第114話「救いの天使(クマ)......そして」
「そんな、あのクマの娘は一体何なんだ！ 以前に現れた時は憑依体(プレイヤー)レベルの霊力しかなかった筈なのに！......」
「上がる！ 霊力値が上がっていく！！ 」
舟の霊体内で教団亡霊の驚愕の声が聞こえた、イーブンやベーコンといった舟の霊体の制御を行っていた彼らや。
内部でアンテナの展開を操作していたキョウシロウ......
そして実は、もう一人隠れていた別の教団亡霊の一人も......
その様子に戸惑っていたのだ。
「なんてこった......この場にいる霊体で消耗したシラやザジ達を超えた......」
「 最大の霊力値だ！！ 」
サーバー内部でユナのハイパワー霊力(主に札から出ている霊力)に、教団亡霊達が恐れおののくと......
アンテナへの攻撃を妨害するために、ユナに対し対空放火を慣行する。
「プラズマレーザーをシラのコントロールから切り離せ！ 対空攻撃！ 撃ち落とせ！ 」
シラのコントロールを奪ったキョウシロウが対空を攻撃する。
プラズマレーザーが解放されるが、シラから離れたせいか効果が著しく弱体化している。
「そんな程度じゃクマも焼けませええんッ！ 」
ユナのバリアがプラズマレーザーを弾き、そのまま突撃。
一直線に二依子の霊体の入った真空管(アンテナ)を目指す！
「今！ 必殺のおおお！ 超(ハイスピリット)！ 熊手！ スピイイイイイイイン！！ 」
ヌイグルミ(？)の右の熊手から飛び出した熊手ソードを中心に、まるでドリルの様に回転するユナの必殺技が繰り出される！
「ぶち抜けええええ！ 」
もはやヒロインとは何か？ と問いただしたくなる様な、≪熱血≫と≪必中≫が乗った突撃は......
アンテナのバリアに接触！
そして実は≪貫通≫の乗ってましたと言わんばかりに、バリアを掘り進んで......
......今。
アンテナの先の真空管に突き刺さったのである！
「迎えにきたよおおお！、二依子ちゃん！ 」
割れた真空管に突っ込んだ右手を揺らして、二依子の圧縮されて魂に近い球状の霊体を掴み取ると......
「ゲットだぜええ！ 」
またもやヒロインらしからぬ、台詞と共に引き！
掴み取った二依子の球状の霊体を、天高く掲げる！
「って......あれ？ 二依子ちゃんの霊体が徐々に人の形に......」
真空管から解き放たれた二依子の霊体は、ゆっくりと、ユナと同じサイズの人の形に戻っていく......
「ユナ！ 早くこっちに持ってきて！ 彦名札を使う！ 」
ザジがユナを呼び寄せる、そう......遂に二依子の救出が完了する時が来た。
慌ててザジの元にかけよるユナ、ザジが彦名札を起動させるためバックパックを外して展開、取り出そうとしている。
「ザジくーん！ 札はよ！ 早う札出して！ ってあああ！ 二依子ちゃん、今すっぽんぽんはダメよ！ レーディングに引っ掛かっちゃう！ 」
ザジのバックパックから飛び出した彦名札、二依子の霊体に反応すると、吸い寄せて取り込む。
......そして
二依子の霊体は彦名札に無事に定着、後は肉体への回帰を待つだけである。
「......ザジ君......」
霊体から二依子の声が聞こえる、ユナとザジは涙ぐんで再開の喜び、フォッカーと飛行船のパルドは安堵のため息を着いた。
「ザジ君......ユナちゃん......私、ずっと見てたよ、みんなが戦ってるのをあのアンテナの中で感じ取ってた」
二依子にはある程度、状況を知覚出来ていたらしい、霊体が認識を共有する能力を、圧縮することで得ていたとも思える。
「ありがとう、みんな......」
二依子は喜びの涙を流し、札に張り付いた霊体のままユナとザジにしがみついた。
「感動の再会はまた後だ、さっさとこんな所ズラかるぞ！ 」
フォッカーがドローンボディのプロペラを回すと、飛行船ドローンへの帰投を始める。
ザジと二依子の札の入ったプラモデルボディを牽引する為に霊糸をワイヤーの様に引っ掛け、運ぶ準備をする。
......
「まだだ！ 」
突然の声にザジ達が振り返る！
振り向くと、アンテナはまだ二依子の残留霊力を有しており、"扉"に対して効果が残っている！
「俺達は"天国"を目の前にして、諦める訳にはいかない！ 」
舟の霊力の中で教団亡霊達の声が聞こえる！
「ギョエエエエエエエ！！ 」
舟の霊体自体も、コントロールが散漫になったのか、激しく暴走の兆しを見せる。
......
「フォッカー！ 頼む！ 嫌な予感がする！ 」
ザジが叫ぶと、急に周囲に弾ける様な轟音が聞こえる！
舟の霊体が張っていた風避け(バリア)が解除されたのだ！
成層圏に近い高高度の冷気と突風が襲いかかる！
「コイツら、扉に特攻するつもりか！ 」
ザジ達が何とかしがみついて立て直すと、赤い光が再び周囲の風景を彩った。
「扉が......近い......」
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