第137話「そうだ......地下帝国に行こう」


 そして場面は山間のトンネル。

 そう......地下帝国の入り口だ。

 

 怪しい幽霊トンネルを偽装した入り口は、外部からの侵入(人間)をシャットアウト。

 しかしコネクションやネットワークは人間に対しても健在であり、多くの資産を保有している亡霊大国である。

 「亡霊からの融資を得た」等と言う人間の企業もこの社会では存在しており、亡霊達の為替や株式も成り立っている。

 本当に幽霊会社というジョークもここでは日常化されていた。

 

 「こちら"希望の方舟号"再度入国を要請する! 」

 

 カンチョウの要請が届き受理される......厳しい検問が再び行われる筈だが。

 ザジ達のキャンパーが検問に差し掛かる、だがあっさりと内部に通された......

 

 「 !? 」

 

 検問を警戒していたキャンパークルー達の疑問の声が囁く、だがそうこうしている内にキャンパーは通路を進み、外には地下帝国の主要都市の全容が見えて来た。

 ユナはヌイグルミのクマから霊体が乗り出す勢いで眺めている。

 

 「凄い......ミニチュアの街があんなに沢山広く並んでる、それに......あちこちにパイプみたいなのが見える......」

 

 ここで、ねぱたが街の解説を挟む。

 

 「霊力のパイプや、ここの住民はな、オリジナルボディを銀行みたいな所に預けて担保にしてる亡霊が多いねん」

 「オリジナルボディは常に霊力を出してるから、永住権と共に街の礎になってるんや、別に強制はされへんけどな」

 

 ねぱたの説明を聞いたユナは驚く、亡霊社会の共存関係が産み出したとも言える地下帝国の環境は、彼女にとって新鮮な事ばかりである。

 

 「あれ......街を歩く亡霊達が......」

 

 街を眺めるユナ、その視界にある光景が写る。

 

 「 ! 」

 

 「どうしてあの姿の人達が居るんですか?! 」

 

 ユナの問いかけを聞き、ザジやねぱたも驚愕する、フォッカーやパルドもキャンパーから身を乗りだし「その姿」を見ていた。

 それは......

 

 前回の戦いで、シラ達教団亡霊が使っていた「亡霊の姿を写し出すボディ」である。

 街中を堂々歩く姿は特別で、他のプラモデルや可動フィギュアに混じって居る姿は異質であった。

 カンチョウはその驚くザジ達に、知っているのか説明をする。

 

 「ああ......みんなもしかして初めて見るかもしれんな、最近の地下帝国で流行のボディらしい......生前の姿を再現してくれるだけじゃなく、カスタムされた姿にもなれるブランドボディだそうだ」

 

 ザジ達が説明する、自分達が戦った亡霊教団「天国教団」も同じ様なボディを使っていた事を......

 カンチョウはそれを聞くと、ボディの流行は最近のモノだと教えてくれた。

 

 「ボディの製造元はこの地下帝国の会社だ、誰かに製造方法を教えてもらい権利を獲得したらしい......」

 

 「アイツら、ここにも来ていたのか......」

 

 フォッカーが言うとザジは見上げて彼ら天国教団の事を思い出す。

 激しい戦いの後、彼らがどうなったか知る由もなかった。

 

 「お前ら! ちょっと来てくれ、これを見て欲しい」

 

 キャンパーの修理や片付けをしていた、ドクとラマーがザジ達を呼ぶ。

 呼ばれたのはキャンパーの甲板、そこには鳥の巨大霊体の体内に取り込まれた機械や部品が積み上げられていた。

 その中でも一際目立つ箱の様な部品、何かを格納していたのか備品コンテナの様な大きなパーツがあった。

 

 「あの巨大霊体の体の一部か、キャンパー内に残ってたんだ......」

 

 ザジはマジマジと見回している、コンテナ以外は余り使えるものが少なく、スクラップ同然の様だ。

 

 「よし、コンテナを開けるぞ......」

 

 ドクが取り出したミニチュアのグラインダー、これはファントムスラッシュの応用で硬いものでも斬る万能加工道具である。

 側面からコンテナを壊して中身を確認する、すると意外なモノが出て来た。

 

 「 ! 」

 

 ......例の霊体投影ボディである。

 天国教団の使われなかったボディが発掘されたのだ、彼等が使用しなかった男女の一組のボディで、調整すればザジ達でも扱えるようだ。

 

 「こっちは形状的にウチが使うってことでよろしく、この中では女性はユナちゃんとウチしか使わんし、ユナちゃんは札の制限有るからな」

 

 そう言うとねぱたは特撮フィギュアから抜け出て、霊体投影ボディ(女性型)に入る準備の為、レストルームに入った。

 しばらくして......

 

 「おおおおお!! なんやこれ! 」

 

 ねぱたがレストルームから飛び出して驚く、その姿はまさに生前の姿に近く小人や妖精にも見えた。

 

 「ザジ! ちょっと手を取ってみ? (ハイタッチ)」

 「な! ホンマにこれ凄いやろ! 生きてる時に近い感触が帰ってきてるで! 面白いわー! 」

 

 「......!! 」

 

 ザジはプラモデルボディから伝わって来る手の感触に戸惑う、まさに人肌に触れた様な柔らかさを亡霊で感じとるとか......

 動揺する心を抑えていた。

 

 「凄い......体温を感じる位よく出来てる」

 

 「マジか」

 

 ザジの率直な感想にフォッカーを始めキャンパークルーが驚きを見せた。

 

 「ええなあ、よっしゃ! これで街に行くで、ユナちゃん一緒に行こ」

 

 「はい! 楽しそうですね」

 

 ねぱたはユナを連れて外に出掛ける準備をする、それを見ていたフォッカーは考えていた。

 

 「あー、コホン......フォッカー君、これでナンパに行こうとか思わないように! 」

 

 「ちぇ! バレテーラ」

 

 フォッカーの内心は、カンチョウに見透かされて居たようだ。

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