるぞ、それでいいならここに署名をよろしく」
修理工場の工場長らしき亡霊がプラモデルのボディで出迎えると、背負った時計サイズのタブレットを差し出す。
キャンパーの代表、カンチョウの署名が入ると......
キャンパー側面からレストルームが全室外され、机の引き出しのようにキャンパーから取り出さる。
「よし、乗せてくれ! 」
クレーンに吊るされるレストルーム。
全て台車に乗せられると、パルドのオリジナルボディである調査ロボットのキャタピラ部分に牽引され、地下帝国の片隅の土地に運び込まれる......
入居予定の骨組みビルに到着。
全員の助力でレストルームを横に差し入れる様に設置した時点で、そこは彼等クルー達の新会社に変貌した。
「レストルームをそのまま会社の建物として活用出来るんですね、凄い仕掛けです」
ユナがレストルームの仕様に感心する、この土地でも変わらず使えるのはドクの設計である。
「じゃあウチらは買い物に出るで、ユナちゃん一緒に行こか」
「はい! ねぱたさん何だか嬉しそうですね」
ユナとねぱたは街に繰り出す様だ。
「当たり前やん、初めてこのボディ見たときは気持ち悪いって思ってたけど、使ってみたら中々楽しいんや」
霊体投影ボディのねぱたは、とても上機嫌である。
投影された服装もラフなシャツとピッチリのジーンズというパンツスタイル、長い髪をポニーテールでまとめている。
普段は特撮フィギュアの後ろで背後霊の様な状態の為、余り服装が見えにくかったが、元々そう言う格好だったようだ。
「ザジはどうする? 」
ねぱたはザジについてくるか聞いてみたが......
ザジは首を横に振って答える。
「俺はドクに代えのボディ貰って今のオリジナルボディを修繕してもらうよ、そのついでに......プラモデル屋に行こうと思う」
そのザジの答えにユナが聞き返す。
「有るの? この場所に......」
「有名なボディ屋が有るって聞いたんだ、通販も兼ねる所で悪質な背取り業者からプラモデルを買い取っては、ここで販売しているらしい......」
ザジは答える。
ガン○ラせどりダメ絶対。
「二依子にさっき連絡取れて、この話を切り出してみたんだ......そしたらすぐに調査して欲しいって」
「ははは......二依子ちゃんらしい......」
ザジの話を聞き、ドクがそう言うと牽引するパーツを取り出す......
「準備出来たぞザジ、いくら何でも一人で行くには運び込むのに苦労するだろ」
ボディの入荷にドクもついていく様だ。
カンチョウがここで今後の行動方針を語る。
「ではユナ君とねぱた君は買い出しを頼もう、ザジ君とドクはボディ屋で、ついでに私のブロックの発注も頼む」
「残りは例の霊力のトレンド相場監視とテクニカル分析を始める、くれぐれも羽目を外しすぎない様に! 」
「「 了解!! 」」
クルーそれぞれが目的の為に行動を開始した。
「ザジ、新たに倉庫からボディを出してきている、今のオリジナルボディを抜けてコレに憑いてくれ」
ここでドクが出してきた新たなボディ......
それは......
「今度はメカクレ女子だ、流行に乗って制作しておいた"とっておき"だ」
「いや......あの、もっとその......手心というか、もしかしてドク、二依子の制作ボディに影響受けてない!? 」
ザジの突っ込みは虚しく、そのスク水メカクレガールプラモデルボディに憑かなければならないザジに......
拒否する選択肢は無かった。
「......(絶対、二依子に見せられない)」
絶望するザジ、だがその姿の画像は後にユナによって身内SNSに晒され無事に赤面爆死する運命が待っているのだ!
******
時間が進み、ここは地下帝国のメインストリート。
たくさんのボディ、亡霊が歩き談笑しながらショッピングや観光を楽しむ場所である。
その街道を歩くのは、ねぱたとユナだ。
彼女達は買い出しの為にデパートのある大通りを歩く。
「(凄い......道行く人がねぱたさんを見ている、超目立ってる)」
ヌイグルミボディのユナは周囲に気を配る、街に来てすぐの新参者が目立つ様な状況。
何かしら「フラグ」が立つに違いない。
そう警戒するユナだったが、ねぱたは変わらず上機嫌だ。
「なんや? ユナちゃん、そんな警戒せんでも、この街は警察要るんやから、揉め事起こす奴はあんまりおらんで」
「いざとなったらウチがブン殴ってやっつけるし......」
ユナの心配はそうではない、ねぱたの容姿を改めて確認して思う事は一つあったのである。
(ねぱたさんが美人過ぎる)
やはり容姿が問題なのだ。
ねぱたは気にしてはいない様子だが、ユナはここで"すり寄る虫"が現れる可能性を見逃す事は出来ない!
その亡霊(虫)はやってくる!
「HEY! そこの美人でキュートな彼女! 」
「この俺のささやかなお誘いに、耳を傾けて欲しい! 」
そう......現れたのだ!
同じ様な霊体投影ボディを持つ輩(オトコ)が!
コテコテのタキシードを投影ボディに写し、ミニチュアの花束を抱え......
前髪をたくしあげる仕草と、ミニチュアのリムジンを道路に横付け。
「今日この場所に君と巡り合わせる、運命のアリアンロッドに感謝するよ! 」
そしてこのまま高級レストルームで二人っきりになる為の準備をした。
男という名の狼が......やって来たのだ!
「今夜は俺以外の狼が、君を独占するのを禁止するのさ!! (きらーん)」
「まあ......素晴らしい......」
ねぱたはその狼(オトコ)の花束(ミニチュア)を受けとると、微笑みを掲げてオトコの側に寄り添う。
「夜景の見えるホテルと、一夜のランデブーが君をありのままの姿に変える、君は魔法を掛けられた夜のシンデレラさ! 」
酷い......これはあまりにも酷い!
臭すぎる文言がユナを襲い、悶絶しながらもツッコミを押し殺している!
「今夜君の魔法は十二時になっても解けないよ、何故かって?(一人ツッコミ)」
「それは十二時になる前に俺が君を独占するからさ!! (ワオーーン) 」
対するねぱたは頬を赤らめて、喜びと共にオトコの手を取り握り締めると......
「私、貴方の様な素敵な王子さまが現れるのを待っておりましたわ! ......」
「「 って!! フ ォ ッ カ ー やないかいいいいいい!!! (ボコォ!!) 」」
繰り出される純然たる物理(ファントムスマッシュ)
激しく縦回転したフォッカーは、大の字になって壁にめり込んだ。
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