第75話「みちよちゃんクライシス!サード・ストライク」
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近くの役所の会議室
「立ち退きを要求します!」
市の職員を押し退けて、沢山の黒服達がやってくる。
「君達、何処の者かね?!」
会議室にはまだ市の役員が会議を行っていた、今回の事件で行政の判断を待つ為に集まっていた様だ。
だが入り込んできた黒服達は書類を掲げて、会議室の役員を退去させ始めたのだ。
「陰陽庁から来ました安倍(あべの)です、この会議室を対策本部として使用していいと許可を取りました」
「この案件を我々に任せて、速やかに市民の安全の確保に尽力を尽くして頂きたい」
この黒服の一人の発言に役員から歓声が上がる。
「おおお!陰陽師!まさか本当に実在してるとは!」
反論する所かトランペットのショーケースにかじりつくピュアボーイの様な目を輝かせる役員達を尻目に、会議室に通信機材が運び込まれる。
「今回の事件に対し、現れた"指定大型霊体5号"を"巨大危険霊体N型"と変更し呼称します」
「当方には近隣住民を近づけないようにお願いします、姿を視界に入れると精神汚染等の影響を受ける可能性が予測されます。」
「精神汚染とは?」
黒服の言葉に市の役員が聞く。
「現在確認されている精神汚染は"信仰心"を植え付けると言うもの、内容が解っていれば影響はないのですが、催眠術の様に潜在的に入り込むとされています」
「なんと言う......それは我々ではどうにもならない、是非対応をお願いしたい」
役員達は危険性に納得したのか礼を言うとその場を去っていった。
(やけにあっさり引き下がりましたね)
黒服達がヒソヒソと話をする。
「さっきの役員に尾行を付けなさい、我々は情報の収集を始める事にしましょう!」
黒服の一人、リーダーらしき女が上着を脱ぎ去ると、早着替えでもしたかのように軍服を身に纏っていた。
「安部(あべの)党首"代行"様、通信網確立しました」
「よろしい、現時点より巨大危険霊体対応1号作戦を開始する、現地の職員に......"みちよちゃん"に連絡を取れい!」
「はっ!」
そう、この軍服の貴婦人こそは、ザジ達が知る"頭目"の姉に当たる人物。
陰陽師の最高責任者、安部(あべの)一族の党首の妻、「安部(あべの)みちか」その人である。
場面は代わり、ご指名の本人「みちよちゃん」事、頭目の方に場面は移る。
最上階のラストバトルフィールドにはいまだに困惑している、頭目とAWAJISIMAチームが残っていた。
「お主ら憑依を解くでないぞ、スキルも解禁になったようじゃが油断は出来ん」
何が起こったかと言うと、停電騒ぎの後、窓の外に船の巨大な霊体が現れたのを同チームが確認。
時を同じくして通気孔から鳥の骨で出来た人形がワラワラとバトルフィールドに入ってきて、襲い掛かってくるのである。
頭目がAWAJISIMAチームに協力を要請すると、AWAJISIMAチームもその要請に応じ、協力して撃退するに云った。
AWAJISIMAチームの戦艦の上で着陸したヴァリアント・ドーマンの頭目が、撃退した謎の骨人形を見て語る。
「あやつらは斥候か?ワシらの存在を確認されたのかも知れん」
「バトルが始まる以前から潜んでいたと見ていいのう、ワシらあの外の船に一杯食わされた様じゃ」
AWAJISIMAチームの五人の総意を汲み取った、戦艦AWAJISIMAのスーパーAI"イザナギ"が頭目に語る。
「強い霊力に呼応してやって来たと見ていいでしょう......陰陽師の名家"芦屋家"の頭目、芦屋みちよ様」
「!」
頭目が驚く、自分のガバガバなプロフィール欄には陰陽師とは書いてしまっているが頭目とは書いていないはず、っと思い出しているようだ。(バレバレやんけ)
「お主らは何者じゃ」
チーム五人の総意を語るAIイザナギはこう語った。
「我々は役の小角(えんのおずの)の意を継ぐ修験者の同盟衆です、このバトルに紛れてある目的の為に潜んでおりました」
頭目が驚く、そしてその目的と言うのに、心当たりがあったのだ!
「まさか......お主らの目的とは......まさか!」
後ずさる頭目、その目的が想像出来る頭目だからこそ、この狼狽ぶりなのである!
「我々は今のこの近代の時世で、長く力を失い、財を失い、人手を失い続けました」
「挙げ句に、役の小角ゆかりの式鬼神ですら!手元に無いと言う醜態。」
勘の良い読者ならこの嘆きの先にある顛末が想像できよう、頭目は白目のまま固まっている。
「だが我々には今回、役の小角の予言らしきの記録を参考にバトルに参加させて頂き。」
「更に、我々修験者の再起の為に象徴である式鬼神の力を感じとり、そして今が"その時"だと確信しました!」
そしてAWAJISIMAのスーパーAIイザナギが声を高らかに、ここで宣言した。
「借りパクした"前鬼(ゼンキ)"と"後鬼(ゴキ)"返してえええええええ!!!!(涙の訴え)」
「プラモデルのパーツにして、すいませんでしたあああああああああ!!!」
頭目がヴァリアント・ドーマンで激しく飛び上がり、バク転からのフライング土下座が豪快に決まる!(金属音)
「しかも合体パーツに組み込んでしまって簡単には戻せないんじゃああ!......本当に!申し訳ない!」
......借りパク、ダメ!絶対!
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