第60話「ト○・ストーリーVSチャイルドプ○イ」


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 巨星グンマー!ムノノフ堕つ!!

 

 速報の見出しがまとめサイトを賑わせる、散り様の様子もまた芸術的と評価が成されて称えるコメントが殺到した。

 

 人気者だったグンマーの退場は早くも「メインイベントは終わったな」とか「実質決勝戦」とか言われる始末。

 

 ソレだけ壮絶な修羅の国同士のご当地バトルが、決着を着けたのは影響が大きかったと見えよう。

 

 「巨大ボディ同士の殴り合いは凄い迫力だね、調整大変そうだけど……」

 

 二依子が溜め息をつきながら感想を述べる。

 

 「五人分霊力の二人憑依でしたっけ?なにがなんだか……」

 

 ユナは困った表情で見ているようだ。

 

 「パッシブ(常駐)スキルの塊なの、上半身と下半身で巨体を機敏に動かせる為に二人が常駐して……」

 

 「残りの一人がバトルスキルの管理ね」

 

 こう言った解説を述べたのは菊名だ、彼女も興味深かった様である。

 

 「対するAWAJISIMAは色々ぶっ飛んでるね、次のバトルに当たるのかなあ?」

 

 準決勝と言われているこれらのバトル、このまま行くと上位四チームのまま″決勝戦″になってしまう……

 

 「やな予感がする……明日のバトルで運営に聞き倒そう」

 

 二依子は運営が何かを企んでいる事に気が付いて居るようだ。

 

 

 

 バトルの日程が次々消化されていく……

 

 次のバトルはブゥードゥー呪術チームと機動陰陽師ヴァリアント・ドーマンのバトルだ。

 

 「姉上に酷い目に合わされた直後に仕合とか、世知辛いのじゃ」

 

 最早「世知辛いのじゃ」言っとけマシーンと化した、陰陽師の頭目が姿を現した。

 

 対するブゥードゥー呪術チーム(以下ブゥードゥーチーム)はメンバーが何やら箱の様な物を中央に置いて、そそくさとフィールドの端に逃げ込む。

 

 「?」

 

 ヴァリアント・ドーマンで出撃してきた頭目が、その様子に首を傾げて困惑。

 

 だがしかし、その様子も箱から吹き出る怪しい霊力により……

 

 強ばった緊迫の表情に変わる。

 

 「魑魅魍魎か!亡霊の類いじゃな!」

 

 以前のバトルでの記録ではブゥードゥー呪術チームと対した人工精霊チームが……

 

 箱に近寄ると瞬く間にボディが破壊されたのである、この映像を見ていた頭目だが……

 

 「間近に見てみると厄介じゃのう、禍々しい妖気と言うべきか」

 

 頭目の魑魅魍魎レーダーがピンっと立ち上がる(アホ毛型)

 

 ここで意気揚々と頭目が啖呵を切る。

 

 「掛かってくるのじゃ!落ちぶれてもワシは陰陽師の片翼を担う一族の頭!」

 

 「小賢しい魑魅魍魎なぞ!この体で十分じゃ!!」

 

 その言葉に反応したのか、箱が急にガタガタと揺れ始め……

 

 「中身」とも言えるソレが飛び出してきた!

 

 頭上高く飛び上がると武器の刃物らしきモノを振りかぶり!

 

 頭目のヴァリアント・ドーマンに斬りかかる!

 

 「ぬうう!なんじゃコイツ!」

 

 斬撃は僅に逸れ地面に降り下ろされ埃が舞うと、箱の中身だったモノが姿を現す。

 

 そこに現れたのは、赤ん坊の人形。

 

 全身可動の等身大ベビードールで服らしきズタボロの布地と、汚れきった顔と変色した体が妙に浅黒い。

 

 これぞ「呪いの人形!」と言わんばかりの容姿のソレは、顎がカタカタと外れたかのように笑うと……

 

 床屋のカミソリを持ち、ユラリと構えて首をグリングリン振り回して襲いかかったのである。

 

 「!」

 

 すかさず頭目がヴァリアント・ドーマンの盾をかざす!

 

 「ブルゥゥァァァァァァ!」

 

 人形から容姿とは裏腹に霊声が野太く聞こえると、ヴァリアント・ドーマンの盾に一撃を見舞う。

 

 「なるほどぉぉ、生きた人間が相手かぁぁぁ!」

 

 呪われた人形から発する声が、恐ろしく響き妖気を放つ!

 

 対する頭目の様子、相手を見るや。

 

 「んぎゃあああ!、マジモンの呪いの人形じゃあ!!」

 

 ヴァリアント・ドーマンを操る頭目があわてふためく!

 

 「頭目様、落ち着いて下さい!アレ位なら本部の徐霊部隊で一掃出来ます!」

 

 黒服のサポート音声が頭目をなだめる。

 

 「阿呆!生身ならともかく、この体ではぶっちゃけデカくて怖くてちびるかも知れん!」

 

 先程まで「この体で十分じゃ」とか言ってたのに、このブーメランである。

 

 黒服から少し待って回答があった。

 

 「大丈夫です頭目様、匂いはまだしません!」

 

 「そんなもん報告せんでいいのじゃ!」

 

 黒服の隣で無防備に眠る頭目の本体、次からはオムツが必要かもしれない。

 

 「はあぁぁっっーー!」

 

 人形から膨大な霊力が放出され、ボディの周囲に炎が吹き出した様なオーラを纏い。

 

 ドラゴ○ボール的な強敵の威圧感を見せつけ、ニヤリと笑った様に幻術で顔を歪ませて白眼を剥いて挑発する。

 

 「虫ケラ共め、壊されにきたかぁぁぁ!!(ブ○リー風)」

 

 その声に反応したかのように黒服が警戒を促してきた!

 

 「大変です!頭目様の後ろに丁度良いかもしないブロックの壁が!」

 

 「へ ?」

 

 意味不明の黒服の助言に困惑した頭目、そこにすかさず呪いの人形は飛び込んでくる!

 

 そのままヴァリアント・ドーマンの頭を掴み、一気にブロックの壁にめがけてボディを叩きつけるように押し込んだ!

 

 「ほげえぇぇぇぇぇ!」

 

 ダメージで変な声を上げる頭目!

 

 壁に小さなクレーターっぽい跡が付くと、その強烈な攻撃にヴァリアント・ドーマンがグッタリと崩れ落ちる!

 

 サポートの式神パックからの必死のバリアでボディの破壊は免れたものの、衝撃が激しくて立ち上がるとボディが軋む音がする!

 

 「い……今のヤバかったのじゃああああ!」

 

 相当強烈な一撃であろう、背部の式神″鳳″もかなりダメージを受けて翼等が破損。

 

 「式神ストライカーパック、ダメージによる霊力ダウン!」

 

 「式神パワーローダー!ギガンティック″ゼンキ″!緊急発進!」

 

 ヴァリアント・ドーマンを助ける為に、再び借りパク式神のギガンティックゼンキによるパワーゴリ押しプレイが展開される。

 

 「どうした?その程度かぁ?」

 

 不敵に笑う呪いの人形、ヴァリアント・ドーマン最大のピンチである。

 

 

 場面は変わり、その闘いを中継で見ていたポゼ部一行とザジ達。

 

 突然の強敵に、みんなあんぐりと開いた口が塞がらない。

 

 「うわあ……年期の掛かったノーマルタイプの亡霊だ、しかもオリジナルボディ……」

 

 ザジが顔を強ばらせて言う。

 

 「人形の亡霊強いね……陰陽師さん厳しいの?」

 

 二依子がザジに呪いの人形の強さを訊ねる。

 

 「俺でも相討ち必死じゃないかな……オリジナルボディの破損はしたくない」

 

 「だから俺達亡霊は基本的にサブボディを使ってるんだよ、不毛な存在の削り合いは意味がない」

 

 ユナは人形を見て思う。

 

 「ザジ君、この亡霊は自身の存在の消滅も怖がらないの?」

 

 ザジはその問いに答える。

 

 「もしかしたら今まで、大したダメージを受けてないのかも知れない……」

 

 ソレは人形自身の存在の消滅が″本人が知らない″事により気がついていないという意味だった。

 

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